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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第1章 チェンジリング
48/224

SS お金はうちらが回す物(カナタの居ない四日間)

 昨日の夜は危なかった。

 朝起きるとまずはベットの上でメアリーと作戦会議や。


「イイ線いってると思ったんやけど……」

「ルナはもう少し考えてから動いたほうが良いよ? 私のこの尻尾どうしてくれるの!」


 メアリーの尻尾は、先端から10cmほど毛が焼けていて地肌が見えている。


 昨日、スラム街にうちとメアリーで忍び込んで、うちらの仲間になりそうな子供を攫って来たところ。

 帰り遭遇した兵隊に魔法使いが混じっていたのがまずかったと思う。


「うちが咄嗟に助けたんやし、ぷらすまいなすぜろやろ?」

「尻尾は焦げた分マイナスだけどね! しばらく尻尾を服から出せないよ……」


 黒いマント被ってたし大丈夫やと思うけど、メアリーは心配性やな。


「さすがに四人同時はまずかったと反省しとるよ? でもメアリーは六人も子分が居るのにうちは居ないのは悔しいわ!」

「子分じゃないよ!? 欲しいならあげるよ!」

「それにしても……お金が全然足りんね」

「ちょっと、まだ話終わってないよ!?」


 六人は昨日の内に、硬皮の盾とトロール皮のベストと黒鉄杉の鉄槍にバックパック、それとラビッツ皮の靴を各自ガーネット&グロウのお店で購入済みで。

 一人金貨1枚も装備に使ってしまっていた。


「黒鉄杉の鉄槍とトロール皮のベストにこだわらなければ、もう少し安かったのにね……」

「お揃いが良いやん? うちは武器使わんけど」


 黒鉄杉の槍はカナタが使っていたエモノやし、何故か防具屋に売っている。なかなか使いやすそうで、揃えるなら剣より槍やね。


「部屋の装飾とタイガーベアの毛皮を各自一枚に、日用品とその他各自の持ち物を買って金貨2枚が一日で無くなったの? ご飯と住む場所は何とかなるとしてもお金貯めないといけないね……」

「うちに考えがあるねん! これ見てや!」


 イデアロジック(罠操作)を尻尾から取り出すと、メアリーの顔の前へもって行く。


「これをうちが覚えて、あの弓矢が出てくる罠を使うねん! うち天才ちゃうか?」

「天才と馬鹿は紙一重と言うらしいよ……でも危なくない? あの矢結構早いよね」


 メアリーにはあんな遅い矢が見えてなかったみたいや、ちょっと鍛えないといけないかもしれない。


「あの矢くらい目を瞑ってても取れるで? 矢をいっぱい拾って武器屋に売ればお金持ちや!」

「木の矢だったら私達で使っても良いかもね、矢で遠くから撃って近寄ってきた魔物を槍で倒すの~」

「完璧やな! 危ないから昨日の子供達は、穴通路のラビッツ狩りと入り口の番をさせといてうちらだけで行くよ!」


 まずはご飯や、1Fに置いた大きなテーブルに皆集まってご飯を食べる、ご飯はマリアンとエルナが作ってくれるので子分に運ばせて、一回目の鐘を合図に食べ始めるルールにした。


「なぁ、オレ達六人は何すればいいんだ?」

「何をすればいいんですか? やっ!」


 口の利き方がなっていないのでデコピンの刑に処す。


「いってぇー! ボスのデコピンはもうAスキルだから! やばいってデコ割れてないか?」

「ボスもずっとその口調のままなの?」


 レッティに痛いところを突かれて考える、別に口調とかどうでもいいんちゃうかな?


