第5話 天使はツンデレ?・ドジッ娘・チョロイン
長かった……やっとここまで来れたよ。デジャブを感じつつ天使が用意した魔方陣っぽい円の真ん中へ移動する。
「それではお願いします」
「あのね、少しだけ良いかい?」
何故か顔を赤らめてもじもじする天使、まだ何かあるのかと戦々恐々なボク。
「少しだけなら、本当に少しだけですよ?」
「その、あのね? さっき返したスマホとエアコンと眼鏡に、僕が付与できる一番のスキルを付与して置いたから。現地に行ったらまず確認してみてね」
何と言う事でしょう、写真を既に貰っているのに天使がスキル付与までしてくれた。ずっといじってるだけかと思ったけど実はスキル付与していたなんて――天使様本気女神様!
「ありがとうございます。でも良いんですか? もう既に写真を貰ってるのにこれ以上色々してもらっちゃって、何かペナルティみたいな物が有ったりしません?」
「気に入った相手には個人的にスキル付与して良い事になってるから大丈夫だよ。普通は自身の『世界に存在する力』を消費して行う物だから滅多にする事は無いらしいけど。今回は彼方から拝借してスキル付与したから案外無茶できたしね! それに僕は彼方の事が心配なんだよ……スマホとエアコンと眼鏡を僕だと思って大事にしてね♪」
女神様はまさかのチョロインだった。今までの会話でフラグ踏んだ覚えが無いのに何時の間にかルートに入ってる。エアコンのリモコンをエアコン本体だと勘違いしたままだけどどんなスキルを付与してくれたのか楽しみである。
「そうですか、大切にします。気になる話しが出てきたんですが聞いても良いですか?」
「あぁ、説明して無かったね。『世界に存在する力』の事だよね、心の外身と言うか魂の贅肉というか脳の一生で使わない部分? 見たいな何かだったと思うよ。ゼロになっても死ぬわけじゃないし気にしないで!」
ダメだ、女神様は暴走している。早く何とかしないと!
「そっちじゃなくて……何勝手に拝借して無茶してるんですか! 心の外身と魂の贅肉は知らないけど脳の一生で使わない部分って使わないけど無いと生きていけない気がするんですが」
「時間が経つとスマホとエアコンと眼鏡が馴染んで『世界に存在する力』も吸収され元に戻るから全然OKも~まんた~い」
落ち着け、ボクが落ち着かないと延々このままだ。話しを元のレールに戻そう、女神様が大丈夫と言うんだから何も問題は無いはずだ。
「それにちゃんと防犯仕様にしてあるよ? 基本彼方しか使えないし必要な時は念じれば出てくるお手軽仕様で普段はフリーハンド。落としても大丈夫な様に1m離れたら自動でスマホは左手に、エアコンは右手で眼鏡は顔に吸収される親切設計! ついでにエネルギーは彼方のMPから取るようにして本体も壊れないようにしといたよ! 吸収って言っても眼に見えて怪しい感じじゃなくて、不可視化してから収納されるような周りが気にならないタイプにしてるから目立たなくて良いよ! 彼方が困らないように僕がんばったよ!」
どうしてこうなった。これ天使を裏切るとヤバイ事になるパターンじゃないか……ストーカー化とか嫌だよ。考えろ自分、考えるんだ、穏便に早く話しを戻して異世界に行こう。
「何から何までわざわざボクの為にありがとうございました。そろそろ魔方陣もほっとかれてかわいそうなので転送しちゃってください」
よし、これで元のレールに戻ったはずだ。いざ行こう、さぁ行こう異世界へ。
「べ、別に彼方の為にスキル付与したんじゃないんだからね! そう、たまたまいじってたら色々チャレンジして見たくなっただけで。その過程でちょっと彼方から『世界に存在する力』を借りただけであって勘違いしないでよね! 別に深い意味は無いからね。」
よーし、ボクはもう突っ込まないぞー天使がツンデレ?ドジッ娘チョロインでも良いじゃないか。個性って大事だしこれから末永くおつかいでお世話になるんだし嫌われるより全然OK問題ナッシング。
「大丈夫なら何でも良いや。レッツGO異世界」
「行ってらっしゃい! 初回は六時間キッカリで自動的に戻るようになってるから忘れて遊び呆けてたら許さないんだからね! 現地に着いたらこれ読んでね」
おつかいの内容と装備の説明書を受け取り発光する魔法陣の中で目を閉じる。ふわりふわりと浮かんで行く様な不思議な感覚に身を任せ異世界転送を待つ……一〇分は過ぎたと思う。
一際まぶしい光を感じ、次第に浮遊感が無くなっていく……目を開けるとそこは異世界……
? ――∵――∴――∵――∴――∵―― ?
