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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第5章 カナタズブートキャンプ
158/224

幕間 ソフィアとレッティの協奏曲

あけましておめでとうございます。


拙い文ですが、書き始めて一年経ちました。

日々面白く分かりやすい物語を書ける様に精進していきたいと思います。


今年もどうぞよろしくお願いします。


間に一話はさみましてまたカナタの物語に戻ります。

他の面子はその頃何をしているのかって感じです。

 王都にある小さな楽園(リトルエデン)本拠地となった洋館。その広い庭の離れに建てられた小屋はラビイチ・ラビニ・ラビサンの三匹のラビッツの巣穴となっていた。

 入り口の小屋はそのままの姿で残され、雨風が入らない様に工夫された巣穴は、広大な地下迷宮の様に洋館の地下を掘り進められている。

 最奥に作られた三匹の寝室はエウアの儀式祭壇がある部屋の隣まで繋がっており、マーガレットが壊したギルド入り口の扉を拝借して、簡単に出入り出来る様に作られていた。

 なお、ギルドの扉を担いだラビイチがスラム街で目撃されたとの報告がギルドには上がっていたが、元々交換予定の古い扉であったため黙認されている。

 何故か扉の代わりに置かれていた木材が、トレントという魔物の木で家具や調度品に使うのに適した木材であったため、そっちの方が価値があるというヘズの判断も有ったのだろう。


「ラビラビ」

「「ラビ!」」


 寝室はプテレアの蔓で満たされており、寝転がるとその柔らかな肌触りと最高の弾力でラビッツ達を受け止めてくれていた。

 朝一、目覚めたラビイチはラビニとラビサンを起こすと三匹で巣穴から出て行く。

 洋館の入り口には、カナタが秋の特別講習会に出ている為お留守番になっていたソフィアとレッティがラビイチ達を待っていた。


「私は依頼受けてから行きます」

「はい、よろしくお願いします」


 ソフィアはどこか余所余所しい態度のレッティに首を傾げて、冒険者ギルドへと向かって行った。

 残されたレッティは溜息を一つ吐くとラビイチの背中を撫でる。


「どう接して良いか分からないんです……」

「ラビ……?」


 首を傾げるラビイチに構う事無くレッティの独り言は続く。

 ラビニとラビサンは西門に向かうついでに、キャロラインにお願いされている建物の破壊を行う。お腹に響く轟音と地面を踏み鳴らす振動が早朝のスラム街に響渡る。

 ラビイチもそちらに混ざりたかったが、背中を撫でるレッティの手があるので動けずに居た。


「あの人は年上で、もうカナタに……色々して貰えるんですよ? 初めから居るマーガレットやロッティならまだ良いんです。ぽっと出のどこの馬の骨かも知らない冒険者を……カナタは優し過ぎるんです」

「ラビ……」


 レッティがこぼす愚痴を聞きながらも、視線を倒壊していく建物へと向けるラビイチ。

 ラビイチはラビニとラビサンが自分の分も残して置いてくれるのか心配になり、どうやってレッティを引っ張っていこうかと真剣に悩み始める。


「カナタは助けるだけ助けて、後の事は皆に放りっぱなしで……いつの間にか洋館の後ろに、急造の難民キャンプが出来ている事など知らないでしょうね!」


 いつの間にか洋館の後ろ――入り口正面から見えない位置に出来上がりつつある木造平屋建ての長屋。新人冒険者や噂を聞きつけた引退冒険者が集まり、リトルエデン共同生活区となっていた。


「メアリーも人が良いから無償で小屋を作ってあげて……2LDの木造平屋が無償で貰えるとか、流石に現役冒険者は追い返しましたけど――引退した冒険者は追い返す訳にも行かないですし……」


 レッティは愚痴っていたがメアリーにはそれなりの考えが有り、無償で入居させる代わりに引退冒険者には新人達の指導を頼んであった。

 冒険者と言う職業は格差社会だ。日々の食事の為に日銭を稼ぐ底辺のソロ冒険者も居れば、培った技術・鍛えぬいた肉体を駆使し、苦楽を共にした仲間達と共にダンジョンで稼ぎ、街に戻ると豪遊し、人生を謳歌する者も居る。

 そしていつかは来る冒険者としての引退。それを決めるのは自分で、年齢による肉体の衰えや怪我、お金が手に入り他に目指すモノが出来たなど理由は様々だが、概ね言える事が一つだけあった。生きて引退出来る時点で勝ち組だという事。

 よっぽどの事が無い限り、引退後の仕事は冒険者ギルドから回して貰えるし、貢献度によってはギルドの上級職員となる事も夢では無い。

 例外がここに集まった引退冒険者達だ。若くして四肢の欠損などの大きな怪我を負い、ギルドの仕事すら受ける事が出来ずに日々ラビッツを狩る作業に戻って来てしまった者達。

 メアリーはまず冒険者ギルドを間に挟んだ契約書を書かせて逃げられないようにし、四肢の欠損などの傷はアヤカのヒールと合わせて治療スキルで全て治す事によって、無償で働く冒険者としての教官を手に入れている。

