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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第3章 トランジションステージ
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第73話 突撃、隣のダンジョン最下層!

 少し熱いくらいの気温に乾いた風があちらの世界の夏を思い起こさせる昼下がり、昼ご飯を食べた『奈落の穴』攻略メンバーは秘密基地広間へと集まっていた。


 参加メンバーはボクにルナ・キャロル・アンナ・レッティ・フェルティ・レオーネ・アズリー・メリル・アヤカ・アルフ・ユノ・ユピテルの一三人だ。

 ジャンヌは西門の外組みとの先約で、ピチピチピーチ採取依頼に出てしまっていない。他の者も休養や急用などで参加出来なかったので丁度ボクのPTで収まる人数になった。

 今回サーベラスが居ないのはメアリーの口から恐ろしい出来事について聞いたためだ……

 ボクが眠っていた間に『奈落の穴』最下層を攻略に向かい、BOSSと思われるコカトリスに襲撃されルナが金属に変えられる事態が起きたらしい。

 この話を聞いた瞬間、思い出したかのように逃げ出したルナを捕縛しお尻ペンペンの刑に処した。笑っていたアンナも他のメンバーも結界で閉じ込めて一人ずつお尻ペンペンの刑に処したのは連帯責任と言うモノである、ちゃんと手加減はした。


「ルナだけメタリックな格好になってたから何故かと思ってたけどね……それでプテレア?」

「サー! 主殿、私は悪くないであります! 私が居なかったらもっと被害が大きくなっていたであります……」


 後ろから付いてきているプテレアに声をかけると、アヤカが教えたと思われる謎の口調で言い訳を始める。


「で?」

「で? とは何でありましょう主殿!」


 直立不動になり首を傾げてお伺いを立てるプテレア。


「ここに居て話しを聞いているって事は、ちゃんと通路のプテレア化が終わったんだよね? もしまた合った場合の勝算はあるの?」

「負ける可能性は一〇%も有りませんですサー! これを主殿が飲めば一%になりますでサー!」


 プテレアが差し出してくるコップには緑色の抹茶の様な…チョコレートの匂いがする液体が入っていた。渡されるまま飲むと匂いだけチョコレートの青汁のような強烈な味に、思わずえずき吐き出しそうになる。


「うぇぇぇ、まずい! もう要らない!」

「数秒で効果が出るはずですサー!」


 現在プテレア以外正座中で参加メンバー以外にはマリヤがニヤニヤとしながらカウンターにかけている、何でこっちを見てニヤニヤしているのかと原因を考えているとすぐに答えが分かった。


「身体が、うごか、な、い!?」

「大成功~うちらやっぱり天才かもしれない!」


 目線だけ動かすとアヤカもイヤイヤ飲んでいる様子が見える、他の皆も鼻をつまんで飲んでいた。

 マリヤは勝利のVサインを掲げ、小さな瓶に入った金色の針を手近なアヤカから順番に刺していく。


「コレは一時的に石化耐性を得る薬で、この金の針とセットで使えば二四時間は石化しない身体になるの! 原料は聞かない方が良いけど……聞いてみる?」


 順番に針を刺していくマリヤ、皆はすぐに身体が動くようになったのか装備の点検を始めた。そしてここで問題が発生する……ボクに針が刺さらない。


「計算してなかったかも…防御力? ステータスが高過ぎる!」


 喋ろうにも言葉が出ない、無理に動かして腕とかぽっきりいったら怖いし……


「コカトリスの石化腺から搾り出した毒汁に匂いを誤魔化す為に混ぜたカカオの焙煎粉末にプテレアの灰汁……これを混ぜて調薬してフリーシアンの絞りたて乳で割ってみたけど、匂いは誤魔化せたから良いとして味は今後の課題ね~」


 恐ろしい事を言い始めるマリヤ、猫を被っていたのか素が出ている。

 まずい気がする、動けないとマーガレットが帰って来た時何されるか……


「料理の事ならマーガレットに相談すればいいかもね?」

「なんでやねん! コレは料理じゃないって絶対!」


 思わず突っ込んでしまった。そして身体が動く事に気が付くと手足を動かしてみて違和感が無いか確かめる。


「うそ……一回飲むだけで耐性を得た? カナタの体質? 今後の研究対象としては最高ね!」


 石化耐性を得たらしい……ん? 石化耐性?


