表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第1章 チェンジリング
32/224

第29話 こんなはずじゃなかった……!冒険者の群れが現れた?

 帰らずの森へは一応の街道と呼べるものしか存在せず、馬車五台が横並びに走るには明らかに無理があり、何とかある道をボク達の乗る馬車が走っていた。他の馬車は草がぼうぼうと生える平地を走っている、さぞ揺れるだろうと思う。

 天気も良く見晴らしの良い平野が続くため魔物が生えるとすぐに分かる、一流の冒険者は生えた魔物を相手にせず新人に任せるようだった。


 時々馬車に持ち込まれるラビッツを解体しながら青い顔のボクは後悔していた。馬車がこんなにも揺れるなんて想像もしていませんでした。

 意気揚々と馬車に乗り込んで、走り始めて一〇分もしたところでお尻が割れそうになり、我慢して食べたサンドイッチも喉まで出かけている……これなんて拷問?


「死にそう……皆何で平気なの?」

「おねえちゃんは何で……死にそうなの?」


 このように聞き返される始末だ。この世界の住人は三半規管が強いのだろうか?あ、ヤバイ喋ったら出そうになった。

 ここで出すと大変な事になりそうなので我慢しないと、何故かボクが戻しそうになるとルナが近寄ってくる、心配してくれてるのかと思ったらブチューっと口を吸われて唖然となった。

 狼の親は胃に入れた食べ物を戻して子供に与えるとか聞いた事あるけどまさかね……ルナがこんな調子だから一緒に乗っているクリスティナさんは一々突っかかってきてしんどい、揺れて眠れないけどせめて静かに黙っていたい。


「さっきのキスと良い、目の前でいちゃいちゃするの止めてくれない?」

「……」

「……お嬢様カナタ様はご気分が優れないようなので、私が膝枕をして差し上げようと思います」

「ちょっと! 何いきなり言い出すわけ?」


 本当に何言い出すのか、でもガーベラさんははっきり言ってストライクど真ん中だから是非そうしてもらいたい。


「こ、ここはお姉さんである私が……カナタに膝枕してあげるのが妥当でなくって?」


 クリスティナさんとガーベラさんは同い年の今年で一八歳だそうで、お姉さんなのである……クリスティナさんも口さえ開かなければ上流階級のお嬢様で通る容姿を持っており、口さえ開かなければボクも喜んで膝枕されただろう、そう全て口が悪いのだ。


「遠慮しときます」

「遠慮は体によくないわ、ちょっとそっちへ行くからね」


 クリスティナさんが接近して来る、気分が悪く動けないので逃げる事ができない。

 頭をつかまれ無理やり膝枕の体勢へ、この人を育てた親の顔が見てみたい……


「何か良い匂いがします」

「ばっかじゃないの! たまたま香水を付けてただけよ、別にカナタの為に用意したとかじゃないんだからね!」

「……お嬢様今朝は一時間も早く自分で起きてこられましたが、いつもと違う香水ですか?」

「わ、わ、わ、私が早く起きるのに問題なんて無いでしょうが!」


 真っ赤な顔でどもるクリスティナさんは可愛い、それにこの匂いを嗅いでいると気分が落ち着いてくる、酔いがマシになってきた。依然揺れは激しいけど不思議と気にならなくなってくる。


「毎日ご自身で起きてくれるのなら問題は有りません」

「何を言い出すのよー! ちゃんと起きてるじゃない、ガーベラも人が悪いわねー」


 キョドリ出すクリスティナさんも可愛い、アレ?これって吊り橋効果的なやつなのかな?

