幕間 隣の芝生を見る者達
「行くぞお前達!」
「「「「「「オオッー」」」」」」
「ギギィィィッ!」
ダンジョン『玉蟻の巣』上層最深部の大部屋では白熱した戦いが繰り広がられていた。アルフ率いるユノ&ユピテルPTが最前線で壁になり、体長10M以上はあろうかという巨大な黒蟻――皇帝蟻の猛攻を凌いでいた。
ゴツゴツとした白い金属質な壁には無数の穴が開いており、一定の間隔で戦いに水をさすように蟻達が這い出して来ている。
巨大な顎による挟み込みをユノとユピテルが掲げた盾が防ぎ、一瞬の隙が出来た瞬間にアルフはカナタ槍で前足の一本を切り落とす事に成功する。
「ギギギッ」
「よっし! 後五本だ。皆ソルジャーアントは任せるからな! 怪我したら下がって治療して貰えよ!」
「「「「「「オオッー」」」」」」
大部屋の壁に開いた穴からは、皇帝蟻の悲鳴に釣られて体長1M以上はあろうかという大きな蟻――兵隊蟻が顔を出す。出てきた兵隊蟻はスタン率いるアルフの子分PTが囲んでタコ殴りにしていた。
大部屋の入り口付近でそれらの戦いを眺めるフェルティ達四人と大勢の新人達。
「あっ、そっちにも蜜蟻が湧きました!」
「まだ倒すなよ! そーっと蜜採取してからな!」
普段なら時間が過ぎれば蜜を補給してくる蜜蟻を殺すような事はしない。ダンジョン『玉蟻の巣』での暗黙のルールを破ってまで狩る理由は、この広場に皇帝蟻が現れたからだ。
皇帝蟻の放つ匂いに釣られて、あちらこちらの穴から蜜蟻や兵隊蟻、時には盾蟻や将軍蟻まで這い出てくるようになってしまっていた。
普段ならこの大部屋は、新人から熟練の冒険者まで和気あいあいと玉蟻の蜜を採取する憩いの場となっているはずだった。
「私達何しに来たんですっけ?」
「玉蟻の蜜を集めに来た。はずだった……」
フェルティは隣に居るメリルに問いかけると、アルフに任された入り口付近に蟻が寄ってこないように警戒する。隣でカナタ杖を片手に兵隊蟻の胸部甲殻を素手で引き剥がしにかかっているメリルは、つまらなさそうに答えると作業の手を止めた。
「レオーネとアズリーはずるい。私が本来そっちのポジション」
「アルフ達がいざと言う時に精霊魔法で援護出来る様にと、メリルは前に出ていてくださいね?」
「メリルが料理をできるなら、変わっても良いですよ?」
「私は食べる方専門。解体スキル使っちゃダメ?」
怪我人の手当てをするレオーネと皆の分の昼食を用意するアズリー。メリルが不満気に胸部甲殻を剥いでいるのは、新人達の装備の為だった。
剥がされた兵隊蟻の胸部甲殻は、汚れを落とすだけで即席の盾になる。街に持って帰り防具屋で加工して貰えば、立派な胸部鎧に仕立てる事も出来る良素材だ。
「いつも解体に頼っていては腕が鈍ると思っての判断です。私を置いていこうとするメ~リルちゃんには丁度良いお仕置きですね?」
「レオーネ……建前と本音を同時に言ってる」
冒険者ギルドで置いていかれそうになったレオーネは根に持っていたようで、メリルは解体スキルの使用を禁止されていた。自棄になったメリルはカナタ槍を腰の黒バックに収納すると、両手を使い二匹同時に胸部甲殻を引っぺがしにかかった。
「なぁ……フェルティ先輩はアルフ兄の方が数段実戦経験も実力も上って言ってたよな?」
「あぁ……アルフ兄も実戦経験では負けてないって言ってたぜ?」
交替で休憩に入ったスタンのPTメンバーは、素手で兵隊蟻の甲殻を剥がす魔法士を目の当たりにして己の常識を疑う。
「メリル、一応武器は持っていた方が良いですよ? おっと」
入り口付近で蜜を採取していた女の子に這い寄って来る兵隊蟻が一匹。
フェルティはカナタ槍を左手に持ち、向ってくる兵隊蟻の顎を右手で掴み取る。