では無く困った顔をした天使がこちらを見ていた。大丈夫、あと少しなんだここはこらえるんだ自分。
「怒らないから言ってごらん?」
「転送魔方陣の使用許可を上司から貰うの忘れてました……ごめんよ彼方今連絡中だからそのまま待ってて」
スマホとエアコンのリモコンと眼鏡を熱心にいじってると思ったら、やっぱり忘れてたのね。今のボクは悟りを開いてるから怒らないし突っ込まないよ、大丈夫だ問題無い。
何時の間にか天使がワッカを付けて何か話し込んでいる。天使を眺める事にする、ワッカが光る度に天使が何か言い返してる、トランシーバーみたいに互いに言い合っている様子だ。小声だから良く聞こえないけど聞いてるうちに雲行きが怪しくなってきた?
「困り……彼方は僕の初めての……横暴だ……返して……連れて……無いで!」
「トラブルでも有ったのかな。あれ? 壁が有る、まぁ転送中に半端にハミ出たら悲惨だから安全対策かな」
魔方陣から出ようとすると見えない壁に囲まれていた。天使はこっちを見ながらまだ話をしているみたいだ。
今のうちに転送後する事を順番に確認しとこうかな。
『転送後する事一覧』
1.周囲を見渡して安全かどうか確認
2.装備品を装備して効果を確認
3.天使のおつかいを確認
4.何より安全第一まずは町か村を目指す
5.もし盗賊? に襲われている馬車とか見つけたら不意打ちで助ける!
6.冒険者ギルドかそれに類する団体に登録する!
7.天使のおつかいをクリアしながら大冒険の始まりだゼ!
よし、こんな感じで良いかな? 5.は定番だよね、予想だと普通より力が強かったり相手の動きがスローで見えたりするんだ!
ネット小説や漫画やアニメの知識でツエーするしかないね! こんな事も有ろうかと常日頃用意してきた知識(スマホに沢山入ったメモ)生かさない手は無い。
それにしても長電話すぎるポチッと転送できないものなのかな。
「何でも……天使長……止めて……」
天使の様子がおかしい、涙を流しながら見えない壁を叩いている。流石に解ったよ? 多分何か良くない事を天使長さんに言われたんだよね。大丈夫初回は六時間で自動帰還って言ってたし問題無いでしょ。
「大丈夫だよ六時間くらい何とかするから泣かないで。戻ってきたらゆっくり説明してくれたら良いから」
何時の間にか声が聞こえなくなってたけど多分天使に伝わったはず、天使は涙目だけど微笑んで一枚の羽根を壁越しに手渡してくれた。
「……」
天使が最後に何か言ったようだけど聞こえなかった。壁を貫通してこちらに届いた天使の黒い羽根を、無くさない様にスマホのカバー裏に仕舞い込む。
今度こそ光り輝く魔方陣からふわりふわりと上昇して行きながらつぶやく。
「最後は少し寂しかったけど、こんな美味しい条件で異世界に行けるとか他に無いしがんばっちゃうゼ! いっぱい稼いで響と……女神様にプレゼント買っちゃうYO」
クリアカバー越しに見える『夜を背負った様な漆黒色の羽根』を眺めながら……
次回!やっとこさ異世界?