 アルフ達の方へ振り向くと苦笑いしつつこちらに手を振る男三人が居た。耐性を得るまでこの不味い液体に耐えた三人を哀れに思い、素早く近寄ると頭を撫でてあげる。


「辛かったね……もう今後こんな事が無いように注意するからね?」

「え? あぁ、別に良いよ。東門外のおじちゃんから毒は何度も貰うと耐性を得るって話し聞いて、マリヤに話を振ったのオレだし――」


 ナニ言ってんのコイツ!?


 ボクは思わず両の拳をアルフのこめかみに当てると軽くグリグリした。


「痛っ!? いた、いたた、ちょっと、頭折れる!」

「危険な事はしちゃいけません! ちゃんとボクに確認取ってからにしてね?」

「え~カナタも良く勝手に色々やってメアリーに怒られてるよね?」

「うぐっ!? それはそれ、コレはコレだよ! ボクは強いから良いの!」

「アルフに触らん方が良いで! 手が穢れるで?」

「「「「えっ?」」」」


 ルナのその一言にボクと男三人は視線をルナへと集めた。


「アルフ達はロッズと一緒に西の町に言ってたんやで! 綺麗なお姉ちゃんと楽しんだんやで!」

「おい、馬鹿! 違うって言ったろ!?」


 一歩アルフから離れると話しを聞いてみる事にする、確か西の町は絶対に近寄っちゃダメってメアリーやロズマリーに厳命されていたけど……もしかして歓楽町?


「ヤマシイ事なんてしてねえよ、ロッズが大人の遊びを教えてやるって言って……お酒飲んでお姉さんとお喋りしただけだぜ? カナタは信じてくれるよな? 女どもはゴミを見るような目で見てくるし泣きそうになるぜ――イタ?」

「女どもとか言っちゃダメ」


 アルフの頬を軽く叩くと皆の手前簡単に説教する事にする。ボクに怒られたからもう元に態度に戻っても大丈夫と皆に思わせる必要がある。

 さすがにこのままだとアルフ達三人が可哀相だ……悪いのはロッズだしね!


「そう言う年頃なのは分かったけど…その……お金を払って相手してもらうのはちょっとダメかもしれないし……病気とかね?」

「え? 相手? 病気? ……えぇぇぇっ!? 西の町ってそんな場所だったのか!」


 どうやら何も知らなかったみたいで、ユノ&ユピテルも驚きアルフの隣で尻餅を付いていた。


「……こういう時は土下座するんだよ」


 アルフの耳元に音が漏れない結界を張りアドバイスしてあげると、踵を返しルナの元へと歩いていく。

 背後で土下座するアルフとユノ&ユピテルの気配を感じ一息付くとルナを見据える。


「うちは何も悪くないで?」


 ルナを抱き締めると頭を撫でながら耳元で諭す、男とは下半身が別の生き物だと言う事を……


「……分かった? 知らない男に付いて行っちゃダメだし、そんな男が居たら殺さない程度に――直せる程度にならボコっても良いからね?」

「分かったで! うちはヤルで! 股の間を集中攻撃やな!」


 ここでまた踵を返しアルフ達土下座している三人の元へと歩いていく、背後でルナが他の皆に今した話をちゃんと伝えてくれているのを確認しながら……


「アルフ? 商売人相手はダメだけど別に自由恋愛を禁止するわけじゃないからね? この前果物屋さんの娘さんと仲良く話しながら歩いてたよね?」

「あ、アイツとはそんな仲じゃなくて――そう! 素で話せるから楽なんだよアイツは!」


 顔を真っ赤にしてしどろもどろになるアルフの頭を撫でるとユノ&ユピテルを見る。


「ユノとユピテルも毛皮屋さんの娘さん姉妹と仲良く話して――必要以上のタイガーベアの毛皮買ってきてたよね? まぁ、カッコイとことか稼ぎが良い事を見せたかったのかもしれないけど、普通に休みの日に遊びに行きませんか、って誘ってみたらいいよ?」

