第41話 絶望を体現する者?皆ただいま!
カナタの旅はまだ始まったばかり!
いつも気を失っている気がする。
目覚めたボクが思った事はそんな事だった。
目を開けて周囲を見渡すと木造のロッジを思わせる建物の2Fのようで、窓からは見覚えのある景色が見える。
どうやらここは西門から少し林に近寄った場所のようで。窓から身を乗り出し外を見ると、ボクは石造りの高台の上に建てられたロッジ風の建物の中に居る事が分かった。
高台は結構な高さがある、10mくらいあるんじゃないだろうか?ロッジの窓から見える風景はなかなか良い物だ。
何でこんな場所に高台が……考えられる可能性は一つしかない、愛姉の仕業に決まっている。
ロッジから出て下りる場所を探していると、階段と思わしき段差が町側に面した斜面に有る事に気が付く。
丁度上がってきた人と目が合った。灰色のベリーショートで灰色の瞳の子供? 見習いか新人だろうか、子供の冒険者がこちらを見ている、装備は布の服に鉄の剣、皮の盾と皮製と思われるスリッパのような靴を履いている。
「おはよう?」
「お姉さんはドラゴンに襲われてたんだよ! まおうさんがドラゴンを追い払ってくれたから皆助かったんだよ!」
凄いテンションで喋っている、両手で大きいドラゴンを表現したいみたいで、ぴょんぴょん跳ねて可愛い、声からすると女の子かな?
ドラゴンって加奈多の事だよね?追っ払うとか愛姉は何を考えているのか。
「まおうさんって人は今どこに? もう帰っちゃった?」
「まおうさんはお姉さんに合わせる顔が無いって言ってたよ? 町まで案内してくれって依頼されたよ! 報酬に指輪貰ったの!」
嫌な予感がする、まさかこんな小さな子に……いや、ボクが最後の嫁って言ってたし無いよね。
『リング・オブ・シングルスター』
左目が反応して鑑定してくれた。今度は別の意味で嫌な予感がして冷や汗が出る、左目に集中して詳しく鑑定する。
『リング・オブ・シングルスター』呪
誰でも☆一個分の能力を追加してくれるマジックアイテム、シングルスターの者が付けるとダブルスターになる。
指輪をつけた本人以外外せない呪がかかっている。
:HP+100
「宝物にするの~」
「何があっても手放したり、誰かにその指輪の事言っちゃダメだよ? お姉さんとの約束ね?」
「まおうさんにも言われたけど、お姉さんは特別だって言ってたよ?」
凄いを通り越してふざけた性能だ。もし悪い冒険者に見つかったらこの子の命が危ない。
約束を守ってボクに会わないようにしているのは良いけど、もしかしてここに住む気じゃないよね……
ロッジの作りは簡単に見えて、生活するには十分な機能を備えているし、やけに広く感じるので魔法の技術で建てられているのかもしれない。
「まぁ、町に戻ろう。えっと……何ちゃん? お名前言えるかな?」
目が光る以上はうかつに人を鑑定出来ない、町に戻ってきたからには平穏無事な生活と、皆の育成が待っている。
「リリーだよ! 今年一〇歳で冒険者見習いなの~」
「えっと、リリーちゃんのお家はどこかな? 親御さんにお礼も言いたいし」
「スラム街に一人で住んでるから親は居ないよ?」
こんな小さな子がスラム街で一人で暮らしている?ボクは一瞬目の前が真っ白になる。
リリーは屈託の無い笑みで笑い、ボクの手を引き町まで案内してくれるようだ。
「お姉さんと一緒に住む? 一緒に住んでる仲間も居るけど、歓迎してくれるし楽しいよ?」
「う~ん? まおうさんがここに一緒に住んで良いって言ってたの、だから大丈夫。それに他にもいっぱいこの家に居るよ?」
愛姉も思うところがあった様だ。
加奈多を追っ払ったのも、単純にこの子供達を見てほって帰れないからかもしれない。
ここに家を建てたのも住む場所を提供する為の可能性もある、愛姉なら任せても安心できる……はず。
スマホを確認するともうすぐお昼前、短い時間でコレだけの物を作り上げるとはさすが魔王。
ロッジの外に出てみると窓から見えなかった強固な防護柵と、高台の周りに掘ってある堀が見えた。
ちゃんと水が張ってある堀は幅3m深さ3mは有りそうな本格的な堀で、どう見ても場違いだし人間が落ちたらどうするのだろうか?