「公式の場所だけは綺麗な口調で喋れたらええな……アルフすまんうちが悪かった」

「おう、オレも勉強する。で、オレ達は狩りでもしてこれば良いのか?」


 うちが食べるラビッツを取ってきてもらわないといけない、【血脈S】にはまだまだ足りない。


「あの北門外から林付近に移動して、人が少ない場所でラビッツを狩って来るんや。イデアロジックが出たらクランで回収する、肉はうちがスキルの為に貰う、毛皮は自分達の物でええよ? あと頭はかならず花が生えたまま回収してくるんやで!」

「イデアロジックは出ないとしても、それ殆どタダ働きじゃないか……」


 始めが肝心って言う事らしいし、ガツンと言っとかないといけない。


「カナタが戻ってくるまでうちがルールや! 嫌なら庭で寝るんやな? あとロッズにも報告するからな」

「「「すいませんっした!」」」


 アルフと他の男二人も何故か土下座し始める、昨日の黒鉄杉配達マラソンがよっぽど効いたみたいやな。


「あと皆コレ着るんやで、浄化と再生がついてるらしいからずっとそれ着ててもええよ?」

「「「「「「ありがとうございます~」」」」」」


 この服、カナタとうち以外が裂いても分裂しない事がわかった。

 多分うちが裂いても分裂するのはカナタの眷族やからと思う、予備も含めて量産体制に入ったから安心や。


「それじゃうちとメアリーは金策やから、皆期待しときや!」

「矢別の出現法則を研究するよ!」

「うちわからんから任せるわ……」


 ご飯を食べ作戦会議が終わったので各自解散する、うちとメアリーは地下に下り六人の寝床を見て驚く。


「壁が真っ白になってる……」

「嫌な匂いもなくなってるわ……」


 壁よりに簡単に作られた黒鉄杉の廃材二段ベットが二個並んでいる、アルフと他の二人分で、ここから進入できないよう見張ると共に、通路側から侵入者が入ってきたらすぐに迎え撃てるように、穴通路からの鳴子がセットしてある。


「さすがロッズや、完璧な仕上がりやで」

「私のお父さんってこんな凄い事が出来る人だったんだね……」


 メアリー、それロッズに言わん方が良いと思うで、多分泣くは……


 扉をあけ通路に入り数部屋分歩くと、湯浴み場がすぐ見えてくる、床を二段構造にしてあり、使った後の水は通路脇の溝を通って全部あの大穴に捨てられる仕組みになっている。

 穴の底に水が溜まっていくけど多分大丈夫だと思う、変な匂いがし始めたら考えたら良い。


「湯浴み場は覗き対策してないみたいやけどええんかな?」

「多分誰も覗かないから大丈夫だと思うよ? お父さんが覗いたら黒鉄杉を突っ込むって言ってたの~」

「どこに突っ込むんやろか?」

「目か口じゃない?」


 メアリーが恐ろしい事いっとるけど、あのロッズならやりかねん。元から男を増やす予定は無いし良いけど。


 通路を抜け防護柵とバリケードを超えてまだ進む、あのダンジョンに繋がる扉は一応閉めてあるけど念のための処置で。

 夜眠る間は見張りを立てる人数も居ないので、鳴子と黒鉄杉の壁で凌ぐ事になっていた。

 しばらく進むと扉を抜けた場所に、弓矢の罠がある隠し小部屋が見えてくる。


「メアリーは、うちが掴んだ矢を後ろに捨てるから、拾って扉の中に並べていってな?」

「わかった。危ない矢が出てきたら一声かけてね?」

「耐性毒なら持ってるし、多分平気とちゃうか?」

「一応だよ、一応……」


 心配性のメアリーから視線を罠のスイッチに戻す、一回押すと一本飛んでくるなら連続で押したらどうなるんかな。

 ゆっくり二回連続で押してみる。


「ちょっと! 一回ずつで良いよ……」


 二本飛んできたけど両方木の矢で期待はずれや。次は五回くらいで良いかな?