己の顔より大きな兵隊蟻の顔を片手で首から捻り切ると、メリルの足元へと胴体を放り投げるフェルティ。
メリルは眉を潜め苦虫を噛み締めた様な顔で兵隊蟻の死骸を見つめると、先ほどと同じように胸部甲殻を剥がしにかかるのだった。
「あの……本当に足の爪は取らないんですか? 人数分貰っておいて言うのもなんですが……」
「重いし、人数分確保したので要らないです」
フェルティは玉蟻の蜜を皮袋に移す作業をしている女の子の問いに答えると、手に持った兵隊蟻の顔から顎を外して黒バックに収納する。
通常の兵隊蟻の前足二本には10cmほどの鋭い爪が生えている。数が取れるので、王都では安価なナイフの原料として一般的な素材となっている爪だったが、玉蟻の蜜と比べると値段もかさばり具合も段違いだった。黒バックを持っているリトルエデンのメンバーならまだしも、布製の背嚢を背負った新人達では爪を持って帰るくらいならその分、玉蟻の蜜を持った方が儲けが出る。
そもそもフェルティ達に臨時で依頼に同行している新人達の装備に気を使う必要は本来無い。カナタのお人好しが移ったのか、それとも本来の気質なのかは今はもう分からない。
「フェルティ! これの爪は取っておいてくれよ!」
「はいはい、道中の掃除分くらいは働きますよ?」
皇帝蟻と戦いながら切り落とした足を投げて寄越すアルフ。フェルティは飛んできた皇帝蟻の爪付き足を左手に持った槍で突き刺すと、爪を素手で剥がして黒バックに収納する。
「姉さん達、まじパないぜ……」
「スタン、余所見すんなよ! ジェネラルアントが出たぜ! 全員少し下がれ!」
フェルティが素手で爪を剥ぐのを見たスタンは、顔を引きつらせて苦笑いしていた。近くの穴から顔を出した兜を被った少し大きめの将軍蟻に気が付いていなかった為、すぐにアルフが大声で叫ぶ。
「メリル出番だぜ!」
「分かってる。もう用意万全」
甲殻剥がしはもう嫌だとばかりに飛び出したメリルは、カナタ杖を一回転させると精霊魔法の準備を終える。
「小さき氷の精霊よ! 我が杖に宿り、我が前に立ち塞がりし全てのモノに静寂を与えよ!」
「氷の杖槍? 何でわざわざ近寄って攻撃するんだ?」
メリルの掲げたカナタ杖の杖頭には10cmほどの透き通った氷柱が形成されている。何を思ったのかそのまま将軍蟻へと特攻するメリル。
アルフは心配しながらも皇帝蟻の攻撃を盾で受け、次の攻撃をする隙を窺う。
魔法士のメリルが戦場となっている大部屋を横切り、将軍蟻の側へと近寄るのを止める者は誰も居ない。
将軍蟻が大きな顎を広げてメリルへと食いかかろうとしたその時。
「あっ。足が滑った~」
「ギギッ!?」
誰がどう見てもわざとだと分かるほど綺麗にこけたメリル。将軍蟻は何が起こったのか考えて一瞬動きを止める。
「お前はもう、凍っている」
「ギッ?」
立ち上がって振り返る事もせずに戻ってくるメリルに、攻撃を加えようとした将軍蟻は動けない事に気が付き首を傾げた。
メリルがこけた瞬間、手にもつ氷杖槍が地面へと突き刺さり、周囲の地面ごと将軍蟻の足を凍りつかせていたのを気付いた者はレオーネくらいだろう。
「そのジェネラルアントは、もう動けませんよ~」
「おっし、このスタンロード様がその首貰った! ぐへっ」
「ギギィィィ!」
レオーネの言葉を聞いたスタンは意気揚々と将軍蟻に飛び掛り、大きな顎で跳ね飛ばされる。
皇帝蟻の足をまた切り落としたアルフは、横目でスタンの飛んでいく先を確認し、PTのメンバーがすでに回収に向っている事を知り胸を撫で下ろす。
「馬鹿かっ! 相手は動けなくても数段格上の相手だ! 油断せずに行け!
