第39話 血沸き肉踊る日々?ヌルヌルー!
何も考えずただ目の前で起こる現象を眺める。
ガラスの塔内部に満たされた薄水色のニートは、ボクの全身はおろか体内にまで侵入しており、心地よい温かさで包み込んでくれている。
ガラスの塔の外には真剣な顔で愛さんとお話中のアウラさんが見えた。
右手が内側から爆ぜる、散らばった肉片はすぐに元の場所に戻る。次は左手かな?
左足が痙攣しながら膝からの骨が外に飛び出る、やはりすぐに元の場所に戻る。次はどこかな?頭じゃないと良いな……
お腹で血が泡立つ様に沸騰している、薄水色のニートに混ざって不思議な色になっている、すぐに戻らない。内蔵は再生まで時間がかかるようだ。
あ……頭が爆ぜた様だ。先ほど見ていた位置からアウラさんが大分移動していた。何分?何時間だったのだろうか?
繰り返される崩壊と再生、ニートポイズンのおかげで痛みは無く、アウラさんのおかげでボクの心は壊れずに済んでいるようだ。
時折アウラさんの声が直接全身に伝わってくる、このニートはリバイバルニートと言う名前にしたそうだ。
ボク専用の固体でボクの血肉を吸収して体を治してくれているらしい、先ほどアウラさんに言われた通り【魔力の源泉】を使いっぱなしにしてある。
『世界に存在する力』を垂れ流すように使い、溢れる魔力で体を無理やり再生させていると言っていた。
愛さんは尽きないかどうか心配だったみたいだけど、消費する量より自然回復量の方が多いらしい。
二四時間【魔力の源泉】を使い『世界に存在する力』を垂れ流し続けても回復量の方が多いのは普通じゃないそうだ。
元から多かった意外にも原因があるみたいな言い方だった。他者の力を吸収して増えた痕跡があるとか?
思い当たるのはスマホに吸収している魔力を貯めた魔水晶と魔晶の欠片くらいなんだけど……
普通は有り得ない現象みたいで、そうやって吸収した分には問題も無く逆にメリットしかないので今後も増やすように言われている。
時間の感覚が無い、ここに入ったのが二日目の昼前だったはずだから、愛さんが昼・夜・朝の三回ご飯を食べているのを見ていると言う事は三日目になるのかな?
今日中に治るのだろうか……明日は結婚式みたいだし、カーナさんをあちらの世界に送る日だ。
この状態になってからカーナさんもブリギッドも表れて居ない、アウラさんが言うには全ての機能を再生に回している為だそうだ。
一瞬トイレとかどうなっているのだろうかな?と考えそうになったけどそれはイケナイ事、考えるのを止めた。
愛さんがご飯を食べている、もう昼になったのかな?
愛さんの嫁が交代でお見舞いに来てくれているので眺める、嬉しい、何故だかわからないけど笑顔がこぼれた。
笑顔を向けられた嫁は鼻血を噴きながら倒れていたけど『我が人生に一片の悔い無し!』とか言っていたので大丈夫だろう。
体の崩壊が緩やかになってきた、もうすぐ再生が終わるのかな?
頭やお腹はもう崩壊しなくなっている、痛みや感覚が無いけど一応手は動かせるようになった。
意識が少しはっきりして来る、現状を把握しようとして思考するがアウラさんの声がそれを止める、まだ早かったみたいだ。
自分の体を眺めると異変に気が付く、少しだけ身長が伸びている?手足も?
胸が前より少し膨らんでいる気がするし、お尻も少し大きくなっているような……
体全体に前より肉が付いてきたみたいだけど、これって再生じゃないよね……成長?
――∵――∴――∵――∴――∵――
温かなニートの中をたゆたう、夢を見ているようなふわふわとした気持ち、ガイアお爺ちゃんの声が聞こえてくる。
「今まですまんかったな、ワシもあの糞のちょっかいを跳ね除けるので手いっぱいじゃったわい」
(姿が見えないけど大丈夫?)
「こちらの世界の依り代を壊されてしまってな、じゃがこれであの糞が直接こちらに来る事ができんようになったわい」
(そうなんだ? 愛さんがガイアお爺ちゃんの事探してたから伝えとくね?)
「すまんのう、伝えておいてくれるか。……そろそろ記憶も返すとするかのう」
(そう言えば何で事故の記憶が無いの?)