「ふぇっ!? 五本も飛んできたよ! しかも飛んでくる位置がずれてたよ!」


 欠伸しながらでも取れる、あっ!一本銀の矢が出てきた。四本は木の矢で安そう……次は一〇回やね。


「ふぃっ! 一〇本も飛んできた……ルナ危ないよ、五本までにしとこ?」


 メアリーが泣きそうな顔でこっちを見てくる、でも銀の矢がまた一本と金色の矢が一本、それと黒色の矢が一本……


「メアリーこれって金貨と同じやつやないか! あとこの黒いのは嫌な匂いがするから捨てとくで?」

「金の矢って武器としてはどうなんだろう……私でも曲げれるくらい柔らかいんだけど。その匂い多分麻痺毒だと思う、当てたエモノが食べれなくなるから要らないね」


 黒色の矢を穴に捨てて罠を起動させる、一〇本くらいが丁度良いかもしれない、回数押す方が大変だと思った。


「昼になるまでひたすらこれやから、疲れたらメアリーは休憩してな?」

「ルナはずっとやるんでしょ? 私も付き合うよ」


 メアリーは矢をそれぞれ別の場所に移しながら答える。


「昼ご飯を食べたら一度売りに行こうな! っと危ないわ!?」


 凄く嫌な匂いがしたので手で取らず避ける事にする、壁に刺さった矢は黒紫色で矢尻から初めて嗅ぐ嫌な匂いがする。


「まって! その矢危ないやつかもしれない、私達の毒耐性じゃ死にはしないと思うけど動けなくなるかも? この匂いは……コカトリスの毒かも!!」

「コカトリスの毒ってどんなんや?」

「体がどんどん石になっていくんだよ? それも危ないし当てたエモノが石になっちゃうと食べれないね……」


 黒紫色の矢も穴に捨てる事にする、スイッチを押し矢を掴み後ろに放り投げる、タダ単純な作業だけど慣れると楽しいかもしれない。時間を忘れひたすら繰り返す。




 ――∵――∴――∵――∴――∵―― 




 それは何時間経った頃だろうか、飛んできた毒矢を穴に捨てた少し後に、穴から身の毛もよだつ叫び声が響いてきた。


「グギェェェェー……グェッグ」

「「!?」」


 穴の底に何か居る?声の大きさからして相当な大物だとわかる。


「メアリーこの穴の底にダンジョン続いてるんちゃうか? ロッズが前言ってた事は正解やったんやな! 拾うの後でええから、一応底に向けて灯火いっぱい落としててな! 上がってきたら怖いしな……」

「わ、わかった……ルナが今落としたのって麻痺毒の矢だよね? 皆で矢降らせたら倒せないかな?」

「それや! 強くなれるかもしれん。このまま矢を集めて要らない分は穴に捨てる用にこっちに積んどくで?」


 穴の2mくらい手前に、錆びた矢と黒色の矢、黒紫色の矢、茶色の矢……と嫌な匂いがする矢を並べていく、六時間くらい矢を回収していたのでハズレの矢だけでも相当な数になっていた。


「そろそろお昼やし、先にご飯食べよ! あの後、声聞こえてないから多分今は移動したんとちゃうか?」

「そうだね! 他に何か落とす物無いか探してくる、あとお父さんにも連絡するよ?」


 強い大人が居たら安心できる、ロッズなら最悪魔物が上がってきても何とかしてくれると思う。


「扉の閂はしっかり閉めておいてな……」

「私びっくりして矢落とすかと思ったよ……」


 お互いそれ以上何も言わない、獣人は鼻が良いからすぐ分かる……

 ご飯食べる前に二人で湯浴みする事にした。




 戻るともう皆揃っていてご飯の用意が終わっていた。

 メアリーはロッズを迎えに行き、戻ってくるまでの間に庭に転がっていた石や岩など出来る限り地下の扉前に運ぶ事にした。

 地下に下りた皆は、壁際に並べてある大量の矢に目を見開いて言葉を失っていた。


 すぐロッズをつれてメアリーが戻ってきたので作戦会議や。


「皆食べながら聞いてや! あの穴の底には大型の魔物が最低でも一匹は居るみたいで、多分あのダンジョンの最下層に繋がってると思うわ」

「俺の推測は間違っていなかったな!」

「オレ怖いんで残ってて良いですか?」


 アルフは無言でロッズにゲンコツを貰いテーブルに突っ伏した。


「作戦は簡単や、上からひたすら物を落とす、麻痺の矢を定期的に落とす事で運がよければ倒せるかもしれん、ドロップ品とエモノは回収できへんけどレベルは上がるかもしれんで!」