タンカーは盾を構えて前へ、アタッカーはタンカーが顎を封じたら左右から同時に攻めろ! ディフェンダーはタンカーのサポートをしながらアタッカーを敵から守れよ! サポーターは足元に散らばった死骸を隙を見て後ろに回せ!」
「すびばせん」
アルフの怒気を含んだ大声が大部屋に響き渡り、壁に腕で守った顔から激突したスタンは、鼻血を垂らしながら仲間に回収されていく。
「あぁ――男前になりましたね……」
「痛っ、そこ触ると痛いって……あれ?」
地面に散らばる蟻達の残骸の上を滑るようにして歩いて来たフェルティは、スタンの顔を手の平でペシリと叩くと部屋の入り口に戻っていく。顔を叩かれたスタンは痛みが無くなった事に驚き顔を手でペシペシと叩いていた。
「三本目いったぜ! そろそろカイザーアントが怒るぜ。全員気を引き締めなおせよ!」
「スープできました~♪ 交替で昼食を取りに来て下さいね~」
「ん……ありがと、アズリー」
アルフの声を荒げた号令は、アズリーの昼食の用意が終わった事を告げる言葉と被ってしまう。微妙な顔で頬をかくアルフ。
「ギギギィィッ!」
「色が赤くなってきた? 今回は火属性か――外れだな、毒じゃないだけマシか……。メリルは怪我した振りをせずに氷属性の結界を頼むぜ!」
「了解。これは擦り剥いた傷、怪我の振りじゃない」
怪我人は休憩と、昼食を取りに行こうとしていたメリルにアルフの声がかかる。
皇帝蟻は一定以上のダメージを受けると、己の中に精霊を取り込み自ら属性を変える事がある。現在冒険者ギルドで確認されている皇帝蟻の属性は火・水・風・土・毒の五つ。
過去に一度だけ変化した毒属性の皇帝蟻は、その場に居合わせた冒険者ジークフリードによって倒されていたが、ジークフリードは討伐後『割りに合わねえ』と満身創痍の体を地面に横たえて言ったとの報告が冒険者ギルドに上がっていた。
皇帝蟻の巨体が真赤に染まり、口から息を吐くように炎を溢し始める。凶暴な顔つきがさらに凶悪になり、つり上がった赤黒い目でアルフを睨み、残った足で地面を踏みしめた。
「あのう……何で氷の結界なんでしょうか?」
「ん? あっ、手を怪我したんですね」
フェルティの元へ走り寄ってきた者が一人。兵隊蟻の死骸を回収していたサポーターの男の子だ。メリルに視線を向けて氷の結界を指指し問う。
フェルティはその男の子の手の平に付いた引っかき傷を治療しながら、何故そんな事を聞くのかと首を傾げた。
「水の壁と氷の壁、炎を受けるならどちらが良い? ん、違った? 水と氷、どちらが冷たいですか?」
「氷ですか? でも氷って溶けたら水になるんですよね?」
「そう、だから氷の結界なんですよ? 霧状になった水を更に氷の結界が冷やしていけば、室内の温度は急激に下がっていきます。虫は温度変化に弱い傾向があるってアヤカが言っていました!」
「はぁ……それって僕達も不味くないですか?」
数秒考えてから顔色を変えたフェルティは、レオーネに向けて助けを求める視線を送る。
大部屋入り口でアズリーと共にスープをお皿に注いでいたレオーネは、その視線を受けてニコリと笑みを作る。
「その為に熱いスープを用意して貰ったんですよ?」
「グッジョブ、さすがレオーネ♪ 私にもスープを運んで欲しい」
猫撫で声でメリルがレオーネの名前を呼ぶと、足元に転がる蟻の死骸など無かったように滑らかな足取りでメリルの側まで移動するレオーネ。
「は~い、メ~リルちゃん、あーんして?」