「「いつの間に見てたの!?」」


 ユノ&ユピテルの頭を両手で撫でると三人の手に金貨を二枚ずつ握らせる、他の女性陣にはばれない様に結界で空気の壁を作って音を漏らさないようにして……


 情報源はプテレアだけど末恐ろしい、プテレアを敵に回す事だけは避けようと心に誓う。


「今度の休みに遊んでおいで、この金貨あげた事はナイショだよ?」

「「「カナタ! ありがとうございました!」」」


 ちょ、そんな大きな声で言うとバレル! 後ろを急いで振り返るとクエスチョンを飛ばす女性陣が居た。


「さぁ! 冒険の始まりだ。その、前回の失敗点を生かして次は大穴から滑空と停止飛行にプテレアの蔓昇降の三通りを駆使して降りていくよ! PT配るから並んでね~」


 咄嗟にそう言い誤魔化しながらPTを配っていく、後ろで男三人がこっそり黒バックへ金貨をしまうのを確認してから停止飛行で先行する事にした。




 ――∵――∴――∵――∴――∵―― 




 停止飛行でまず飛び降りたボクが思った事は、暗い、ただそれに尽きる。

 穴の横幅はかなりある、生活魔法で灯火を作りばら撒きながら飛び降りても暗くて見えないエリアが必ず出てくる。


 そして敵が居ないと思われた大穴にも何か居る事が分かった。途中黒い影が飛び回るのを見つけ灯火で照らすと本当に黒い何かが飛んでいた……


『魔黒空Lv5』


 アヤカにこの事を告げると急にハシャギだし『真っ黒~黒スケ~』とか歌い始めて焦る。


 一応襲っては来ないようなので放置し、壁際に念の為プテレア化した緊急ハシゴを設置しながら先行して降り続ける。この緊急ハシゴは布の滑り台――高校で緊急避難訓練をして窓から滑り降りた事がある人ならすぐ思いだせると思われる例のアレに凄く似ていて、中に自動で上がっていくプテレアの蔓ハシゴがあるところだけ違う。


 どれくらい降りてきたのか分からなくなってきた。真っ暗で代わり映えのしない壁とくらい空間、時折飛んでいる魔黒空……スマホを確認するともう一〇分以上降り続けている事になる、停止飛行がいくらユックリだとしても少し深過ぎる気がする?

 景気付けに魔力一〇倍くらい込めた灯火を一〇個同時に真下に向けて放つ……


「グエッグ!?」

「あ?」


 案外下まで降りていたみたいで、巨大な灯火に照らされて姿を現したのは……こちらを見上げて飛ぼうとする巨大な鳥だった。

 その顔は立派な鶏冠を持った雄の鶏に似ており、赤黒く光る目と遠距離間が狂いそうなサイズだけが違っていた。


『コカトリスFLY・HIGHキングLv666』


「ヤバイーーー!!! アルファベット持ちのコカトリスで何故か単語が二個くっ付いてる!? レベル666でさらにヤバイー!」


 咄嗟に大声で怒鳴ると結界を足元に張り硬皮の盾を持っているだけ全部放り出し浮かべる、メタル化ガスの件もあるので他の大事な盾は使いたくなかった。


「クエーーグェッグ!! ゲポッ」


 BOSSコカトリスは事前に聞いていた喉元を膨らめる体勢になり、ガスを吐き出すと一目散に逃げていった。

 逃げれくれたのは良い――でもこのままじゃガスに撒かれてしまう、黒いモヤは凄い勢いで迫ってくる。

 硬皮の盾を全て突っ込ませると真下に向って突風を起こす、その風を出すと同時に自分に逆風を当て上へ急上昇する。


 滑空してきているルナ・アンナ・レイチェルに吊り下げられている他の皆が見えたので、結界を足元に張り様子を窺う。


「凄い声がしたで!?」

「大丈夫、逃げて行ったから少し様子を見て降りるよ? ルナ達はボクにつかまって、プテレアは今からボクが壁に穴開けるからそこを蔓で擬態化して休憩室に変えてね。アースオーガー! え」


 前使った事のある魔法だったのでイメージすらせずにすぐ使えた。でもおかしい、魔力をさほど込めた気はしなかったのに壁には高さ4m奥行き20mほどの大穴が開いていた。


「今の魔法はいったい何!?」


 キャロラインとメリルが驚き慄いていたけどそれは後で説明するとして……この大穴どうしようか?