「それならお前達でPTを組んで、共有設定にすると良いぞ。経験値が均等に振り分けられるから余程の大物じゃない限り、成長痛も無いはずだ」


 PTを作りうちが昨日攫って……勧誘してきた四人とメアリーをPTに入れる、六人組みはいつも道理そのままのPTだ。

 現在うちとメアリーは二つのPTに所属している、普通の冒険者リングで作ったPTは二つ以上のPTに入ったりする事は出来ないみたいで、さすがうちのカナタやとおもう。


「俺は一番安い使い捨ての盾で穴の真下へと誘導する係りだな。もし飛行可能な魔物の場合はすぐさま扉へ戻って閉めるから俺より前には絶対出るなよ! 返事はサーイエッサーだ!」

「さーいえさー? ロッズそれなんや?」

「カナタの故郷で、格上の者への敬意を表す返事らしいぞ? お前達のクランに丁度良い返事じゃないか! 俺は自分のクランから動く事はできんが、お前達の師匠として鍛えてやる事くらいはできるぞ」


 ロッズは良い人や、これで皆強くなれる。


「さぁ、俺が盾でエモノを釣るから間って居ろよ!」


 うちはまた矢を増産していく、他の皆にも一応手伝ってもらって出荷体制もばっちりや。

 売りに行くのは明日になりそうやな……




 それから六時間、音沙汰も無くただ矢が増えていくだけで、ロッズの顔にも焦りの色が見え始める。


「もう大分移動したんとちゃうか?」

「こんなはずでは、無かったんだが……」

「うちなら一度痛い目をした場所には注意して行く事にするで……」

「「「「「「……」」」」」」


 そろそろ手も疲れてきたし全員ダレてきている、何よりもうご飯の時間や……

 その時、背後から新人四人の悲鳴が聞こえた。


「いつの間に後ろに回った! 俺の盾が火を吹くぜぇぇぇぇ!」


 ロッズが颯爽と背後に回りこむとそこに居たのは……


「何か言いたい事はありますか?」


 目じりを吊り上げたマリアンだった。


「いや、これは、ちょっと……ロマンが叶ったと言うべきか、童心に返ったと言うべきか……」

「童心に返ったお若いロッズは宿番をエルナに任せっきりにして、こんな穴倉の中で【盾闘円舞】の自慢話ですか? 良いご身分ですね、子供に戻ったのなら酒代は要らないので、エルナに臨時ボーナスを出すとしましょうね!」

「全て俺が悪かった! エルナには謝る、この通り簡便してくれ!」


 ロッズがマリアンに土下座して謝る姿を眺める者達がそこには居た。


「矢はそのままにして扉の閂をしっかり閉めたら戻ろか? うちら湯浴みしてからご飯食べるからマリアンお願いやで?」

「私が腕によりをかけて作ったから、今日は皆、宿の食堂で食べなさいね?」

「「「「「「はーい!」」」」」」


 ロッズがこっそり立ち上がりマリアンの横を通り過ぎようとした時、マリアンに捕まり耳元で何か囁かれていた。


「今日から私はベットを別にして寝ます、ロズマリーに搾り取って貰うので覚悟していてくださいね♪」

「まさか? 本当なのか? ロズマリーには言ったのか?」


 ロッズは顔面をクシャクシャにくずし、涙を流しながらマリアンのお腹をさすっていた。


「勿論、いつまでもウジウジしていたらカナタが悲しむと言って、立ち直らせましたよ! まだメアリーには秘密ですよ?」


 先ほどのロッズとはまったく違う、父親の背中を皆に見せながらマリアンと一緒に歩いていく。


「何か良く分からんけど、ロッズとマリアンが幸せそうだとうちらも嬉しいな」

「オレら自分の親の顔も知らないけど……マリアンさんとロッズさんは優しく接してくれる、オレ達の親もあんななのかな?」

「クランの皆は家族の様なモノだよ! 私達も湯浴みに急ご?」


 メアリーは照れくさそうに言うと早足に湯浴みへ向かう、残されたうちらも皆手を繋ぎ急いで戻る事にする。


「あっ……男連中を除いて、皆カナタの嫁やから本当の家族で良いんやないか?」

「ボス、それは酷いです……」




 現在『小さな楽園(リトルエデン)』カナタも入れて一三人や!








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