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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第2章 ピースフルデイズ
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SS そんな時もある?でも明日からは元気や!

 そろそろ三回目の鐘がなる頃や。崖の上に戻ってきたうちらは、午後の蜂蜜ミルクを飲んで一息つき、サンドイッチを食べた後にまた崖から飛ぼうと話し合っていた。


「なぁなぁ~機嫌直しや!」

「……」

「慣れたら結構楽しいかもしれないです」


 アンナが口を利いてくれない、原因は滑空中の不幸な事故や。着陸直前にアンナだけ大きな木に激突した。幸い手足が折れる程度で助かり、うちとレッティが治療してもう完治している。

 ご飯を食べる間も目すら合わさない、うちが注いだ蜂蜜ミルクはレッティに渡し自分で注いで飲む徹底振りや。


「ほらアンナ、うちのお尻叩いていいからな~」

「……フンッ」


 アンナにお尻を向けて尻尾を揺らしてみる。アンナは一瞬こちらを見て鼻で笑った……


「何かして欲しい事あったら言ってみ? うちが出来る範囲なら何とかするで?」

「……カナタの隣で眠りたい」

「それは無理やね」


 こんな時にアンナはトンでもない要求をしてくる、でもそれはダメや。

 うちが断るとアンナはまた顔をそらしてこちらを無視する。


「ボスは少し反省した方がいいです」

「ワンッワンッ!」


 レッティはサーベラスと一緒に崖の周囲で石を拾い集めている、カナタが鉄鉱石か銅鉱石当たりが欲しいと言っていたので多分それを探しているのだろう。ほかにも珍しそうな石があれば拾って帰るように言われている。うちらに石の見分けなんて分からないけど多分重くて硬い石だと思う。

 一応ラビニとラビサンは枯れた滝つぼ側を警戒している、万が一カルキノスの親が現れたら全員背負って滑空で町まで戻る予定や。


 さっきからラビイチを見ないけど、時々獲物を獲って崖上に帰ってくるので自由にさせている。ニードルラビッツ(角も含めた頭が無い)が一匹と普通のラビッツとオークにゴブリン……変な虫も狩って来ている。レッティがエッジクロウラーは焼いたら食感はプリッとしていて味は甘く、とろけるように舌の上でほどける身が美味しいとか言っていたので一応持って帰る事にする。


「カナタの頭の上の方のスペースやったら許したる……」


 このままじゃ飛ぶ時間が無くなってしまうので、今誰も寝て居ない上のスペースなら許してあげる事にする。


「絶対ですよ! 嘘ついたらカナタに言いつけますからね! 今日から私も一緒に眠ますからね! 今までカナタに近寄るとボスが蹴っ飛ばしてくるからベットの端で我慢してましたけど、これで一緒に眠れます~」


 アンナは飛び上がり笑顔でハシャギ始めた。


 どういう事? さっきまで無言でこっちを無視していたのに急に元気になった。怒ってたんじゃないん?


「アンナ……うちを騙してたん?」

「作戦ですよ? それに怒ってたのは本当ですし~」

「夕方まで時間はいっぱいある……いくらでも飛べるな、アンナ!」

「お手柔らかにお願いします……」

「ワンワンワンッ!」


 何かサーベラスが騒がしい、レッティがこっちを呼んでいる声が聞こえる。声の元へと移動する、崖上を少し降りた所にある窪みに冒険者と思われる子供が横たわっていた。


「うちは上がってくる時気が付かんかったけど、朝から居た?」

「多分ついさっき逃げてきたんじゃないかな? 足に傷があるし血が少し出てる」

「ボス、まずいかもしれないですよ? この冒険者を襲った魔物が血の匂いに引かれてこっちに来たら……」


 それにしてもこの子供どこかで見た事がある、街中じゃない――もっと前にどこかで……?

 匂いを嗅いで見るとヌル蔦の微かな香りが肌に残っていた。多分ロッズ&マリアン亭の客だと思う。


「なぁ、レッティ多分この子は宿のお客さんやで……?」

「ボス……あの林からこっちを見ている大きな猫って知り合いですか?」


 アンナの視線の先を見ると、確かにガルワン並みに大きい白猫がうちらを見ている。表情には焦りの色が見えており襲ってきそうには無い。見間違いじゃなかったら林から見える尻尾は三本に見える。