 勿論、日々ラビッツの世話と王都周辺のラビッツを狩って周っているレッティはその事を知らない。


「ラビッ!」


 何か良い事を思いついたのか、愚痴るレッティの横で黒バックを漁り始めるラビイチ。

 次々と取り出していくのはダンジョン彼方の森で取れたトレント材。器用な手付きで次々と木材を加工し、プテレアの蔓で縛り上げ、アヤカが作ったニート入りキャタピラの予備を装着すると、額にかいた汗を前足で拭うラビイチ。

 ものの一〇分もかからずキャタピラが付いた巨大なイカダが出来上がった。

 メアリーの横で作業を見ているうちに、ラビイチは物作りの才能に目覚めてしまったようだ。

 どんな悪路も走行可能としたニートキャタピラ付きイカダを眺めてニヤリと笑うラビイチ。プテレア縄で自分の胴体に結びつけてレッティをそのイカダに乗せる。


「ラビイチは凄いですね……」

「ラビッシュ!」


 まったく振動の無いイカダの上でレッティは愚痴を続ける。

 ラビイチはレッティの愚痴を聞き流しながら、急いで今日破壊分の建物の元へと走り出すのだった。

 イカダを作る途中で破壊音が止まっていた事に気が付いていなかったラビイチは、このあと破壊活動を終えて西門で待つラビニとラビサンを見て悲しそうに泣く事となる。




 ――∵――∴――∵――∴――∵―― 




 ダンジョン彼方の森は雑多な種類の木々が深い森を形成している。そこには落葉樹・常緑樹・針葉樹・広葉樹などの様々な樹木が交じり合っていて、目立つような壁も無くエリアに明確な区別は無いが、曖昧なエリアも一度足を踏み入れるとそこが何処なのかが分かる様になっていた。

春夏秋冬が同時に訪れたかのように落葉するエリアも有れば紅葉するエリアも有り、苔むす緑に覆われた常緑のエリアもあった。少し離れた場所には果実を実らせたエリアもある。

 入り口から100mも奥に移動すると高温多湿で年中雨量の多いジャングルのようなエリアも存在するが、全体を見れば概ね年中暖かく過ごし易いダンジョンと言えた。

 地面にまで苔むす肥沃の大地を見る限りでは、王都のすぐ側に在るわりに積極的に訪れる冒険者の数は少ないようだ。

 まだ踏まれていない苔や雑草をキャタピラが踏み潰し、黒塗りの道に変えながらリトルエデン一行は進む。

 彼方の森を探索中のソフィアとレッティが乗るのはラビイチ特製のイカダ。

 現在引っ張っているのはラビニで、三匹は時間交代制で引く事にしたようだ。


「この乗り物便利ですね」

「そうですね」

「「……」」


 短い応答に長い沈黙。ソフィアが話しかけレッティが答える感じでここまでずっと続いてきた応答。

 時折ラビサンが運んでくる薬草の類や、ラビイチに跳ね飛ばされて死亡した魔物の類を即座に解体し、黒バックに収納する時以外は同じ様な会話が繰り返されていた。

 ラビイチは早朝の破壊活動が出来なかった反動か、先ほどから一人先行してトレントと言う魔物の木々を薙ぎ倒している。その後ろで必死に木材となったトレントを回収しているのはラビサンだ。


「依頼に有った薬草と、フリーの依頼に出ていたトレントの必要数はもう集まりましたが……昼までは進みます?」

「はい……」

「「……」」


 依頼の写しを眺めながら、時折思い出したかのように視線をソフィアに向けるレッティ。何故か頬が赤くなっているのを本人は気付いていない。

 隣で自分に向けられる視線に気付いているソフィアは、視線の意味を考えてどうした物かと思い悩んでいた。


「触ってみます?」

「はぁっ!?」


 レッティの視線の先にあるのが胸だと勘違いしたソフィアは、無意識にカナタがガン見していた己の胸を両腕ですくい上げる様に持ち上げ、レッティの眼前に差し出す。実はソフィアはマーガレットより胸が大きかった。

 向けていた視線を勘違いされていたと分かったレッティは、赤くなっていた頬をさらに真赤に染めて両手を振り後ずさる。


「違いますから! 確かにそのサイズは触り心地良さそうだな~とか、もうカナタは色々しちゃってるのかな~とか、私もその半分くらいは欲しいな~とか色々考えますけど!」

「えっ? ずっと見てるから……てっきり」


 勘違いだったと分かると、今度はソフィアが頬を染めて両手を振り後ずさった。振る両手の動きに連動して豪快に揺れる胸を見たレッティは、ゴクリッと唾を飲み込み思わず手を伸ばしそうになってしまう。