「美味しい。寒い時はラビッツ燻製で出汁を取ったスープに限る」
微笑ましい光景にアルフPTを覗く全員がほんわかしていた頃、皇帝蟻との戦いは佳境を迎えていた。
「オラオラオラ! ユノ、ユピテル行くぜ!」
「顎は俺に任せてユノは尻の針を頼んだ!」
「了解、アルフ決めろよ!」
ユノとユピテルは、左右に分かれて飛び出すとユピテルが皇帝蟻の眼前に盾を構え、ユノが皇帝蟻の巨体の真下を滑るようにして背後に回る。
遅れる事数秒、ユノとユピテルがほぼ同時に顎と尻針を盾で受け止める。皇帝蟻の動きが止まった瞬間を見計らって飛び上がったアルフは、皇帝蟻の頭部と胸部の間を狙い澄ましたカナタ槍の一撃で分断する。
「ギギィィィィーーーー……」
「まだだ!」
上半身と下半身に分かれて地面に伏した皇帝蟻。アルフは気を緩めずに、皇帝蟻の眉間を狙ってカナタ槍を突き入れる。大きく顎を開閉した皇帝蟻はユピテルの盾に亀裂を入れると、力尽きる様に動きを止めた。
「オッシャー!! 俺達の勝利だー!」
「「「「「「オオッー」」」」」」
大声で勝利宣言をするアルフの足元には皇帝蟻の死骸が転がっている。一通り叫び声を上げて落ち着いた面々は素早く獲物を解体すると、それぞれの荷物袋に収納して昼食に向う。
「うぅ寒いなぁ、フェルティ達は本当に戻るのか? 俺達と一緒に中層に潜っても良いんだぜ?」
「なに馬鹿な事言ってるんですか? こんな大勢連れて行けるわけないです」
アルフの誘いを簡単に断ったフェルティ。アルフは『まぁ、そうだよな~』と言って装備の点検を始める。
二人のやり取りを見ていた新人達は、居心地が悪そうに地面に座り直すとスープの残りを飲み干していた。
「それに、私達はコレが目的。あっ!」
「「「あっ?」」」
メリルは新人達が回収した玉蟻の蜜が入った皮袋を指差すと、突然大声を上げてその場に立ち上がった。怪訝な顔でメリルを見つめるアルフとユノ&ユピテル。
「私達。一滴も回収してない!」
「「「あっ」」」
昼食を終えて帰る準備をしていたフェルティとレオーネとアズリーは、蟻から剥ぎ取った素材の入った己の黒バックを見つめて立ち上がった。
「レオーネMAP見て。アズリー目星は付けてる?」
「おっけ、近くにあるのは大きな所と小さな所の二ヵ所です!」
「大は小を兼ねるです! アルフここは任せますね~」
フェルティ達はアルフに大部屋に残していく新人達を任せると、返事も聞かずに壁に開いた穴の一つへと入っていく。
「おいおい……なぁ? お前らは良いのか?」
「良いも悪いも、何しに行ったんですか?」
アルフが問いかけたのは偶然にも新人達のリーダーの女の子だった。人差し指で唇を押さえて首を傾げる女の子に、アルフは少しドキリッと心臓の鼓動が高鳴るのを感じた。
「それは良いとして、アルフ……フェルティが選んだって事は、絶対ヤバイやつだよ?」
「まぁ……多分そうだろうな、戦闘準備! スキル解禁、全力で葬って厄介事の種にはさっさと帰ってもらおうぜ!」
ユノはアルフに注意を促すと皇帝蟻の尻針で穴の空いた盾を黒バックに収納して予備の盾を取り出した。
無言で頷くユピテルも盾を交換すると武器を仕舞いもう一方の手にも盾を装備する。
アルフはカナタ槍を黒バックに収納すると何故か盾も仕舞い、徒手空拳になり大きく深呼吸を始める。
突然戦闘準備を始めたアルフ達に、スタンPTのメンバーは戸惑いを隠せないながらも荷物を固めて盾を構えた。