「この堀どうやって渡ってきたの? 橋も無いんだけど……」
「こうやって歩いてきたよ?」
リリーは水面の上を滑る様に歩いて外へと出て行く。
「その部分だけ見た目水でも足場があるの?」
恐る恐る足を水面に近づけると、水面が蠢いた。
これはスライムニートだ、間違いなく愛姉が魔物対策で放ったモノだと思う。
「悪い魔物や人間から守ってくれるって言ってたの~」
「飛んで来る魔物に弱そうな気が……あっ!」
空を見るとピヨピヨが飛んでいる、堀の水面?スライムニートが逆再生の滝のように空に向かって飛んで行き、見事にピヨピヨにまとわり付きロッジのすぐ側にある石で出来た囲いの中へ落とす。
動かなくなったピヨピヨを見てみると首の骨が折られて羽根が全部毟られていた。血抜きまでされているようだ。スライムニート恐るべし……
「全自動で食料まで確保してくれるのね……」
よく見ると堀の内側の地面に生えているのは、あちらの世界でも良く畑に植えていたサツマイモだ。
大学芋を思い出しお腹が空いて来る、今度ツルを貰ってうちの庭でも育てよう。少しくらい石畳を剥がしてもラビッツさえ倒せば問題ないはず。
「お姉さん早く早く!」
「ボクの名前はカナタだよ」
「カナタお姉さん早く早く~」
西門を抜ける時、少しドキドキしたけど何も言われなかった。知らない初老の冒険者と、見習いだと思われる棍棒を持った子供が一緒に立っていた。
入る時にお金取られたり身分証明をすると思っていたので、どう説明して良い物か考えていた。
「ふむ、門なのに入ってくる人スルーして危なくないのかな?」
「カナタお姉さん綺麗だから見とれて、忘れてたんじゃないかな~」
そんな馬鹿なと思ったけど、後ろから『おやっさん今の女性綺麗でしたね!』『つい見とれてスルーしてもうたわい、アレだけ綺麗な女性が悪いやつのわけが無いわな! ガァハッハッ』とか笑い声が聞こえてくる。
この町の門番大丈夫かな……
西門から中に入ると、リリーはまだ外で狩りをするようなので別れる。
愛姉も色々考えてくれてるようなので、今度こっそり差し入れでも持っていこう。
とりあえず目指すは冒険者ギルド、多分ボクが居なくなってから大騒ぎになっていたはずで、ちょっと入りずらいけど元気な姿を見せて皆を安心させたい。
ボクは小心者なのでドッペルリングの【写し身】を使い、先ほどのリリーの姿を借りる。
現状を把握してからマーガレットさんに話す事にした。
考えているうちに冒険者ギルドに付き建物の影で【写し身】を使う、このスキルは一度見た姿をそのままコピーして幻影の様に体にまとう事ができる。
声は変わってないのでなるべく喋らない様にする、扉を開け中に入ると『ピシッ』っとガラスにヒビが入った様な音がなる。
一瞬ビックリしたけど何事も無かった風を装いカウンターへ進む、気のせいか周囲から注目されている?
カウンターにはマーガレットさんもロッティも居ない、知らない受付嬢だ。
いや、受付嬢と呼ぶのは他の受付嬢に対して失礼だと思う、きつい香水の匂いを振りまくこの女性はメイド服が冥土服になりそうな若干年配の方だ。
「ようこそ。冒険者ギルド・ラーズグリーズ支店へ」
「今日はちょっと……カナタって人が今どうしてるか聞きに来たんだけど」
さり気無く、知り合いが元気にしているか聞く風を装う、完璧だ。
「はぁ? カナタと言う冒険者の方に会った事が無いので分かりかねますの」
「どういう事だ?」「わかんねえよ!」「俺は夢でも見ているのか?」
ちょっと外野がうるさいけど、何かあったのかな?