「主殿の本気に私も張り切りますよ!」


 蔓がグングン伸びていき瞬きする間に穴はプテレアの蔓に覆い付くされる。

 そして言葉を放つより早く擬態化が終わり、シンプルなソファーが壁際に並び中央に大きなテーブルが一つ置かれた休憩室が現れた。一応転落防止に入って来た穴側をプテレア擬態化網で覆うと、一応念のため一番奥の壁に真上に向って螺旋状の穴を掘り始めるプテレア。


「慣れた手付きと言うかなんと言うか……プテレアが居たらどこでも暮らしていけそうだよね~」

「主殿の為なら例え火の中~土の中~」


 プテレアは、もしBOSSが現れた時にも戦える量の蔦と蔓を連れて来ているらしく、いつもの動き回っているプテレア本体? より大柄な体型をしている。穴を掘り始めたプテレアを横目で見ると緊急作戦会議に入る。


「ボクが見たのは立派な鶏冠を持ったコカトリスFLY・HIGHキングLv666と言う魔物だった。誰か知ってる人居る?」

「鶏冠ってなんなん?」


 ルナの素朴な疑問。まずそこからか、と思いつつカカオマス捕獲依頼で会ったモヒカン――オデュッセウスさんの髪型とだけ説明すると一発で分かった様子だった。


「うちは大きい鳥見たけど鶏冠なんて付いてなかったで?」

「あちゃーやっぱり別固体か……」


 予想はしていた。名前の最後にキングが付くって事はクイーンが居る可能性が高い。

 しかも運が悪い事にキングは倒しても多分次のキングが生まれる……クイーンを倒さない限りコカトリスは延々増え続けてしまう……あれ? もしかして倒さない方が良いのかもしれない。


「多分居るであろうクイーンは可能なら【テイム】するとしてキングは倒してお持ち帰りの方向で良いよね?」

「早く燻製にして食べたいな~」

「え? ええ? 帰るんじゃないの!?」


 ルナはもう食べる気で居るけど、キャロラインが少し怯え震えていた。


「見た感じ全然脅威は感じなかったからね~。戦う時は結界で覆うからボク以外の人は追加の魔物が来ないか注意して見張ってね?」

「魔法は! さっきの魔法は何だったの?」


 メリルが凄い食いつき様を見せる、キャロラインはそのメリルの剣幕に押されて少し頭が冷えた様子でソファーに座ったまま聞き耳を立てている。


「ボク、精霊魔法ってどんなのか知らないんだよね……さっき使ったのは生活魔法改造バージョンだよ? 教えてって言われたら教えるけど多分すぐにはモノに出来ないし、逆に精霊魔法を教えて欲しいくらいだよ?」

「ぐぬぬぬぬぅ……カナタも天然なら私が使えてもおかしくない! 今度絶対教えてね!?」

「便乗しますわ!」


 メリルがボクの天使御用達の服をつかむと、食い付かんばかりに接近して約束を取り付けようとしてくる。ちゃっかり便乗するキャロライン。


「OKOKとりあえず落ち着いて? 教える代わりに精霊魔法の事も教えてね。五分くらいしたら様子を見ながらまた降りるから、地面に足が着いた状態で報酬の先払いって事でね!」

「「もちろん!」」


 同じ魔法士だからなのかなかなか気が合うらしい二人にボクの期待も高まる、精霊魔法――体系化された生活魔法の進化系魔法!


 期待に胸膨らませ、まだ決めていなかった隊列などの詳しい事をスマホに入っていたメモから読み取り、簡単に決めていく。


「さぁ、今夜はコカトリス肉でパーティーだよ!」


 皆の唾を飲み込む音を合図に、穴側を覆っているプテレア擬態化網を開けて穴の底へと身を投げる、停止飛行もバッチリ最高のコンディションで思うままに空を飛びまわれた。

 今度は不意打ち気味に会わないように巨大灯火を先に落としてから降りる事にする。


 それにしても灯火が大き過ぎる気が……? あの目覚めから、魔力が増えたおかげかもしれない。


 ちゃんと皆が付いて来ているのを確認しながら慎重に降りて行く、まだ見ぬお宝とコカトリスの肉を求めて……

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