「時が来ればわかるじゃろうて……」
(わかった)
「少しずつ記憶が戻ってくるはずじゃからの……」
(何か寂しそうだね? ガイアお爺ちゃんどうかしたの?)
「この世界で皆と会うのはこれが最後じゃからのう。次合う事が有るとすれば……〔FOURTH HEAVEN〕かもしれんわい」
(六番目の天国? またいつか会えるのならその時は、ボクの大切な人達も一緒だよ!)
「ワシの願いの為にも、必ず上がってくるんじゃぞい!」
(任しといて! 誰一人欠ける事無く会いに行くからね!)
「カナタにやった黒い羽根の力がもう枯渇するのう……最後にここまで頑張った褒美をやろう、どんなスキルが良いか言って見るといいぞい!」
(あぁ、黒い羽根一個はガイアお爺ちゃんがくれたやつなのか、あのドロップ率の異常も未鑑定スキルのおかげかな?)
「鋭いのう、【黄金率】と言うスキルじゃ、同じ物が欲しいのか?」
(もうボクには必要無いのかもしれない、ボクより仲間の為になるスキルが良いかな?)
「その惨状の事を言っておるならそうかもしれんのう、肉体は人間の限界を超えてきておる……いずれこちらに来る事になるやもしれんわい」
(こちら? まぁ……ぱっと思いつくスキルと言ったら愛さんが使っていた【スキル分与】なんだけど、あれってスキルをコピーして他人にあげれるの?)
「アレは無理じゃ、小娘専用のスキルじゃからのう、似たようなやつなら作る事は可能じゃぞ?」
(それでお願いします)
「ちょっとまっとれよ……SES【才能開花】じゃわい! 効果もそのまま対象に眠っている素質を呼び起こすぞい!」
(そういうやつが欲しかったよ! ボクだけ強くてもダメだしね、ありがとうガイアお爺ちゃん)
「スキルを昇華させておいたぞい、そろそろお別れじゃ! 気張れよカナタ!」
(またね!)
――∵――∴――∵――∴――∵――
ん、んん?夢じゃないよね多分。愛さんがご飯を食べている、もう夜になったのかな?
それにしても食っちゃ寝ばかりしているけど魔王の仕事とかないのかな……
アウラさんは机に向かって書類と格闘中みたいだ。時々船を漕ぎそうになっている。
「アウラさん起きてますか?」
「声!? もう言葉を喋れるようになったんです?」
体が軽い、手足を動かし全身を撫でて様子を見る、大丈夫だ問題ない。
それにしても胸がふくよかになっている、自分の胸ながらこれは良い物だ。
「感涙に咽び泣き! 死にかけた事には目を瞑っても余りある成果よカナタ!」
「大分前の僕のサイズに近づいたね? カナタは大きい方が好きなんだよね?」
「凄く久しぶりな気がしますね! もう明日にはカーナさんが居なくなるのかと思うと寂しいです」
やっと三人揃って元通りになったみたいだ。
急にカーナさんは体の主導権をボクから奪うと絶妙な力加減で胸を揉みしだき始める。
「あぁン、ちょっと、カーナさん! だ……めっ! ん、ふぁ、やっ」
「私の中で何やってるんですか!」
「何で私はそこに入ってないのぉぉぉぉ! アウラそこどいてぇぇぇぇ!」
戸惑いながら守るアウラさんに、お腹を空かせたハイエナのような顔でこちらに飛び掛りそうな愛さん……そろそろ変な気分になるから止めないと。
「体の再生が完了したようです! 出してください、もう大丈夫だよ?」
「ダメです、明日の結婚式ギリギリまで入っててもらいます」
「アウラの鬼ー! 悪魔ー! カナタと一緒にお風呂に入りたいよー!」
床に寝転がってイヤダイヤダする愛さんを冷めた目で見つめるアウラさん。
カーナさんが何故かアウラさんに向かってコイコイしている。
「何ですか?」
「わ・た・しのからだ美味しかったかしら?」
な、ななんて事言い出すんだよカーナさん!
丸一日以上アウラさんの作ったニートの中に居たけどソレは言わないお約束じゃないの!
「私のカナタが……」
「違いますからね! 今のはカーナさんのおちゃめな冗談ですよ!」
惚けているアウラさんに寝転がってイヤイヤする愛さん……混沌過ぎる!
今のうちにステータスの確認するよ!ドキドキわくわくが止まらないね!