「少し前の緊急依頼で行方不明になったと聞いたモノで。知り合いだったので心配になって来たんです」
私、知り合いを心配していますオーラを放ち、ついでに目に涙を少し溜める、この技術はカーナさん直伝だ。
「それはそれは……残念ですがまだ見つかっておりませんわ。捜索の為、各クランが動き出しているようですの……」
「ただの知り合いか?」「親類?」「俺はカナタの方が好みだぜ?」
何か様子がおかしい?リリーはどう見てもボクには似ていない、ドッペルリングの効果が切れた?
「ちょーっと聞きたいんだけど入り口で『ピシッ』って音が鳴ったのは何?」
「冒険者ギルドは入り口に幻影系の魔法、スキルを解除する仕掛けがかけられているのですわ? 女性冒険者が時々胸を大きく見せたり若く見せたりするのですわ……」
よーっし……逃げる準備をしよう、ここは戦術的撤退だ。
「カナター! うちは愛してるでー!」
懐かしい声が聞こえて振り返ると、ルナ?が走りよってきて飛びついてくる。
「えっ? ルナちょっと大きくなった? ただいま」
嬉しくなったボクは胸に顔を埋めるルナを抱きしめる。
ルナは遠慮無くさらに胸元に顔を突っ込みスンスンし始める!?
「あっ、ちょっと、こんな場所でスンスンしちゃだめだって!」
顔を上げたルナはルビーの様な綺麗な目でボクを見つめ、尻尾を全力で振っていた。
ルナの視線がボクの後ろへとずれていく?後ろに何かあるの?
「隙有りですわ! 死になさい魔王の嫁ぇぇぇ!」
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
んん?この声はさっきの冥土さん?どういう事か説明して貰わないと、それになんで魔王の嫁がばれているのか。
「カナタ!!」
「ほぇ?」
振り向いた瞬間、『ゴキンッ』っと金属特有の鈍い音がフロアに響き渡る。
何故か上段からクレイモアらしき武器を、ボク目掛けて振り下ろしている冥土さんがいる。
手には元クレイモアと言うべき折れた物が握られていた。
少し頭が痛いと思ったら振り下ろされた剣がボクの頭に当たって折れた様だった。
「フェイクラビッツの帽子って頑丈なんだね?」
「「「「「「いやいやいや! 違うから!」」」」」」
全員に突っ込まれ、良く見てみるとフェイクラビッツの帽子に切り込みが入っていた。
「折角作ってもらった帽子なのに……【自己修復E】が付いてても治るまで時間かかるんだからね!」
「「「「「「怒るのはそこじゃないだろ!」」」」」」
惚ける冒険者をとりあえず放置して、また振り向こうとして気が付く、ルナが……居ない?
冥土さんの方へ振り向くとそこには、冥土さんを九割殺しにしているルナがいた。
「ちょっとまってー! ルナ何やってるの、その人は受付嬢だよ!? そしてルナ今更だけど喋れるようになったの!?」
冥土さんは両手両足の腱を切られ、両手の指を全部折られ、四肢の骨が変な方向に曲がっている……
メイド服は血に染まり顔はまんまるに膨れ上がっていた。
「ルナ! もう大丈夫だから落ち着いて!」
冥土さんに【治療D】を一瞬だけかけ死なない様にすると、ルナに口付けする。
正気じゃないくらい怒っているルナを止める方法が他に思いつかなかった。
「んちゅ、むん、んん。ふぅルナ、落ち着いた?」
「グルルルルゥ」
ここまで怒ったルナを見るのは初めてだ。まだ呻り声を上げて威嚇している。
「何事です! えっ!? カナタ? えっ!? ラフレイシアさん?」
マーガレットが来てくれて助かった。
ボクはルナをつれてとりあえず後ろへ下がる、フロアに居た冒険者達が事情を説明してくれているみたいだ。
「カナタおねえちゃん!?」
メアリーが抱きついてくる、ルナと一緒に抱きしめてあげるとゴロゴロ喉を鳴らしすり寄って来る。
右手を怪我しているようなので治療しておく。
「「「「「「初めまして主様!」」」」」」
一四人の子供達が整列してこちらを見ている。
