第1話 夢の中?いいえ精神と時の世界です
ボクは田中彼方前から読んでも後ろから読んでも同じ名前の高校二年生さ!
いきなりだけど現実逃避したい気分だ……明日の準備をして早めに眠ろうと思っていたら、見渡す限り本棚がどこまでも続く広い場所に居た。
少し薄暗い、本を読むならスタンドが欲しいところだ。
上を見上げると満天の星空が見える……夢だと思いたい。目の前に――黒い翼の天使が舞い降りて来なければ夢で済んだかもしれない。
何を言ってるか分からないと思うけど自分でも分からない。
天使はこちらを見て微笑んでいる。
「ちょっと僕と契約して異世界? に行って欲しいんだ」
「あぁ……ネット小説読んだまま寝落ちしちゃったのか。夢にまで見るなんて相当追い詰められてるのかな……」
とりあえず天使はちょっと置いとくとして、横を向いて現状確認。
周りは見渡す限りの本棚の群れ。どの本棚も規格が統一されているようで幅2m高さ3mは有る本屋さん仕様。ちょっと欲しい、けどボクの部屋にはどう考えても入りそうに無い。
次に自分の服装チェック。アニメに触発されて買った特殊防弾ガラスの度無し眼鏡(めちゃくちゃ高かった、一年間貯めたお小遣いで足りなく響から少し借りた。でも後悔はしていない)・左手にスマホ(ワンワン電波は山の中だって届く)・右手に大損製エアコンのリモコン(灯油の臭いが嫌いなので初めて我侭を言って買ってもらった。でも何でリモコン?)以上。
うん……何も着てない、謎の光で危ういところは隠れてるので一応セーフなのかな?
いや……スマホとリモコン持って眼鏡だけとかかなりアウトだよ!
「あれ……僕の言葉通じて無い?」
天使が話しかけてくるけど置いといて考えよう。確かこんな状態は明晰夢ってやつだったと思う。夢の中で好き放題出来るやつだ。一時そっち系の本(めっちゃ高い)を読んでチャレンジしてみたけど、まったく出来なくて『諭吉・・・』とつぶやきながら枕を濡らした覚えがある。
「おかしいな~精神と時の世界なんだから、勝手に翻訳されてその人が理解できる言葉になるはずなんだけど……」
天使がちょっと気になる事を言った、そろそろ話を聞いて見ても良いかもしれない。だって精神と時の世界ってちょっと引かれる単語が出てきたし。現状確認の途中だったけど、確認する事と言ったらあとこの天使しか無いしね……
「わかった! こっちの世界の人族は多種多様な言葉を使えるって情報だったから、多数の言語が同時に聞こえて混乱してるんだね。ウンウン」
天使は勝手に納得してうなずいてるけどこっちは一般的な高校生。日本語とちょっとの英語しかわかりませんから!
「引っ張ってきた位置から推測すると日本人だよね? 日本語で良い? それとも英語? Do you speak in English?」
「日本語でお願いします」
即答し天使の方に視線を戻す。
ここで注意事項を連絡する。相手の目を真っ直ぐ見つめる事、決して視線を下げない絶対にだ!
現状確認する時になんで天使を後回しにしたかの理由が今ここに。
「とりあえず何で全裸なんですか! 服着てください」
天使(全裸で満面の笑み)を初めた瞬間思わず「あぁ……天使って♂♀有るんだ」って言葉が出そうになったよ!
何で謎の光は仕事してないんだよ……BD特典とか一人で楽しむ物だよ!
全力で落ち着いたジェントルメンを演じつつ反応を待つ事にする。
「お嫌いですか? 容姿は貴方の精神から直接好みのタイプを検索して見たんですけど」
「お嫌いじゃないです」
「ならこのままでも良いじゃありませんか。ニコッ」
「よくないデス。何勝手に検索してるんですか! そしていきなり喋り方まで変わってるんですか!」
ボクより20cmは高い背丈に腰まである長いプラチナブロンドの髪、吸い込まれる様なブルーの瞳で全ての罪を許してくれそうな満面の笑み、ふくよかなのに引っ込むところは引っ込んでる体、背中に生えた翼は夜を背負った様な漆黒色に染まっている。
要するに銀髪ロング青目ボン・キュッ・ボンの天使なお姉さんデス!はい。
「本音と建前と言うやつですね。ニコッ」
「せめて謎の光で隠してください!」
「しかたありませんね~チラッ」
「何見てるんですか」
「体は正直者ですね♪」
「アッー! 謎の光仕事しろよ! もう良いから始めに戻って話続けてよ……」
理想の女性の前で羞恥プレイとかハイレベルすぎ、涙が出てきて心が痛い。
泣きそうになりながら話を進めようとしてふと思う。理想の女性だけど翼と♂の部分は要らないんじゃ無いかな。
いくら華奢でチビだからといってもボクは男だよ。翼はちょっと引かれるものがあるけど♂は要らないよね? もしかしてそんな願望でもあったのか……
「翼と♂♀有るのは天使だから元からですよ?」
「うわぁぁぁぁん、うぇぇぇぇん、うぃっく、えっぐ、ぐすん……」
生まれて初めて全力で泣いた。赤ちゃんもびっくりな全力でだ……心を読めるとか反則でしょ。
一〇分くらい泣いていたと思う。泣き疲れたと言うより頭の中が整理できて状況を把握できた感じ?
「落ち着きましたか? ヨシヨシ」
「頭撫でないでよ。もう大丈夫だから始めの話をお願いします」
ずっとヨシヨシされてたみたいで、髪の毛がぼっさぼさになってる。
落ち着いて考えて見ると始めから頭が混乱してたみたいで、考えがぐちゃぐちゃになっている。
高校二年生で今年一七歳なのに外で遊ばずネット小説とアニメ・漫画・各種専門書(何の専門かは内緒)をひたすら読み漁り精神年齢チェックサイトでは三〇歳と判断されたボクとした事が(自慢げな顔)。心を詠まれたくらいでうろたえ過ぎだ。
明晰夢とか精神と時の世界とか謎の光とか夜を背負った様な漆黒色とか、中二病チックな事を考えてたのが詠まれてたと思うと赤面ものだけど忘れよう。
「ちょっと僕と契約して異世界? に行って欲しいんだ」
「えっ・・・そこからなの?」
まだまだ続くよ!