第34話 一万二千一年前から愛してる!
意識が覚醒する、いや、目が覚めたのでは無い?
窓から外を覗く様に、誰かの見ている光景をボクが覗いている、ここは円卓があった部屋では無いみたいだ。
部屋を見回すと壁を含め何もかもが真っ白で、所狭しと置かれている本棚が目に入る。本棚には色々な言葉で書かれていると思われる大量の本が並んでいて、部屋の半分は本で出来ていそうだ。
今ボクが座っている大きな天蓋付きのベットには純白のシーツがかけられており、大柄の女性が隣り合って座っている。
「あいらびゅ~う」
目が合うとキスしようとしてきたので避けてみる、さすがに名前も知らない人とチュッチュなんて出来ない!
「カナタ、目が覚めたのね? この人は愛さんといって。あなたと将来を誓い合った仲だそうよ?」
「誰ですか?」
「ノォォォォー! ガイアお爺さまめ……記憶の封印が解けてないとか仕事サボりすぎじゃない!」
両手で頭を抱えウネウネと身をくねらす愛さん?
「すいません……記憶に無い、空白の期間にもし将来を誓い合って居たのなら、今のボクにはどうする事もできません」
「男として責任取るべきじゃないかしら?」
カーナさんが無責任な事言ってるけど自分の体だからね?
「責任……ゴクリ」
「ガイアお爺ちゃんが原因ならそっちから問い詰める方が良いですよね! そうしましょう!」
愛さんの視線が肉食獣のソレになっていたので慌てて話をそらす事にする。
「ガイアお爺さまの姿が消えたんだけど、逃げられたのかな~? もう責任取って貰う方が早いよね~」
「待って! ほらカーナさんも何か言って!」
「愛さんは、このまま現状を維持するとカナタが消えるとしたらどうする?」
「全ての世界を滅ぼすよ? やっと出会えたカナタが居ない世界なんて……もう何の未練も無いしね?」
「「はぁ?」」
ボクの聞き違いかな……冗談とかそういうやつ?いや、あの目は本気だ。
ボクが死ぬと世界が終わる件。
「意味が分からないんですが、なんでボクが死ぬ?消えると世界を滅ぼす事になるんです?」
「運命のアノ日。三人で事故……に遭った日の事は覚えてないんだよね? その……お父さんの事とか」
ここに来てお父さんの話が浮上!事故との関連性が分からないけど、アノ日事故に遭ったのはボクと響の二人のはず?
「ボクにお父さんなんて居たんですか? 誰も何も言わないし、悠さんに聞いても教えてくれないし……」
「いや、カナタの父親は居なかった。それで良い!」
何が何やら?愛さんはもう聞くなオーラをビシビシ飛ばしてくる、ほっとくと物理的にビシビシきそうなのでそう言う事にしておこう。ここまで皆にスルーされるなんてボクのお父さんは何やったんだ……
「話を戻そうか? 三人で事故に遭った日、私はガイアと名乗る超生命体に出会ったの、二人とも死にかけて居たから覚えてないかもしれないけど……」
「多分そこら辺から記憶が飛んだんじゃないかな?」
「違うよ? 私は契約したの、ガイアお爺さまの願いを叶える代わりに二人を助けてくれるようにと……」
事故の後遺症で記憶が飛んだんじゃ無いみたいな事を言っている?
「ボクと響を助けてくれたのは何で?」
「何でも何も無いよ? 響は私の妹だしカナタは二人の恋人だったのだから」
まさかのそんな小さい頃にモテ期が来ていたなんて!しかも公認の二股……いや、ここはあえて言わせて貰うとハーレム!
「ガイアお爺さまとの契約で、こちらの世界に行く事になった私の事を覚えていられるのは一人だけだったの。他の皆は私の事を何一つ覚えてないんじゃないかな~」
「その一人が響なんだね、何でボクじゃなくて響だったの?」
「カナタが運命の相手だからよ! 忘れても必ず思い出してくれると思ったの、それに響との勝負だしね~」
「勝負?」
「こちらに来た私とあちらに残った響、どちらがカナタを自分のものにするかのね♪」
ふむ、ボクはそうして捕まってしまったのか。
でもボクの体はあちらに残っているし、精神体はこちらに居る、勝負はどうなるのかな?
「朗報よね、カナタ助かるかもしれないわよ? 愛さん、あなたあちらに行く方法を知っているんじゃないかしら?」
「送る方法は知っているけど、そんな事教えると思っているの? 私がどれだけ長い年月をかけてカナタを呼び寄せたのか、あなたには分からないでしょうね……」
「三年くらいかしら?」
「この世界はまだ時間軸が近いからそんなに流れに差は無いけど、一番目の世界は酷かったよ? 因みにここは四番目の世界ね。私がここまで来るのに今日で丁度一万二千一年かかったんだよ……」
「すっごいおぼむん、ん、んん!」
「次、変な事言ったら舌を入れるからね……」
無理やり唇を奪われた。年齢の話はタブーみたい……
「私の初めての相手は……一万二千一歳のおばむむ、ん、あっ、む」
カーナさんが自重しなかったせいで色々奪われた……
尻尾が服の隙間から中へ入ってくる!?