「カナタが言ってたで! ふれんどりーに接したら心を開いてくれるはずやって!」


 両手を広げ尻尾をフリフリしながら大きい猫へ近づく、こちらを警戒しているのか近寄っては来ない。


「ボス……感知系のスキルに反応が無いのは何故でしょう?」

「相手の方が強過ぎるか敵意が無いか……アンナが鈍っているかやね」


 近づいて良く見てみると足を怪我している、そっと手を伸ばし大きな猫が手を匂っている間に治療する。


「あんたらうちを狩る気とか無いんか? 自慢じゃないけどうちはキャットナインテールやで?」

「尻尾三本しかないのに九本の尻尾?」


 急に話し出す大きな猫。思わず呟いたレッティを大きな猫が睨みつける、まだ警戒を解かない。

 それにしても魔物なのに喋れるのも居るんやね。喋り方がうちと似てるかもしれん。


「あの子供の怪我は大きな牙で出来た傷みたいやし、この大きな猫は無関係みたいや。それに大きな猫の足にあった傷も牙で出来た傷やしね」

「喋る魔物とか怖いんですけど……本当に攻撃してきませんよね?」

「レッティは心配性やね、怪我しているだけみたいやしもう大丈夫や「無関係ではないで?」ろ?」


 うちに被れるように話し出す大きな猫にイラッとする。


「帰らずの森を越えた先から魔物があふれ始めて居るんや……うちを追ってきた魔物も遠くから来たみたいやったで? その子供を助けるんやろ? うちも一緒に助けてや」


 大きな猫は冒険者の子供の横まで歩いて来ると。一緒に連れて行って欲しいと言い始めた。


「本当にボスの親戚じゃないんですよね? 生き別れた母親とか?」

「うち雄やねんけど……」


 器用に両足立ちをして丸い二つの玉を見せてくる……


「連れて行ってあげても良いけど……町の人やカナタの嫁やラビッツ達やサーベラスに手を出したら毛皮を剥いでベットに敷くから良く覚えておきや? それと喋るのは無しや……うちと被る!」

「にゃんだって……わかったニャン」

「それもアウトや……」

「ニャ~ン……それとうちはラビッツと植物が主食やから安心してな? 魚は別や!」

「シャァーッ!」


 言った側から喋り出す大きな猫を威嚇しながら町に戻る準備をする、近くに強力な魔物が潜んでいる可能性が出てきたので早く知らせないといけない。

 アンナは自分の特大木の宝箱に子供を入れてスマホ子機に収納しようとしているけど、何故か入らないみたいや。カナタのスマホは生き物を収納出来るって言ってたけど子機は無理なのかもしれない?

 仕方ないのでうちが背負うと崖から滑空する準備を終える。


「さぁ飛ぶで!」

「えっ? 地面を走って帰りましょうよ……」

「ちゃんとアウラ縄を結んだよ! いつでも飛べるね~」


 地面を走る事を希望するアンナを、レッティがいつの間にかアウラ縄で結びつけていた。『裏切り者……』と呟くアンナを右手で抱えて左手でサーベラスを抱える、子供は背負いフェイクラビッツのバックパックで固定する、ちゃんとラビッツ達もアウラ縄で結んで準備OKやね。


「あの……私はどうすれば良いです? まさか……」


 震えるレッティもアウラ縄でしっかり結び飛び立とうとした瞬間、木々を圧し折る凄まじい音と共に何かの気配が近寄ってくる、背筋に寒気が走る――あかんヤツが来る!


「うちは先に町へ向って走るからあとで合流やな! ニャン」


 いつの間にか大きな猫は町へ向って走って行った。逃げ足の速さはうちが知っている中で一番かもしれない。そして戻ったら喋らないように口をアウラ縄で縛らないとダメやね……


「ボス……帰らずの森の方から木々が空を飛んできますよ? もうかなり近いです!」

「ぶら下がりでも何でも良いから早く飛びましょう」


 崖ギリギリで相手が林から顔を出すのを待つ、何が来るかだけでも確認しといた方が後の為になるかもしれない。ギリギリまで、もう少しだけ……後ちょっと。


「ラビッ!」

「えっ?」


 気が付いたら目の前に山の様に大きい白と黒のまだら模様のモウモウが居た。ラビイチが庇ってくれなかったらお腹に牙を受けていたかもしれない。足を滑らせてそのまま崖から飛び落ちる、滑空を使い素早く魔物から離れる。

 さすがに空へと追っては来ない様で、巨大モウモウは来た道を戻り帰らずの森へと入っていった。


「死ぬかと思いました――ボスが!」

「私も死んだと思いました――ボスが!」


 アンナとレッティがそう言い漏らしていた。笑い飛ばそうと思ったけど、うちも漏らしていたし震えて言葉が出ない。


「何でラビイチは元気にさっきの魔物の牙をかじってるんでしょうか……」


 アンナに言われて庇ってくれたラビイチに治療をかけようとアウラ縄を手繰り寄せる、ラビイチに怪我は無くいつの間にか折り取っていた巨大モウモウの牙を美味しそうに食べている……


「さすがカナタの従魔やね! ありがとうラビイチ!」

「ラビッ!」


 重量オーバー気味なので速度を上げる様な事はせずゆっくりと滑空していく。時々林でフォレストウルフと戦う冒険者達が見える、どう見てもレベルが低い新人や。あの魔物が町まで来たらまずい事になるかもしれない。


「うちらは飛ぶ為に来たのに思わぬ収穫が有って良かったな~」

「まぁ、脱皮直後のカルキノスの子供なんて売ったらいくらになるかわかりませんね~」

「そうやね、他にもいっぱい収穫が有って良かったな~」

「「他にも?」」


 何故か不思議そうな顔でうちを見るレッティとアンナ、うち変な事言ったっけ?


