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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第1章 チェンジリング
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第28話 緊急依頼開始!

 緊急依頼当日の朝、目覚ましをセットして眠っていたので早朝五時に起きました。

 ルナが目覚ましの音にビックリして、ボクとメアリーちゃんに覆い被さり周囲を警戒するなどイレギュラーな事が起こりましたが爽快な目覚めです。目覚ましの方は音をこおろぎに変えて覚えさせる事で対応しました。




 いつもの食堂はいつもと違う活気に溢れていて、今日が緊急依頼の当日だと言う事を改めて認識させる。前日昼からずっと飲んで騒いでしていたロッズさんは今日はまだ眠っているみたいだ。

 ボク達は『朝ご飯は馬車の中で食べなさい』とマリアンさんからサンドイッチを渡されて出発の準備をしている、メアリーちゃんにも天使御用達の服をあげて全員の装備も万全だ。秘蔵の盾スヴェルはギルドに保管しているらしく、ロッズさんが眠っているので戻ってきたら貰う事になっている。

 ガーネット&グロウの店に寄って装備を受け取ったらギルドに集合だね!




 宿を出て大通りを歩く、周りは冒険者であふれている、いったい何人参加するのかな?強制依頼って事はFランク以外全員いるのかもしれない、いくら蜂が大きくて巣がそれなりのサイズだとしても……全員分の蜂蜜は無理なんじゃないかな?



 まだ六時になっていない時間だというのにガーネットさんもグロウさんも会心の笑みを浮かべ店の前で待っていた。


「遅いぞ! 完成しているから今ここで履いて行け!」

「帽子も出来ているよー! 今履いてる靴はそこら辺に置いといてくれれば良いから帽子を被って行きな!」


 目が血走って謎のテンションMAXになっている二人からフェイクラビッツの靴四足に帽子四個バックパック二個を受け取りその場で交換する。

 何この履き心地!歩く度に最高級の絨毯を裸足で踏むかの様な素敵な感触がする。帽子もふわふわしてて頭が幸せになれるし被っている事を忘れるくらい軽い、まるで兎になったかの様なふわっふわの耳が……耳!?


「どうだ? オレの会心の作は!」

「私の自信作だよ! 気に入ってくれたかい?」

「はい! 最高に心地良いです、でも何で耳が……」

「「耳が無いとラビッツじゃ無いだろ?」」


 あ、ダメだテンションが振り切って一周してるよ、お礼を言ってギルドへ向かおう。


「ありがとうございました! 大切にしますね」「ワンッ!」

「ありがとうございました~」

「良いって事よ! それに長年の夢フェイクラビッツの手袋が……ウヒッウヒッ」

「長年の夢フェイクラビッツのバック……ふふふふ」


 ヤバイ、目があっちの世界へ旅立っている、もう行こう。


「それではまた~お土産楽しみにしててくださいね!」

「おっと、言い忘れるところだったぜ、フェイクラビッツは対魔法対物理で最高級の防御力を持っているからその靴を履いていたら溶岩の上だろうと凍った湖だろうとそのまま歩けるぞ! 剣の刃の部分を蹴っても一切傷が付かないくらい丈夫だしな!」


 本当に何で蹴り倒せたのだろうか……




 ギルドへ到着し扉を開けると中は殆ど人が居ない、カウンターに居る職員は驚いた顔でこちらを見ている。


「カナタさん? 北門の外集合ですよ……」

「そんな事ロッティ一言も言ってなかったよね!?」

「気絶してましたから!」


 大失敗、まだ時間が有るとは言え、早め早めの行動が基本だよね。


「マーガレットさんこれ倉庫に入れといて!」

「分かりました。気をつけて行って来てくださいね」


 余ったフェイクラビッツの靴と帽子を一セットマーガレットさんに渡すと、三人揃って北門へ全力疾走だ!