「何が始まるんですか?」
「多分フェルティ達が向ったのは蜜蟻が蜜を補給する貯蔵庫だ」
「もしかして直接蜜を採ってくる気なんですか!?」
「メリルが考えそうな事だぜ……」
アルフは隣で自分の体を抱き締めて一歩下がったリーダーの女の子に、手で下がるように合図を送りスキルを発動する準備を終える。
「本当はこのスキル使いたく無いんだけどな……」
「強いけど消耗が激しいしね」
「まぁ、緊急時には便利だね」
アルフの呟きに頷いて言葉を返すユノとユピテル。
三人は戦闘準備を終えて構えていると、フェルティ達が入っていった壁の穴から不穏な空気が漏れてくるのを肌で感じた。
「根こそぎいっちゃいました~♪」
遠くから地響きと共にフェルティの声が聞こえてくる。アルフ達はお互いの顔を見合わせると頷いてタイミングを合わせていく。
「フェルティが欲張り過ぎた。私は半分しか採っていない」
「メリルちゃんが半分採っちゃったら、残りは私達で回収しないと勿体無いでしょ?」
「敵に見つかったのはフェルティがハシャグから!」
全てをフェルティの責任にすべくメリルは言う。元から全部回収するつもりだったレオーネはメリルを抱えたまま全力疾走で穴から飛び出してきた。遅れる様にアズリーとフェルティも穴から姿を現し、四人が飛び出してきた穴からは地面を揺らす大きな足音が聞こえてきていた。
「アルフ。後は任せた」
「了解! ユノ、ユピテル、姿を現した瞬間に行くぜ!」
「「おう!」」
このままではヤバイと本能で悟ったのか、新人達もレオーネの後を追い大部屋入り口から飛び出して行った。
「まじか、よりにもよって……シールドアントの変異種かよ!」
穴から飛び出して来た蟻は、通常の盾蟻より体が数倍大きい変異種の蟻だった。
「「アルフ! いっけぇぇぇーーー」」
眼前に迫る盾蟻の前で盾を構えるユノとユピテルは、同時に盾を前に突き出し踏ん張ると大声でアルフの名を呼んだ。
「全力全開! 【刹那の彼方】!」
アルフが使用したユニークスキル【刹那の彼方】は、コンマ一秒から最大で三分まで好きな時間の間カナタと同じステータスになれるという壊れ性能のスキルだ。カナタ化している時間が長ければ長いほどスキル効果が終わった瞬間に来る反動が酷くなり、最大の三分カナタ化するとアルフは全身を襲う激痛で気絶もできずにのた打ち回る事になる。
ユノとユピテルが構えた盾に変異種の盾蟻がぶつかると同時にアルフの姿が二人の視界から消え、聞こえてくる無慈悲なまでの殴打音。三秒が過ぎた頃、ユノとユピテルは盾蟻の体を覆う硬質な殻が砕け散るのを目の当たりにする。
「マジ痛いな……」
「「お疲れさん」」
ユノとユピテルの目の前に現れたアルフは、膝に手を当てて息も絶え絶えに呟くと入り口からこちらを覗いていたメリルを一睨みする。
「羨ましい。カナタの名前が付いたスキル」
入り口からはフェルティ達四人が顔を並べて覗きこんでおり、メリルが言った言葉に反応して大きく頷いていた。
「――スキルも無しに同じ事できるやつらが何を言うんだよ……」
アルフの呟きは、隣にいたユノ&ユピテルにしか聞こえず、盾蟻の破片を回収した三人は一時大部屋を出て休憩所へと向うのであった。
次話から6章に入ります。
姿を見せていない面々は何をやっているのか。
そして依頼を受けずに流れに身を任せているカナタに、洋館のブラウニー達は何を思うのか……乞うご期待!




