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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第6章 スカイオブプリンセス
206/224

幕間 カジノの必勝法・前準備

「ダブルジャックですよ! 私勝ちましたー!!」

「そうね……」

「いやはや、なかなかの強運をお持ちのようですね。私め心から震えております」


 王都の南街に存在する裏カジノ・サウスルーラー。最上位の勝負が行われるポーカー台では、今まさに熱狂が渦となって場を支配していた。

 追加配当3倍のダブルジャックを引き当てたアンナが両手を上げてその場で飛び上がる中、隣の席に座ったマリアは溜息を一つ吐いてこめかみを押さえていた。

 勝負の結果だけを見ればそこそこ勝っている、しかしマリアの頭痛は止まる事を知らず、今もまたマリアを悩ませている。勝負を重ねる度に確実にお金が減っているからだ。

 他の客や他の台を受け持つディーラーの割れるような拍手喝采を受けて気を良くしたアンナは、さらに大きな手を狙いに行く。そして大きな手を張った勝負には必ず負ける。

 裏で何かイカサマを行っているのは確かなはずなのだが、マリアにはソレを見破る術が無い。


「アンナ……もっと良く考えて賭けなさい」

「えー? ちゃんと勝つ時は勝ってますよ?」

「「馬の耳に念仏……」」

「それでは次の勝負とまいりましょうか? 準備はよろしいでしょうか?」

「さぁ! また勝ちますよ!」


 調子付いたアンナと、無言で頷くマリアと妹達の了解を得ると次の勝負へカードを回収し配り直す支配人。


「「お姉さまいけそうです」」

「幸先良いわね? ジョーカーが出るなんて」

「ぬぬースペードの3ですか……難しいですね」


 アンナに配られたカードはスペードの3と伏せカードのダイヤのエース。妹達に配られたカードはジョーカーと伏せカードのハートのジャック。

 マリアのカードはダイヤの9と伏せカードの9と、勝負をするにはあまりにも中途半端なカードであった。

 対してディーラーのカードはスペードのクイーンと伏せられたカード。

 ポーカーフェイスが苦手なアンナは、いかにも残念そうな顔を作ると追加のカードを引いていく。

 結果3・5・4・7の19とエースと9の20でツーセット39。42を揃えるカードゲームで通常ならまず勝ちを想像する手札だ。

 妹達の手札はジョーカーとエースの21――ワンジャックとクイーンと7の19でツーセット40の勝てば追加配当1.5倍。マリアの手札は22を超えてしまったのでブタだった。

 対するディーラーの手札はと言うと……。


「追加のカードはもう大丈夫でしょうか?

 ほうほう、なかなか勝負の波がこちらに押し寄せて来たようです。さぁ、ショウゲームといきましょう!

 私めのカードは、なんと! ダブルジャック! プレイヤーの皆様は真剣勝負(セメント)いたしますか?」

「ぐぬぬぬぬぅ……」


 悔しそうに爪を噛んでカードを睨み付けるアンナ。

 このサウスルーラーでおこなわれるダブルジャックのホームルールでは、ディーラーがダブルジャックの場合、カードをオープンにせず互いに報酬を上乗せし合えるというルールが存在する。プレイヤーが降りればそのまま3倍支払いで終わり、真剣勝負(セメント)する場合はプレイヤーかディーラーのどちらかが降りるまで上乗せ合戦の開始だ。

 勿論、ディーラーのダブルジャックを超える手はいくつか存在する上での上乗せ合戦なので、表向きは公平となっている。が、明らかにカジノ側の搾取手段だった。

 時折、パフォーマンスでディーラーが降りる事を除けば、お互いの合意の上でショウゲームする以外では、上乗せできなくなった方が降りるしか無いので資本の差でカジノ側が有利なのは明白である。