「新しいペットに大きな猫も見つけたし、新しいカナタの嫁も拾ったで?」

「あぁ、そうですね~あの大きな猫の名前とかあるんですかね、それに嫁も……嫁!?」


 アンナが驚いた顔でうちを見る。今さっき思い出したけどこの子供は、あのビックWARビー討伐の時に一流冒険者達に付いて行った初めからシングルスターの冒険者や。帽子を被っていたけどカナタと同じ黒髪・黒瞳だったので覚えてる。


「一般的にそっちの子供は……危機から助けたと言うんじゃないです?」

「将来有望そうやし、あのまま転がってたらガブガブされてたで?」

「それもそうですけど、本人の意思も確認してからの方が?」

「それもそうやね。冒険者ギルドに報告してから、戻ってカナタに戦利品を見せるで!」


 話しながら滑空していると、危うく町の手前で待っていた大きな猫を放置して行くところだった。下から『ニャンニャン』聞こえてくるので慌てて地面に降りる。


「戻るのが早過ぎるニャン! 危うく冒険者に討伐されそうになったニャン!」

「喋るんじゃないニャン! うちは怒るで?」


 こちらを見て『何だ【絶壁】の従魔か……ちゃんと首輪しとけよな~』と言って離れて行く冒険者達。西門までこのまま行くのは不味そうなのでレッティに首輪を取りに行って貰う。


「それじゃあレッティは首輪と簡単に報告よろしくな~」

「ボスはちゃんと待っててくださいね? アンナはボスがウロウロしないように見張っててください」

「分かったよ~もう疲れたし座って待ちましょうねボス」


 座ってから今日の事を思い出す。一応滑空中に三人で水をかけ合って浄化と清掃はかけてあるので臭わないはず……天使御用達の服も風で乾いている。帰ったらまずはお風呂に三人で入った方が良い、それとこの事は皆に内緒と言う事で話はついた。


「ニャン! ニャンニャンニャニャン? ニャンニャニャニャン」

「何言ってるかわからんねんけど……」


 顎が外れそうなくらい大口を開けた大きな猫は、うちに手の甲を見せてくる?


「自分が鳴けって言ったんやで? それで自己紹介しようとしたら……ほんまかなわんなぁ」

「うちらだけの時は簡便したる、うちはルナ、さっき走って行ったのがレッティでこっちのがアンナや」

「こっちのアンナです! 私はカナタの嫁なので、えちぃ事しようと近寄ってきたら――玉抜くんでよろしく!」


 また顎が外れそうなくらい大口を開けた大きな猫は、身震いしながらうちの影に移動した。


「うちは由緒正しいキャットナインテールのスコールや、死の大地とか死の荒野と呼ばれている帰らずの森の先から来た。あの大きいモウモウに負われて逃げてきたんやけどな! あと毛も生え揃ってない人間なんかに欲情せえへんから安心してや。うちの好みはこう……風が吹いたらもっさりふわりと毛がなびくような四足歩行の野性味溢れる娘さんや!」


 安心して良いのか怒った方が良いのか分からない顔で固まるアンナを放置してラビイチの毛を梳く。


「あぁ、言い忘れてたけどこのラビッツ達はカナタの従魔やから、食べようものなら多分八つ裂きになるで?」


 振り返るとラビニとラビサンにのされて、いつの間にか手元から移動したラビイチに往復ビンタ(尻尾で)されているスコールが居た。鳴けないように今日拾っていた石で口を塞がれている……丁寧な仕事や。


「それに多分スコールより強いからな?」


 ラビッツ達を撫でてスコールの口から石を取り出す、ラビッツがどこに石を隠し持っていたのか……不思議な事もあるモノや。


「魔が差しました……もう二度と舐めたマネはしません。簡便してください」

「ラビッ!」


 スコールなんて弱い子……ラビッツに乗っかられてへこへこしている。アンナがこちらを見て笑いを堪えているけどそろそろ限界やと思う。


「ボス! 大変な事になりましたー」


 西門から一直線に走ってくるレッティとマーガレット、顔色が悪いけど大丈夫かな?


「とりあえず首輪をスコールに付けて家に戻りましょうか」

「そやね、うちもお風呂入りたい。それにこの子も目を覚ましそうや」


 体温が少し上がってきた冒険者の子供を抱きかかえると家に向かい歩き始める、スコールが目立ってるけどうちらの姿を見た町の住人達は『あぁ【絶壁】のクラン員か』と言って手を振って離れて行く。


「それでは時間も時間ですし、ご飯を食べたあとお風呂で報告と作戦会議ですの!」


 マーガレットがやけにヤル気を出しているけど、多分カナタはマーガレットに近寄らないと思うよ。



 こうしてうちらの一日は過ぎていく、カナタと離れ離れはやっぱり寂しい。次からは皆一緒に狩りに行くよ!

次話から少し時間が戻って地下での新商品開発になります。

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