 北門へと走る途中、まだ歩いている冒険者を見かけ少し安心する。

 北門も基本は西門と同じで老剣士と見習い冒険者のペアで見張りに立っているみたいだ。


「あれ? ガトーさん西門の番してるんじゃないんですか?」

「おはよう嬢ちゃん、門の番は毎日交代で三つの門を回るようになっているんじゃ」

「おはようございます! 【絶壁】さん、オレは今回行けませんが緊急依頼頑張ってください!」

「行って来るね~」「ワンッ」

「行ってきます~」

「おっぱいが大きくなるまで死ぬなよ!」


 ガトーさんはおっぱい紳士ですねわかりました。




 北門を出ると五〇名ほどの冒険者が思い思いの場所で待機している、門のすぐ側には五台の馬車が停まっており、日本の馬の倍はありそうな体格の生き物が馬車を引いている。

 トナカイのような角を生やした生き物の名前は……


『レインディア』


 何か強そうな名前だ!じっと目を見つめると舌をベロベロベロとこっちに振ってくる、角が怖いけど案外愛嬌が有って良いやつかもしれない。

 レインディアと遊んでいるとマリアさんに見つかり馬車の陰に連れ込まれる、助けてルナ!

 ルナは三本角のレインディアの背に乗って眠る用意をしている、こっちに気が付かなかった……


「おはようカナタさん、早速だけど報酬の話をします、緊急依頼を終えて無事に町まで戻ってきたら物資の輸送依頼は終了。報酬は半金貨1枚分とします、問題なければ貸してた分をチャラにして晴れて自由の身ですよ?」

「え、良いんですか? それって破格じゃないかな……」


 何と言っても半金貨1枚は日本円にして五〇〇万円である、マリアさんがこんなに優しい訳が無い。


「もともと払ってもらう気は無かったですし、安心してください」

「ボクはマリアさんの事を勘違いしていたのかもしれません!」

「イエイエ、私は一緒に行けませんけど、頑張ってきてくださいね」


 やっぱり良い人なのかな……騙された事もあるけどこんなにすんなり解放してくれるなら冗談だったのかな?


「あぁ、時間が無いので素早くお願いしますね? クランの名前何にします? 考え付かなかったらマリア親衛隊にするので五分で答えてください」

「ふぇっ!? 何それイジメ? 自由を手に入れる……違う、自由な楽園? ちょっと違う」

「あと四分ですよ」


 どういう事だってばよ!クランって確か皆の集まりみたいな感じで、同じ村とか同じ地方の人で組む組合みたいな感じだったはず。ロッズさんマリアンさんロズマリーさんは結婚記念にクラン『木漏れ日の庭』を作ったって言ってたし……


「あと二分です」


 何か思いつくのは……ボクが守れる者を全て守る……小さい手だけどつかんだ手は放さない、楽園!


「あと一分です」

「クラン『小さな楽園(リトルエデン)』にします!」

「おめでとうございます~手続きは全部すっ飛ばすのでクラン結成です!」


 マリアさんが自分の冒険者リングをボクの魔王の花嫁に重ねて何か唱えている。


「クランの加入や脱退は冒険者ギルドへ直接来てくださいね、今はマスター権限の行使で直接クランを結成しました」

「分かりました。ついでにルナも入れといてくれませんか? メアリーちゃんは相談してみます」


 ルナにコイコイして結成手続きと一緒に加入もしてもらう、メアリーちゃんはお母さん達のクランに居るから全員で相談してから考えないと、出来たら一緒に着いて来て欲しいけど我侭だよね……