「「私達は降ります」」

「あーっ!? 何で勝てそうなのに下りるんですか! まだ勝負時ですよ!?」

「馬鹿ね……アンナ、あんたは降りなさい。どう見ても勝てないわよ?」

「ぐぬぬぬぬぅぅ……私のお金の使い道は自分で決めます! ……でもおります」

「諦める勇気も時には必要でしょう! それではダブルジャック3倍支払いでショウダウンでございます」


 ダブルジャックが出て高額な金額の移動が確定されたので、一度ショウダウン――清算が入った。

 台の上に置かれていた金貨の詰まった袋からは次々と金貨が抜き取られていき、清算が終わる事には数枚を残すのみとなりこのままでは大負けとなるところだ。


「まだまだ。私の本領はこれからですよ!」

「これはすばらしい! それでは次の勝負へとうつらせて頂きます」


 黒バックから先ほどと同じ金貨の詰まった袋を再び取り出したアンナは、意気揚々と次の勝負を所望するのであった。


「はぁ……なんでアヤカはここに居ないのよ」


 マリアは頭痛でこめかみを押さえる振りをして、台の下で妹達にメールを書いてもらうと溜息を吐いた。メールの件名には、現在作戦は順調と書かれていた。




 ――∵――∴――∵――∴――∵―― 




「あー! また負けたー! 後ちょっとだったのに、もう少しで勝てたのに!」

「非常に残念でございました。勝利の女神はあと少しのところでこちらを振り向いたようでございます」


 ポーカー台の上に置かれた金貨袋が、また一つカジノの宝箱へと収納されていく。

 湯水の如く金貨を消費していくアンナに、声を上げる事すら止めたマリアは成り行きを見守りながら勝負の時が来るのを待っていた。


「お待たせ、調子(・・)はどう?」

「えぇ、そうね。アンナが2億(・・)ほど溶かしたところよ?」

「え? ……そんなにですか?」

「「……」」


 時折席を離れて何処かへ消えるアヤカが、戻ってくると同時にマリアの肩へと手を置いて問う。

 マリアはイクスでは無く、あちらの世界の単位でアヤカへと失ったお金の額を伝えて肩をすくめる。

 少しわざとらしく驚くアンナの足をポーカー台の下で踏みつける妹達。

 幸い金貨を数えていた支配人の目には止まる事無く、アヤカの合図を受けたマリアは妹達の背中を押して飲み物を取りに行かせた。


「ねぇ、かけ金の上限を上げて貰う事は可能? このままだと団の資金にまで手を出したアンナを、この後どうするか相談しないといけなくなるのよね」

「え゛、本気(マジ)ですか? だってこのお金は自由にして良いとメアリーから……えっ??」


 アヤカの問いを聞いた支配人は、金貨を数える手を止めて仏の如き笑みを作る。

 同時にアヤカの言葉を聞いたアンナは、顔面蒼白になり震える手で次の金貨袋を取り出していた。


「このカジノが裏カジノと呼ばれている由縁を御存知ですかな?」

「青天井。とある伝手から聞いた話なのだけれど――」


 支配人の問いにアヤカは笑みを持って答えを出す。とある伝手とはいまだにここに顔を見せないもう一人の役者の事であった。

 アヤカのスマホへと、着いた。と一言メールを入れたその人物は、あと数分でこの場に現れる事だろう。

 何も知らない支配人はアヤカの青天井と言う言葉を聞くと、右手を高く上げ周りに聞こえるように大きく指を鳴らした。


「よろしい! どこの誰から聞いたかは問いません。その合図を知っているならば、全ての者はこの裏カジノ、サウスルーラーの最上級のお客様です」


 支配人の指の音を聞いた他のディーラー達は、一般の客に丁寧なお辞儀をすると最上級のポーカー台を黒い暗幕で覆い、他の客の視線からポーカー台を隔離した。


「特殊な暗幕となっておりまして。防音防刃は勿論の事、あらゆる魔法やスキルの脅威からこの場を隔離し、この楽しい一時に邪魔が入らない様にとの当店からのサービスでございます」