名前:彼方=田中(カーナ=ラーズグリーズ)(サント=ブリギッド)
種族:人間? 年齢:18 性別:女 属性:無・勇・聖
職業:盾戦士・冶金士・儀式術士・魔物の王 位:次期辺境伯
称号:【絶壁】 ギルドランク:E
クラン:小さな楽園 団結:クリスティナ様護衛隊
レベル:1014[282+18+13+701]☆☆☆☆
HP :1796/1796[500+282+1014+☆]
MP :1396/1396[100+282+1014+☆]
攻撃力:1[282+1+★]
魔撃力:1[282+★]
耐久力:298[282+16+☆]×2
抵抗力:☆[1+11+☆]×2
筋力 :1014[282+18+13+701+★]
魔力 :1014[282+18+13+701+★]
体力 :1014[282+18+13+701+★]
敏捷 :1014[282+18+13+701+★]
器用 :1014[282+18+13+701+★]
運 :LUCKY[1+12+☆]×2
カルマ:42[45×2]
SES盗×
:【無垢なる混沌】【創造神の寵愛☆】【原初精霊の加護:土】
;【停止飛行】【創造神の呪★】【才能開花】
UNS盗×
:【魔力の源泉】【舞盾】【祈雨】
EXS盗×
:【眷属化】【冶金】【第六感】【物理耐性】
スキル盗×
:【生活魔法】【治療D】【解体D】
:【脱兎】【耐性:熱F毒E】【解毒F】
Aスキル盗×
:【スピアスタブ】【シールドチャージ】【簡易儀式魔方陣】
:【分解】【テイム】【超硬化】
装備品
武器 :黒鉄杉の槍棒150cm[攻+1]
盾 :硬皮の盾[耐+1]
盾2 :玄武の盾[耐+3抵+1]【自己修復E】【反射E】
兜 :フェイクラビッツの帽子[耐+3抵抗+3]【自己修復E】
仮面 :特殊防弾ガラスの眼鏡[耐+1抵+1]【簡易鑑定】【光量調整】
服 :天使御用達の服[耐+1抵+1]【浄化S】【自己修復S】
鎧 :トロール皮のベスト[耐+2]【自己修復F】
腕 :スマホ[耐+1抵+1]【簡易アイテムボックス+5】【発展】【解析】【提携】【子機】
腕2 :円卓の腕輪[耐+1]【部隊作成】
腕 :エアコンのリモコン[耐+1抵+1]【空気調和】
靴 :フェイクラビッツの靴[耐+3抵+3]【自己修復E】
その他 :夜を背負った様な漆黒色の羽根[成長×2]【追跡者】
:全てを覆い尽くすような漆黒色の羽根[運×2]【黄金率】+-0
:魔王の花嫁[耐×2]【永遠の誓い】
:魔王の首輪[抵×2]【意思疎通】
:VBリング12個[運+12]【心体再生】
:ドッペルリング[業×2]【写し身】
クエスチョンが全部消えた!やったね、でも色々とぶっ飛んだ事になってるね……
ブリギッドの名前も一緒に出るようになったのは良いけど何で年齢が?
次期辺境伯って事はもしかしなくてもボクはマリアさんの血縁者なのかな?
気が付かなかったけどスマホに機能が追加されてる、使ってみよう!
「【子機】?」
予想通りスマホが二個に増えた。増えた方のスマホはどうやら機能限定品みたいで制限が色々有るみたい。
「アウラさん、このステータスの☆と★ってどういう意味ですか?」
「神の加護とか呪ですね、レベルの横に出る☆はある一定のレベルまで上り詰めた者に与えられるイデア様の祝福です」
「スキルが増えたのは良いけど、効果が謎なのが多いので鑑定系のスキルが欲しくなって来るね……」
「あげようか?」
「「えっ?」」
愛さんの一言に胸が高鳴る、なんでアウラさんまで驚いているのかな?
「良いの?」
「私に言う事は?」
言う事?ありがとう?いや、ここは違う気がする!愛さん求めている言葉は……
「愛お姉ちゃん鑑定スキルほし~いな♪ ギュッってしても良いよ?」
ガラスの塔の中、足元に座り上目遣いにお願いする、カーナさんが面白半分で体を動かしている……
「か~なた~ちゅわ~ん」
興奮した愛さんが瞬間移動的なスキルでガラスの塔の中に現れる、何故か一糸まとわぬ姿で!