 手続きが終わるとルナはまた三本角のレインディアの背へ戻る、もう仲良くなったのか、背で眠っても振り落とされたりしないようだ。


「この後、他の冒険者ギルドが手を出せない様に少しばらしますね、さぁ! 皆の前でカナタさんの紹介と臨時のAランクPTの紹介をしましょうか」

「ん、ばらすって何を?」


 返事をせずにボクを引っ張って即席の台へ上がるマリアさんは大声で『注目!』と叫んだ。


「緊急依頼:ビックWARビー討伐を開始します!」

「「「「「「オオッー」」」」」」


 皆一斉に掛け声を上げ空気が振動するほどの轟音となる、またレインディアの背で眠ろうとしていたルナもビックリして目を覚ます。


「今回の依頼には強力なサポーターと、王都からはるばるAランクPTが援軍に来てくれた!」

「「「「「「オオッー」」」」」」

「まず先にAランクPTから紹介する! 王都冒険者ギルド本部で疾風怒濤の快進撃を続け、今やAランクまで上り詰めたガーベラ率いるクラン『クリスティナ様護衛隊』とクリスティナ様だー!」

「「「「「「オオッー」」」」」」


 冷や汗が止まらない、クリスティナってあのお嬢様だよね、スッゴイ人気が有るみたいだ。

 後ろを振り返ると最高の笑みで『逢いたかったわ♪』と呟くクリスティナさんが居た。


「に、人気が有るんですね」

「あの話忘れんじゃないわよ? 絶対に部下にしてあげるんだから覚えてなむぐ」

「おはようございますカナタ様」

「おはようございます、ガーベラさん様付けは必要無いですよ」

「そういう訳にはいきません、マリア辺境伯様からの正式な要請でこちらの援軍に来たのですから」


 お得意の口鷲づかみで話に入ってくるガーベラさんは神かもしれない、でも様付けを止めてくれない。

 あれ、今変な事をガーベラさんが言った気がする、辺境伯?


「ん、んん!? 辺境伯って公候伯子男の上から二番目のやつ?」

「正確にはその下に準男爵と騎士爵を追加しての上から二番目です」

「……結構普通に話とかしてるんですがやばいですか?」

「ヤバイです、普通なら首が物理的に飛んでいます」


 恐る恐るマリアさんの顔を見ると……満面の笑みでこちらを見ていた。


「話を続けて良いかな?」

「よろしくお願いします!」

「続いてはサポーターの紹介だ!」

「「「「「「オオッー」」」」」」


 かなり偉い人だったみたいだ、おっかないからもう孤児院には近づかない方が良いね。

 辺境伯が個人的に経営している孤児院って何か怪しい雰囲気がする。


「ガーベラさん今日はよろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「むぐう、ん、ん!」


 相変わらず容赦の無い鷲づかみだ。ルナがこちらに気が付き台に上がってくる、メアリーちゃんは恥ずかしがりながらボクの側に走ってきた。


「続きましては、御存知の人も多いと思われる! ラーズグリーズ支店に現れた超新星! 【絶壁】の名を知らない者は居ない! 若干Eランクにしてもう異名持ちの冒険者! カナタ率いるクラン『小さな楽園(リトルエデン)』だ!」

「「「「「「オオッー?」」」」」」


 反応が微妙になった。恥ずかしい、もう帰りたい……何もしてないのにEランクに上げられてる、陰謀だ。

 ルナは欠伸してるしメアリーちゃんはボクの後ろに隠れてしまった。


「どういう事だ?」「【絶壁】ってすごいのか?」「貴族様じゃ?」「【絶壁】強いのか?」

「聞いて驚け愚民どもー!」


 マリアさんは悪乗りが過ぎる、これ以上視線に耐えられないよ!


「カナタは回復・解体・アイテムボックススキル持ちだー! 今回()()に無料で回復してくれる事になった。皆喜べよ! 合わせて、マリア=ラーズグリーズがパトロンとなる事をここに宣言する! 今後、私を通さずに勧誘・引抜・強制などなど行なう者には死の鉄槌を与えて殺る……」

「「「「「「オ、オッー、オー……」」」」」」

「私は許可を貰っているわよ? カナタ次第だとね……」


 話の前半と後半のテンションの差が激しい、本当に殺っちゃうよこの人は!