「次はどうなるか分かっているよね? ジュルリ」
「「はい……」」
次何されるか分からないけど、知らない方が良い事も有ると思う。
「それだけ時間をかけて、カナタをこっちに呼び込む為に色々小細工してたんだよ~? 天使の枕元に立ってカナタがいかに素晴らしいかを説いたり、本来の転送先とは違う場所に飛ぶように細工したり~。どこかの神にチョッカイだしてわざとこの世界を狙うようにしたりね? あの馬鹿神は私の手のひらでコロコロされてるとも知らずに、カナタを尖兵として送り込んでくれたんだよ~」
重大な事が一つ明らかになったよ!ボクが転送された原因の一つは愛さんみたいだ。
「送られる事になった経緯は分かったわ。先の話をしましょうか?」
「そうだね~建設的な話をしようか。……カナタ結婚式はウェディングドレスが良い? それとも着物?」
「「え?」」
「もう式はいつでも挙げれるようにと教会と神社を立ててあるんだよ? 一晩ぐっすり眠ったら明日の朝には結婚式だね!」
何の話をしてたんだっけ?……そうだこのままじゃボクが消えるんだったよ!
「そう言う事はまた後でね? このままだとカナタは消えちゃうわよ? 何とかする策があるんだけど……」
急に言葉を止めるカーナさんは何故か考え事をしている。
「カナタ? 少し眠っていて頂戴ね、大人の女だけで話がしたいの」
「え? 眠るって何を…あれ、意識が、そんな、事もできるの…」
カーナさんがそう言うと急に眠気が襲ってくる……ボクの方が精神年齢高いんだからね!
後でどうなったか教えてよね、おやすみなさい。
――∵――∴――∵――∴――∵――
「私に話しって何かな? あなたの事はマリアから一応話は聞いてるけど」
「なら話は早いわね、愛さん……あなたにはカナタの精神体と私の体をあげるわ」
「その対価に釣り合うモノは何だい? まぁ分かるといえば……分かるんだけど」
さすが年の功、話が早くて助かるわ。でも歳の事をもうよしましょう……今尻尾の先っぽがお腹の上でビクッとしたのが分かったわ。
「あちらの世界のカナタの体と響さん?っと呼んで良いのかしら? を貰うわ」
「あたながカナタとどこまで混ざっているかによって答えが変わるんだけど、多分響は気が付くと思うよ? 別に響を渡さないとか言うつもりも無いし、カナタの体はこちらに呼ぶには大きすぎるからね……」
私とカナタの境界線は本当はもう無いの、カナタには告げてないのだけど。心が読める愛さんになら任せる事ができるかもしれないわ……
「そう言う事ね、つまりもう手遅れになっていたって事? カナタはあなたと混ざりすぎたの?」
「私が眠る限りカナタはカナタのままで居られるのよ、早めに私が出て行かないと世界が無くなっちゃうわね……」
私の見る夢、カナタと言う存在が居られる場所。私はカナタを守りたい、止まった時から救い出してくれた人を……
「違う出会い方をしていれば、仲良くカナタを奪い合う仲になれたかも知れないわね?」
「遠くない未来に、あちらの……六番目の世界にも上がって行くから。それまでカナタの体を預けるだけなら良いよ! まぁ響が望むなら止む無しだけどね~」
「響との幸せな生活を……子供を見せ付けてあげるわよ!」
どちらとも無く笑う、この人なら本当にカナタを愛してくれる。私は自分の中にカナタが残した思いを受け継ごう、響を幸せにして見せるわ!
「二人とも入れ替えっ子? 変なの~。一応私の妹でもあるんだから幸せにする事!」
「少し早いけど……あなたの事はお姉さんって呼んであげても良いわよ?」
「カナタがそこに居ると思うと我慢できなくなるから止めてね? あなたの体が成長するまでは待つつもりだしね」
「ごめんなさいね……これでも十三歳なのだけれど? あぁ、あちらの世界の事を言っているのかしら?」
胸は諦めて頂戴……多分遺伝していないのよ、見た事も無いお父様の血が濃いのかしら?
「そこはほら、育てる楽しみが有るから良いんじゃない?」
「少しはカナタの事も考えてあげて頂戴ね……」
そういえば子供はどうするのかしら?その、アレが生える魔法でもあるの……?
「いつかカナタに純潔を捧げる為にと、攻める方専門だからね! 見たい?」
「結構よ! それカナタに言うんじゃないわよ? 一万二千一年守ってきたとか言ったら引いちゃうわよ?」
話のスケールが違い過ぎて、カナタが心配だわ……
「忠告ありがたく受け取っておくよ……時間が少しかかるけど四日もあれば送る準備は整うよ? 結婚式くらい出てくれるんでしょ?」
「それ本気だったのね……」
「ちゃんと指輪の効果を発動させないと行けないし、私は良いお嫁さんだから! カナタを縛ったりしたくないの、結婚式が終わったらあの町に送り届けてあげる事にしたんだよ?」
「そろそろカナタと交代するわね? あなたにも見えなかった取って置きのSESがあるから、多分死にはしないけど……ちゃんと私とカナタを守ってね♪」
「何の冗談を? 私の目で見破れない物はこの世界には存在しないはず?」
「おやすみなさい」
前途多難なカナタの人生に少しでも幸多く有らん事を……神に祈るのは可笑しいわね、愛さん?あなたに祈っておくわ。