「今すぐあげるからね! ちょっとこっち向いて? 大丈夫、今ならまだ痛みは無いからね? ちょっと私の腰に両手回して抱きついててね?」
「愛本当にあげるんですか?」
「変な事しないでくださいね?」
ちょっと鼻息が荒い愛さんに心配そうなアウラさん?
スキル分与でちゃっちゃと貰うだけじゃないのかな……ん?
「なにを、してるの?」
痛みは無い、でも感覚はある……愛さんがいきなりボクの左目に指を突っ込んで眼球を抜き取った!?
「鑑定の為に左目を交換しているんだよ?」
愛さんは自分の左目を抜き取り代わりにボクの左目を自分の目に入れる……
次はボクの方に愛さんの目が入ってくる!?
「アウラさん助けて! 左目が勝手に動いてる! 愛さん何かする前に説明してよ!」
「すぐにカナタと一体化して自分の物になるよ?」
「だから言ったのに……」
痛みは確かにない、だけど左目が勝手に動く感覚がヤバイ、体内に違う生き物が入ってきたような……全身に鳥肌が立つ!
「いや、ダメだから! お願い、動かないで! ひゃっ!」
「カナタの体……成長したんだね? 年齢が上がってる、これはもうこのまま……」
お腹に当たる熱くて硬いモノの感触が……
「今これ以上何かすると言うなら、ボクはもうあなたの事を名前で呼びません……」
「勿論私のニートの中でそんな事させませんけどね?」
ガラスの塔上部が開き蔦が愛を掴み放り出す。
大分遠くに飛んでいったけど両手両足で器用に壁にへばり付く……
「あぁぁぁぁ、ちょっと我慢が出来なかっただけなのに、別にナニしようとしたわけじゃないよ? 本当だよ?」
「そうなんですか? あなたの事が信用できないのでもう近寄らないでください」
「えっ、ちょっとカナタ!?」
「どうしました? あなたの自業自得じゃないですか……」
「愛だよ? ねぇ名前で呼んでよ!?」
狼狽する愛さんだけどちょっとくらい良いよね?
「自業自得です、カナタの肉体の変化は【神の呪】の副作用が解けたみたいです。それが本来の姿と言う事になりますね? 後、お赤飯を炊かないといけません」
「お赤飯? 少し甘いやつでお願いします!」
急に四日目の朝ご飯の話になった。思えば丸一日以上何も食べてない、今は動いてカロリーを消費するのは止めておこう、今日はこのままニートの中で眠る事にする。
「初花祝いです! 奮発して世界樹の蜜を使った最高のお赤飯を炊きますね♪」
「どんなお祝いですか?」
「大人になった事をお祝いするんです、成人式みたいなものです!」
成人式にお赤飯食べる習慣があるのかな?
かなり遠くに放り投げられた愛さんが自分の下腹部を撫でながら握りこぶしに親指を立てる?
「これから自分の体になるんだから、しっかりしなさいね?」
「いきなりどうしたのカーナさん?」
「ニートポイズンの毒が消えたら分かると思うんだよ?」
「???」
痛覚が戻ると分かるのか、ならほっといても良いし治療すればいいよね!
「それにしてもこのリバイバルニート風呂? お持ち帰りしたい気分だよ!」
「カナタのアイテムボックス? に入れて持って帰ってくださいね、置いとくと愛が自分のウォーターベット代わりにしそうなので……」
「べ、別にペロペロしたりしないし、中に入って色々したりしないよ!? 本当だよ?」
そこまで考えてなかったは……この魔王残念すぎる。
アウラさんとボクはどん引きしつつ冷たい視線を送る。
「明日は笑顔でカーナさんを送れるように万全の準備おねがいしますね、ちゃんとあちらの世界に送り届けれたらまた名前で呼んであげても良いですよ?」
「私はカナタの為に、全身全霊を持って準備する事を誓うよ! 最終確認もう一回して来るね!」
魔王ももしかするとチョロインかもしれない……
「おやすみなさいカナタ」
「おやすみなさいアウラさん」
それから一時間後、眠る前に痛覚が戻ったボクは腹痛・腰痛・頭痛・間接痛・吐き気・その他もろもろに襲われ治療も効かない事を知ると絶望するのであった……
ここで読んでくれている皆さんに謝らなければならない事が発覚しました……
途中からルビに使う《》と≪≫を間違えて使っており非常に読みにくくなっていることに気が付き、泣きそうになり今修正が終わりました。すいませんでした!
次から間違えないようにがんばりますのでどうぞこれからも
『ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!』をよろしくお願いします。