「用意が良いのね……」


 初めから用意されていたかのような迅速な対応。

 支配人は改めて腰を90度に曲げると最上の礼を行い、新品のカードを取り出すとシャッフルし直した。


「レートはいかほどにいたしましょうか?」

「取りあえず、現在のワンゲーム金貨1枚から、ワンゲーム金貨十枚へ。ゲームが終了する度にレートの変更は可能かしら?」

「……可能でございます。が、必ず3ゲーム1セットとし、かけ金に変動が無くとも1セット終了毎でのショウダウンとなりますが、よろしいでしょうか?」


 一瞬考える振りをした支配人は、予め用意されていたかのように流暢にルールを説明するとシャッフルしなおしたカードをポーカー台に置いた。

 プレイヤーの勝ち逃げ対策に3ゲーム1セットとした支配人だったが、その言葉を聞いたアンナの目が鋭く細められ頬の筋肉がピクリと動いた事に疑問の念を抱いた。


「さぁ! 栄光の勝利が私を待ってますよ!」

「ねぇ――ずっとこんな感じなの?」


 テンションが振り切ったアンナの叫びを耳元で聞いたアヤカは、震えた鼓膜を守るように片手で耳を押さえてマリアを見る。もう何も言わずにただただ頷くマリア姉妹。

 ニコニコと笑顔を絶やさない支配人は次のゲームのカードを配ると、「失礼」と断りを入れてから水差しの水で口を濡らす。


 配られたカードはアンナダイヤの7と伏せカードのスペードの7、マリアクローバーの4と伏せカードダイヤの2、妹達と入れ替わったアヤカハートの8と伏せカードのスペードの8。

 支配人のカードはダイヤのエースと伏せカードのハートのエース。


「取りあえず一枚ずつ追加でドロー!」

「こちらも同じね」

「また微妙なところね……でも引くわよ! 追加で二枚ずつドロー」

「ほうほう? 一枚ずつ引かれないので?」

「ちまちまするのは趣味じゃないのよね」


 アンナの追加カードは伏せカードのハートの7とダイヤの7、マリア伏せカードのダイヤのジャックとダイヤの2被り、アヤカ伏せカードのハートの3・4とクローバーのジャックとクイーン。アヤカの伏せカードがエースでない限りブタが決定した。


「追加のカードはございますか?」

「追加で! 一枚ずつドロー!!」

「ん~アンナの調子が良さそうだし降りるわ」

「ん……降りるわ」

「それでは配らせていただきます――ほぅ」

「げっ」


 支配人の追加カードは伏せカードのダイヤ10とハートのジャック、ダブルジャックで追加配当3倍の勝利手だ。まだ伏せカードがオープンされていないのに驚愕の声を上げたアヤカを支配人は鋭い目で盗み見る。

 すかさずフォローに入ったマリア妹達の手がアヤカのお尻を撫で回す。


「どうかなさいましたか?」

「あ、貴女の妹達はそっちの趣味もあるの!? 私はカナタ一筋だから遠慮しとくわよ」

「「皆でするのも良いと思うの」」

「ほっほほ、若い事と言うのはすばらしいですな」


 アヤカから離れた妹達はマリアの膝に座ってマリアの胸に顔を埋める。鼻の下を伸ばした支配人が視線をカードへと戻すと、射殺さんばかりの眼光でアヤカを睨み付けるマリア。

 フォローへの感謝と複雑な姉妹環境を知ったアヤカはショートメールで「ありがと、ゴメン」とメッセージを送るのだった。


「ん!? き、来ましたよ!!」

「ほぅ? それではショウゲームといきましょうか」


 大声を上げて伏せカードを上から叩いたアンナは、興奮して思わず力の篭った拳をゆっくりと下げて椅子に座りなおした。

 アンナに配られた追加カードはクローバーの7が2枚。ダイヤ7が2枚とスペード7とハート7とクローバー7が2枚――役名シックスセブン。ディーラーのダブルジャックに勝つ事ができる数少ない手の一つだった。


「これはこれは、一度ある事は二度あるともうしましょうか、勝負の波はこちらにあるようです。私めのカードは、なんと再び! ダブルジャック! プレイヤーの皆様は真剣勝負(セメント)いたしますか?」

「勿論ですよ!!」


 アンナが元気良く返事をしたその時、暗幕の一部が外から開かれて新たなゲストがこの場に現れた。

 アヤカはここまで道化を演じて時間を引き延ばしてくれたアンナに感謝しつつ、助っ人の為に場所を空けた。

昨日投稿できなくて申し訳有りません。

社員旅行で山の中に居た為PCに触れることができませんでした。


今後は予約投稿を試してみたいと思います。


少し後で今週分の幕間の続きを追加で投稿します!

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