 意識がはっきりしてきたので、周囲を確認し現状を把握する。

 ルナは相変わらずレインディアの背で寝ている、メアリーちゃんはさっきから外の景色に夢中だ。

 ガーベラさんは微笑ましいものを見る目でこっちを見ている、クリスティナさんはボクの頭を撫でながら何故かご満悦の様子だ。


「熱いね~お二人さん、解体頼むは」

「オルランドさんいつから見てたんですか?」


 オルランドさんが新たに持ってきたのは赤いトカゲだった。


『レッドドラゴン(幼生)』


「え! レッドドラゴンの幼生?」

「珍しい魔物じゃない! 普通精霊の気配が強い火山にでも行かないと滅多に見れないわ!」


 クリスティナさんが興奮気味でレッドドラゴンの幼生を指で突いている、名残惜しいけど体を起こし解体する。


「【解体E】紅玉の瞳二個、火竜の小皮一個、イデアロジック(耐熱)、ドラゴン肉10kgと、肉は少し少ないですね」

「やっぱり出るんだよな……騙されたぜ」

「もう決まった事ですから♪」

「今イデアロジック何個目だよ! そんなに運が高いのか別のレアスキルなのか……本当に騙されたぜ」


 もうすぐ目的の帰らずの森、現在までに倒した敵は約ラビッツ四〇匹にオーク(小)一〇匹、コボルト一五匹、レッドドラゴン(幼生)一匹である、ボクが手に入れたイデアロジックは(脱兎2)(絶倫)(冶金)(耐熱)もう左団扇でウハウハである。

 特に(冶金)は思わずガッツポーズしてしまうほど嬉しかった。これでそこら辺の石や土や岩から必要な金属を取り出し、目的の用途に合わせて製造する事ができる!チート財源の要になると思ったほどだ。

 現実はそう甘くは無かったけどね……そこら辺の石や土や岩には金は勿論、銀も、銅でさえほぼ含まれていなかった。

 鉱山とか隆起した崖のような場所へ行けばまだ望みは有るかもしれない、炭素を抽出してダイヤモンドを作ろうとしてもあまりのMP消費に断念せざる終えなかった。あ、鉄くらいなら製錬できそうです。


「(脱兎)はメアリーちゃんに覚えてもらって一個余分になるので、緊急依頼が終わって町に戻ったら売って……皆に奢りますよ!」

「買うわ! 金貨2枚で良いかしら?」


 まさかの超反応でクリスティナさんが金貨を2枚渡してくる、ギルドの買取で金貨1枚って言ってたのに倍で買ってくれるとか太っ腹だね。


「まいど~ありがとうございます!」

「オレも金があったら買うんだけどよ……」

「ラビッツとかそこら辺に居るじゃないですか……自分で狩れば良い様な?」

「一年に一個出るかどうかだぞ? あの西門の外見たんだろ、あれで一年だぞ?」


 まさかの回答に冷や汗が出る、この事がばれたらマリアさんの後ろ盾があっても攫いに来る人が出そうな気がする、迂闊に見せるんじゃなかった。


「あの……この事はナイショでお願いしますね」

「こんなアホみたいな事言えるかよ! なんでオレが直接獲物を持って来てると思ってるんだ、あまり迂闊に人前で使うなよ。あとそっちの二人も漏らすなよ? いくら王族の姫様だからってギルマスに命を狙われたら終わりだぜ、あの人はカナタがお気に入りの様だからな、まるで自分の子供のように扱っている節がある」