「ん? えっ? どういう事?」
「カナタ、一緒について来て下さい、リトルエデンの皆さんも一緒に。あとオルランドも来て下さい」
クエスチョンを飛ばすボクをよそに、話は進んでいくようで、マーガレットさんと、拘束されたラフレイシアさんを抱えたオルランドさんが通路の奥へと入っていく。
ボクもルナとメアリーの手を握ったまま後ろに付いて行く事にする。
向かった先は会議室。入るなり机がどかされて、オルランドさんの手で中央に置いた椅子にラフレイシアさんが縛り付けられる。
「マーガレット、俺の記憶が正しければ……こいつは王都の冒険者ギルド本部から派遣された調査員だよな? これはどういう事だ?」
「各支部を回って……受付嬢の勤務態度を調査すると言う名目で、職員のボーナス査定をしに来たのだと窺いました」
オルランドさんとマーガレットさんが相談中なので、ラフレイシアさんの意見を聞いてみる事にする。
「【治療D】何か言いたい事はありますか? 早めに喋った方が身の為だと思いますよ?」
「グルルルゥ!」
惚けた顔でこちらを見ているラフレイシアさん、呻り声を上げるルナを必死で推し止めるメアリー。
「はぁっ!? あの傷を一瞬で? やはり生かしておけば王都冒険者ギルドの脅威となりそうですの!」
「はい? 支部がどこであろうと冒険者ギルドは同じモノじゃないんですか?」
いきなり変な事を言い出すから頭が混乱してきた。
「私から話します、冒険者ギルドとは各領地の領主、この場合一番偉い貴族の了解を貰って、設置する事が出来る一種の育成機関で、冒険者を育てる意味合いが有るのです」
「登録した支店を移動できないのはそう言う事だぜ、ある意味領主の私兵の様なモノだ」
「色々な悩みの種や依頼をこなしてくれる、便利な冒険者って事?」
まぁ、領主である以上自分の領土を大きくして、暮らす民を幸せにする義務があると思うので問題ない。
「今は大丈夫ですが、昔は他の領地を攻める兵として……駒として冒険者が扱われた時代もありました」
「文献に載ってるレベルの話だぜ? 気にしている冒険者はほぼ居ねえよ」
大昔の話を元に、同じ組織内での派閥争い的なモノがあるのかもしれない。
「二〇名以上のシングルスター冒険者を王都のギルドへ登録もせず、あまつさえ私の斬撃で傷も付かない化け物を飼っているなど、反逆の意図があるとしか思えまブギョル」
ルナが裏拳でラフレイシアさんの頬を打つ。
「今……首が180度回転したよ!? 【治療D】」
すぐさま治療する、ルナは相当怒っている様だ……
二〇名以上のシングルスターって……原因はボクだと思う。
「シングルスターの登録遅れは、全員同じタイミングでなったので手続きの都合登録が遅れただけですと、何度も言っているじゃないですか……」
あの蜂を呼んでしまった原因なボクとしては、土下座したい気分になってきた。
「スキルでも無い斬撃が【絶壁】に通用すると思う方が間違ってんだよ!」
「カナタと、あ……あの【絶壁】が同一人物!?」
んん?おかしな話になってきたよ、オルランドさんがニヤケ顔で自信満々にまくし立てている、【絶壁】の噂が王都まで届いているのか……
「ど、ど、ドラゴンも避けて通ると言う……絶望の壁! 絶対なる壁、師匠である【舞盾のロッズ】をも屠ったという絶望の体現者……生ける伝説の!?」
ラフレイシアさんの座った椅子の足からシミが広がっていく、思わずルナがメアリーごと離れてボクの後ろへ回る。
ロッズさん死んだ事になってて可哀相……それにしても、オルランドさんが噂に尾ひれ背びれ胸びれ鱗に肉も付けて、どんだけ酷い内容に変えているのか問い詰めないといけない。
「通常、冒険者ギルドの利益を損なう行いと、他支部からのスパイ容疑に有力な冒険者の命を狙う凶行、コレだけ合わされば……楽には死ねませんよ?」
マーガレットさんが脅しにかかってる、ポケットから出した鍵は何?