「ついでなので触ってみたいです!」

「はい、えぇ?」


 鼻息が少し荒いレッティの剣幕に、ソフィアは思わず生返事で頷いてしまった。

 レッティは獲物を逃がさないように素早く手を伸ばすと、ソフィアの両手を取りイカダの中央に引き寄せる。


「ゆ、ゆっくりお願いしますね?」

「も、もちろんです! ゴクリッ」


 己の胸をガン見したまま答えるレッティにソフィアは少し心配になる。

 ダンジョンでソフィアを捕まえていた魔物はゴブリンとその変異種の吸血鬼。食べられる心配はしたが性的な暴行を加えられる可能性は低かった為、性的な目で己の身体を見られるのはカナタに続いてレッティで二人目だった。

 チラ見しかして居ないつもりのカナタの視線も、ソフィアからすればガン見しているのと同じ。男のチラ見は女のガン見、とは良く言ったものである。

 もしダンジョンでソフィアを捕まえたのがオークであった場合、ソフィアの精神と肉体は壊されていたであろう。


「んっ」

「これは……すごいっ!」


 遠慮するようにそっと胸をすくい上げるレッティの両手。ソフィアの口から無意識に吐息が漏れる。

 手の平を握ると指の間からこぼれ落ちそうになりながらも、その指すら飲み込もうとする胸。レッティは我を忘れてその感触を楽しむ。


「もう、だめっ、です……」

「だめじゃないです! 全然平気です!」


 ソフィアはレッティの手を解こうとするも、揉みしだかれる己の胸から来る未知の感覚に戸惑い、身体に力が入らない。これ幸いとソフィアを後ろに押し倒し、馬乗りになって揉み続けるレッティ。


「なんと言うもち肌。これは……カナタが夢中になる理由も分かりました!」

「もう、いいでしょ? アッ、あんっ」


 慣れてきたのかレッティの指の動きは次第に滑らかになり、ソフィアの胸を思うがままに蹂躙し始める。

 ソフィアは己の口から漏れ出た甘い声に驚き、身体が熱くなっていくのを自覚した。


「どうやったら、ここまで大きくなるんですか?」

「ん、んんっ」


 目つきが怪しくなって行くソフィアに気が付かないレッティは、純粋な好奇心で問うとその胸に顔を埋める。


「お母さんみたい……」

「レッティ……」


 母親を知らないレッティが、己に求めているモノを理解したソフィア。スッと覚めていく妖しい感情とは別に、温かいモノが胸に浮かび上がる。

 馬乗りになったまま胸に顔を埋めて、甘えるようにすり寄るレッティ。ソフィアはその頭を抱きかかえる様に撫でると、視線を空へと向ける。


「あっ」

「あっ?」


 空を見たまま固まったソフィアの心音が高鳴っていく。異変を感じたレッティも寝転がった体勢のままソフィアが見つめる空を見る。二人が見つめる先には――。


「御機嫌ようお嬢さん。手作りなんだが、美味しいココアでも一緒にどうかな?」


 追跡するように空を飛びながら、木のコップで温かいココアを飲んでいる紳士が居た。一目で人間じゃないと分かる緑の肌色、気配が一切無く翼も無いのに空に浮かんでいる。何故か服装が燕尾服だ。

 燕尾服とブラックスーツとタキシードの違いも分からない二人だったが、一つだけ分かる事があった。

 いつからかは分からないが、痴態をしっかり見られていたという事実。


「「キャァァァァァーーー!!」」


 二人の悲鳴が彼方の森に響き渡る。何事かと戻ってきたラビイチ。ラビサンはソフィアとレッティが乳繰り合っていた為に貯まった解体待ちの魔物を、両手に山の様に抱えて涙目になっている。

 レッティはラビニの尻尾に括り付けられている方向転換指示の為のアウラ縄を、咄嗟に思いっきり後ろへ引っ張った。


「ラビヨォォォォーーー!?」


 今度はラビニの悲鳴が彼方の森に響き渡り、急速転換したラビニが来た道を爆走して街へと戻り始める。

 空に浮かぶ紳士に気が付いていないラビイチとラビサンは、街に戻っていくラビニを見つめると首を傾げ、その後を追い始めるのだった。


「美しい……姉妹愛――母性愛か? それにしてもカナタは遅いな……新しい茶会のメニューが増えてしまうではないか」


 ダンジョンで貰った手紙が招待状だと気が付いていないカナタを待つ紳士――ゴブソンの王は、招待した手前、万全の準備で迎えないといけないと、今日も一人お菓子を準備するのであった。完成したお菓子はアイテムボックスのスキルに収められているので痛む心配は無い。無いからこそ増え続けるお菓子を大量消費する運命に立つ者は、現在冒険者ギルド地下円形闘技場で窮地に立とうとしていた。


 悠久の年月、他の魔王との会合以外を一人ダンジョンの最下層で過ごしてきたゴブソンの王は、少しコミュニティー障害を煩っていた。

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