「そんな事決まってるじゃない、みすみすこんな優良物件を姉に渡すわけ無いわよ……」


 クリスティナさんの話後半が聞こえなかったみすみす優良?それにしても王族の姫様ってクリスティナさんの事だよね、膝枕とかして貰ったけど大丈夫なのか。


「クリスティナさんの名前ってクリスティナ=ヘルヴォル様だったりします?」

「確かに私の上にはヘルヴォルの家名を持つ姉が二人と兄が二人居るわ」


 言いながらコイコイして来るクリスティナさん、無論断れるはずも無く隣に座る。


「私はただの冒険者クリスティナよ? 今はそれで良いじゃない」


 そう言うと冒険者リングを重ね合わせ団結する。今気が付いたけど団結した相手のPTは【魔力の源泉】の効果を受けるのだろうか……

 また無理やり膝枕をされる事になり、ついでに団結の効果を聞いてみる事にする。


「クリスティナさん団結って実際のところどんなメリットがあるんですか?」

「PTと同じよ? ステータスに追加されるから確認してみると良いわ」


 そうか……PTと同じか、不味いマリアさんはわかってたのかな、見方に引き込めって事かな?お願いしてみよう。


「クリスティナさんお願いが有るんですけど」

「何かしら? もうすぐ帰らずの森だから早めにお願いしますわ」


 オルランドさんが居ない事を確認してコソッと伝える事にする。


「自身のMP見てください、ボクのUNS【魔力の源泉】で回復速度が上がってると思います」

「はぁ、えっ!?」

「二分で1MP回復するはずです、これはボクの取って置きのスキルなのでナイショにしといてくださいね」

「あなた……そんな事会って間もない私に言っちゃって良いわけ? お父様にあなたを売るかもしれないわよ?」

「クリスティナさんの目を見て決めました!」


 キリッ!っと決まったはず、マリアンさんの真似をしてみました。

 クリスティナさんは屈託の無い笑顔で嬉しそうにしている。


「私の事はクリスって呼びなさい……この世で私をクリスって呼べるのはお父様とあなただけよ! 光栄に思いなさい」

「ありがとう?ございます」


 その時、クリスとナイショ話している姿を、普段見せない険しい表情でガーベラさんが見ていたのを気が付かなかった。




 ――∵――∴――∵――∴――∵―― 




 森に近づくにつれ魔物の数が減っていく、スマホを見て確認すると、朝七時に出発したので森まで大体四時間ってところだった。少しウトウトしていたようで時間が飛んでいる。

 レインディアの歩く速度をかりに成人男性の倍の速度だと過程して四時間、帰らずの森まで35kmくらいの距離なのかな?40kmは無いと思う結構近い気がする。


「お嬢様そろそろ帰らずの森に着くようなので、準備をお願いします」

「……既成事実さえ作ってしまえば……それも有りね……」

「お嬢様ぶつぶつ言ってないで御用意を」


 寝ぼけて聞き取れなかったけど、クリスがボクの頭を撫でながら何か呟いていた。

 いつの間にか貯まっていた獲物を解体する、おぉ!イデアロジック(解毒)欲しかったやつだ!緑色の30cmくらいある芋虫が持っていた。早速覚えておこう、メアリーちゃんにも(脱兎)を渡す、始めは遠慮していたけど命大事にだと言い聞かせ、無理やりでも使ってもらう。


 辺りが騒がしい、森の手前で止まって皆何か準備しているみたいだ。

 クリスとガーベラさんも降りて両手剣を構えている、察するにクリスさんは普段なれない両手剣を使い、少しでも慣れておきたいのかな?


「ん、ん? そう言えば森の中へ馬車でどうやって進むんですか?」

「こうやってよ! 【スライサーエッジ】」


 クリスの放ったスキルは見えない刃で木々をまとめて切り飛ばす。


 前後左右5m間隔で縦五列に並んだ冒険者達が、それぞれ自分が切れる数の木を思い思いのスキルで伐採している。

 物理的に森を狩り開く冒険者達はまるで軍隊蟻の群れのように行く手を遮る物は全て切り伏せていく!


「なんという力技……」「ワンッ……」

「お母さん達もああやって黒鉄杉を狩ってたんだよ~」


 木を切る係り、根っこを引っこ抜いて道脇にどける係り、土を生活魔法で均す係りと順番に効率良く作業は進む、このままピチピチピーチが生えている池まで進むとの事だった。



 作業を免除されているボク達は、木が倒れていく轟音を聞きながら解体した獲物の肉で昼ご飯を作る準備を開始する、人数多いしシチューと串焼きで良いかな?


 この世界では高級品な野菜と安い獲物の肉を切りながら今後の予定を組むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