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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第1章 チェンジリング
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SS うちの大切なご主人様

 うちは子供の頃の記憶が無い、物心が付いた時には目は見えんかったし声もでんかった。

 村の仲間はうちの事を避けて通る、両親だけがうちを見てくれたし狩りを教えてくれた。


 お母さんの名前がネーネと言う事は村の仲間が呼んでるからわかる。

 お父さんの名前はわからん、誰もお父さんの名前を呼んでなかった。

 住んでる場所もネーネとお父さんは違っていた。

 ネーネは大きなお屋敷に住んでいていっぱい仲間が居る。

 お父さんはうちと村の外れに住んでいていつも2人や、時々ネーネが一緒に川で遊んでくれた。

 うちはそれでも幸せやった。

 ネーネは凄く良い匂いがするし、お父さんは美味しいご飯を獲って来てくれる。

 うちの幸せはそんなに長く続かんかった。


 ある日、村の近くで大きな火事があったらしい。

 冒険者の人達が攻めて来たと言うてた、お父さんは村の仲間と一緒に出て行って帰って来んかった。

 その次の日からうちの生活は変わってしまった。


 朝起きると村に誰もおらへん、匂いを辿ると皆森の奥へと進んでいってた。

 うちは1人じゃ森の奥には行かれへん、置いていかれたとわかって泣いた、声は出えへんけど生まれて初めて泣いた。


 お父さんが教えてくれた狩りと身を隠すすべがあったからしばらくは平気やった。

 森の気配が変わって寒くなってきた時からが辛かった。

 いつも食べていたラビッツは生えなくなったし、美味しいアプの実も、ソレを食べる美味しいリスも見なくなった。

 寝床にしてた大きい木の洞も敷き詰めたラビッツの毛皮も寒さを凌ぐのには足りへんかった。

 大きい木の葉っぱは食べると力が沸く気がしていっぱい貯めてたから助かったのかもしれん。


 森の気配がまた変わって暖かくなり、ラビッツが生え始めた時その人達に出合った。

 村の仲間と違う気配がして目をさまし、木の上から様子を探っていたらその人達の視線を感じた。

 言葉はわからんけど美味しい食べ物と体の怪我が治る水をくれた。

 どこかに連れて行ってくれるみたいや、手を引いてくれた。

 ご飯をあまり食べてなかったうちが疲れて休んでたら背負って歩いてくれた。

 しばらくその人達と一緒に過ごした、うちは幸せやったのかもしれん。


 ある日の朝、知らない匂いがいっぱい近寄ってきた。

 うちが皆を起こすとその人達は頭を撫でてくれた。

 その人達とはそこでお別れやった。


 知らない匂いの人は、大きい木の洞より硬くて丈夫な部屋に入れてくれた。

 ここなら安心して眠れる、ご飯はあまり美味しくなかったけど暖かい毛皮もくれたしゆっくり眠らしてくれた。

 一緒に乗っていた人達は泣いていたけど何かイヤな事でもあったんかな?


 皆で固まって眠るのは嬉しかった。

 村では皆うちを避けてたからいつも眠るのはお父さんと2人やった。


 ある日の朝、一番小さい子が熱を出し動かんようなった。

 皆心配そうにしていたけど誰も小さい子に近寄らへん。

 尻尾の中に取って置いた大きい葉っぱを噛んで口移しであげたらすぐに良くなった。

 小さい頃ネーネがやってくれた事を体が覚えていたみたいや。

 途中イヤな視線を感じたけどすぐに居なくなってほっとした。


 皆で固まって眠っていたら大きな声が聞こえた。

 いつも揺れていた硬くて丈夫な部屋から一人ずつ外に出て行くみたいや。

 うちも出ようとしたら止められた。

 一人だけになるのはいやや、もう一人で眠るのはいやや、誰かうちも連れて行って。


 良い匂いがした。

 ネーネが迎えに来てくれたと思ったけど違った。

 それはネーネの匂いよりも良い匂いで暖かくなった気配の匂い。

 その人はうちを抱きしめてくれた。

 嬉しかった。

 うちを連れて行って、ネーネは連れて行ってくれなかった。


 怖い匂いが近づいてくる、イヤな匂いじゃないけど怖い。

 抱きしめてくれた人はうちを守ってくれているみたいや、嬉しかった。

 ネーネが言っていた事を思い出した。

 ずっと一緒に居たい人にするおまじない、確か喉もとを舐めて……

 背中を撫でてくれた。

 首にしがみ付いて……

 一緒に居たいと思いながら二回噛む。

 体から何かが流れていく感じがした。


 その人は口移しで何かを飲ませてくれた。

 体に暖かい何かが流れ込んでくる、うちは嬉しくなって、もう二度と離れたくないと思った。


 顔の横をイヤな気配が通り過ぎた。

 その人が助けてくれたみたいや、怖い匂いが遠ざかる、でもうちは知ってるで、まだこっちを狙ってるって。

 イヤな気配がその人を襲おうとしてる、体が勝手に動いた。

 自分の体じゃないくらい体が軽い、さっき飲ませてくれた暖かい何かが体を動かしてくれる。

 守らないと、うちはこの人の付いていく。

 イヤな気配に向けて手を振ったら何かに当たった。

 爪がちょっと欠けたけど怖い匂いは諦めたみたいや、急に優しい匂いになった?


 うちの手を引いて歩いてくれる、ふかふかの上に座らせてくれた。

 良い匂いがしてくる、ラビッツと甘いフルーツの匂いや、がまんできへん。

 何か言ってくれた食べていいの?

 前食べたラビッツとは全然違う味や!色々な味がして美味しい、両手でいっぱい持って食べた。


 言葉を覚えて大好きだよって伝えたい、元気になって一緒に走り回りたい。


 元気になっていつかあの人達にもありがとうを言いに行きたい。

 一人ぼっちだったうちの手を引いてくれた人達に、元気になった姿を見せてありがとうって言いたい。

 この人がうちの大事な人だよって見せてあげたい、その為にも今はいっぱい食べないと。



 この人がうちの大事な人、ずっと守るから一緒にいてね、うちの大切なご主人様。

短いSSなのでもう1話後で投稿します。

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