「この鍵は……まぁ、王都の調査員ならわかりますよね? 解体室の隣の部屋の鍵です」
「おいおいマジかよ……さっきのルナの裏拳で死んでた方が幸せだったな……」
オルランドさんが役者なのは分かるけどラフレイシアさんの震え方が尋常じゃない。
「何でも喋ります! 何でもします! お願いします! 殺してくださっても結構ですのでそれだけは止めてですの!!」
死ぬよりも辛い事?ラフレイシアさんが座った椅子の足が、震える事で床に打ち付けられうるさい。
「ボクも無事だったし、そこら辺で許してあげても良いんじゃないですか?」
マーガレットさんもオルランドさんもやれやれと言った風に首を振っている。
「同じ事をしたら普通は死罪だぜ? それにカナタは平気でも……あの攻撃がルナを狙ったモノだったら死んでいたんだぜ? カナタの家に居る他の仲間や、宿の留守番をしているマリアンに凶行が及んだらどうするんだよ」
「スベテ……コロシテヤル。死ぬ寸前まで痛めつけ、治療し心が壊れるまで殺し尽くしてやる……」
「カナタ?」
マーガレットさんが心配そうにこちらを見ている。
考えてしまった。ボクが原因で本当にルナの……仲間の命が失われてしまう事が起こったら……
それはイケナイ事だ。そんな事するようなやつは生きていて良い筈が無い。
「おいっ! カナタどうしたんだ! しっかりしろよ! 正気に戻れ!」
「え? どうかしたんですか?」
「お前の影が蠢いているんだよ! 何のスキルか知らないが第六感が鳴りっぱなしだ! 止めろ!」
気が付くとルナとメアリーを守るようにボクの影が大きく広がっていた。
「いやだなーボクが同じ人間相手に、殺しとか酷い事するわけ無いじゃないですか?」
影は気が付くと元の大きさに戻っていた。
「まぁ良い、マーガレットそいつは王都に送り返せ、【絶壁】にちょっかいをかけるやつが出ない様に上へ報告させるんだ」
「命拾いしましたね、ラフレイシアさん……?」
マーガレットが話しかけても反応が無い、メアリーがシミに気をつけて近寄り頬を叩く。
「このくさいオバサン気を失ってるよ?」
この後、領主へ報告が行きすぐさま臨時の王都直行便の馬車が用意された。丁度王都に用事があったグレンドルさんと、気絶したままのラフレイシアさんを詰め込み解散となった。
冒険者ギルドフロアへ戻ると、緊急依頼に参加した皆が揃って待っており、マーガレットさんがボクの背中を押す。
「えっと、色々ご迷惑をおかけしましたが無事? 今日戻ってこれました! 皆ただいま!」
「「「「「「オオッー」」」」」」
「やっぱりうちの詠み通り、カナタは自分で戻ってこれたで! カナタ褒めて! うち群れを大きくしてたんやで?」
「皆一緒にがんばったんだよ! カナタおねえちゃん」
「「「「「「主様これからよろしくお願いします!」」」」」」
クリスは居ない、多分王都に戻ったのだろう。
それにしても群れって何かな?いつの間にかボク主様になってるし、これからマリアさんに合わないといけないし盾を返さないといけないし、やる事が多すぎて泣きそうだよ!
「今日は今から宴会だ! 働くのは明日からな! お前ら酒に料理に何でも持って来いー!」
オルランドさんのかけ声で一斉に宴会の準備が始まる、ここ冒険者ギルドなのに良いのかな?
「今日だけですよ? グレンドルさんには申し訳ないですけど、臨時休業とします!」
マーガレットさんも乗り気で、酒の匂いを嗅ぎつけたのかロッズさんも居る、ロズマリーさんがボクを後ろから抱き締めてくる、絞まる……マリアンさんも急いで駆けつけたのか手を振っている。
『ブルルルル、ブルルルル』
左腕からスマホのバイブが?もしかしてカーナさんからのメールかな!
「クゥ~ン、ちゅ、ちゅ」
ルナが前から抱きついてきてキスの嵐を降らせる、後ろからロズマリーさんがなでなでして来る。
メアリーもルナごと抱きつき、ボクを主様と呼んだ子供達も集まってくる、おしくら饅頭状態で皆笑う。
「今日は羽目を外して楽しむよ! 明日からは冒険再開だねー」
やっとボクの冒険は始まる、明日からは本気を出す!
週3くらいの更新頻度になりますが、二章からもどうぞよろしくお願いします。