 周りの人のテンションも駄々下がりだよ……そしてイラン許可をクリスティナさんへ与えたマリアさんを睨む。


 マリアさんはボクを前に押し出すと、握りこぶしで親指を立てる。

 どんだけハードル上げる気なのかこの人は、もう滑る落ちしか見えない、この静まり返った中の挨拶とか……人生で一番の難所に遭遇したようだ。


「死なない限り治します、命大事にでガンガン行きましょう!」

「「「「「「オオッー」」」」」」


 良かった、無料ってところが効いたのか反応は上々のようだ。

 ん、誰か台へ近寄ってくる、オルランドさん?


「質問が有るんだが良いかい?」

「勿論、何でも聞いてください」

「回復は一日に何人くらい治せる? いや、一時間にで良い、それと効果の程だ」

「一時間に六〇人は軽いですね、効果はシングルスターの人なら首が取れても治せると思います」

「「「「「「オオッー」」」」」」

「【絶壁】凄いな!」「【絶壁】領主がパトロンじゃなければうちのクランに誘ってたな」「【絶壁】良いぞ!」


【絶壁】コールは簡便してください、カーナさんのHPをガリガリ削ってる気がする。


「次はギルマスにも質問だ。今回の緊急依頼はドロップ素材の全回収って事で良いんだよな? 解体スキル持ちが居るならかなり楽になると思うが分配方法を知りたい。オレは一割ギルド二割カナタ残り七割を全員で均等割が妥当だと思うんだが、どうだ?」

「ギルドとしてはそれで問題ないです」

「基本ボクの分は要らないので全員で均等割りしてもらって良いですけど……代わりに魔晶の欠片と運良く出たらイデアロジックは全部欲しいです」


 さぁ、これが通ったらウハウハの緊急依頼になるぞ!勿論ルナとメアリーちゃんの分は均等割りで貰うけどね。


「おいおい冗談だろ」

「【絶壁】はんぱねぇ」「【絶壁】本当にすげえな」「【絶壁】魔晶の欠片集めて何するんだ?」


 欲張りすぎたか……半分くらいに妥協しようかな?


「そんな少なくて良いのかよ、魔晶の欠片とか余程大物が出ない限り二束三文だぜ? イデアロジックとかここのギルド支部の冒険者全員合わせても一年で五個も出てないんだぜ? まぁ出れば一人大儲けだが本当にそれで良いのか?」

「良いですよ? ちゃんとルナとメアリーちゃんの分は均等割りで貰いますけど」

「【絶壁】無欲だな!」「【絶壁】はギャンブラーじゃねえか?」「【絶壁】!【絶壁】!」


 最後のやつちょっと後で話しをしようか……


「最後の質問だギルマス。ちょっと気になってたんだが、補給物資を積んだ馬車が見え無いんだがまさか現地調達とか言わないよな?」

「見えないだけで三台分ちゃんと用意してありますよ?」

「オレの目が悪いのかどこにも見えないんだが……あの空の馬車五台だとは言わないよな?」

「ここにあります」


 即席の台の後ろへ補給物資を積んだ馬車を三台とも出す事にする。


「「「「「「オオッー」」」」」」

「まじでか……アイテムボックスにはそんな大きい物まで入るのか!」

「質問は以上でよろしいか?」

「以上だ」


 オルランドさんが『ありがとよ嬢ちゃん』と小さい声で言って戻って行く。

 新人の冒険者達から安堵の雰囲気が感じされる、オルランドさんは彼らの為に今の質問をしたのだろう。

 これで前線に出れない新人達でも倒された魔物を回収する仕事が出来た。

 ボクのところへ持ってこれば報酬は均等で払われるのだからただの荷物運びより断然良いだろう。


「それでは三本角のレインディアを中心に五列横隊で出発だ! クラン『小さな楽園(リトルエデン)』と『クリスティナ様護衛隊』は三本角のレインディア馬車に乗ってもらう、他は各クラン必要に応じて交代で乗ってくれ。指揮はオレ、オルランドが取る!」

「「「「「「オオッー」」」」」」


 補給物資を積んだ馬車を回収して馬車に乗り込む、期待に胸を膨らませ……


「さぁ、冒険の始まりだ!」

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