第12話 古傷と娘の願いと親の思い
目が覚めるとそこは知らないベットの上でした。何も着ていません……隣に誰か寝ています。あっ、ロズマリーさんでした。
ベットから部屋を見渡すと本が無い本棚が一個と二人で座れば丁度なテーブルが一個、椅子が一個に木で出来ている宝箱が三個部屋の隅においてあります。
テーブルの上に天使御用達の服と例のベヒモス袋が置いてあるのが確認できた。
「んぁ、ここどこだろう」
欠伸と共に意識が覚醒してくると滝つぼに落ちたところまでは思い出せた。
助かったって言ってたしここはロズマリーさんの家? というか部屋かな。
「ロズマリーさん起きて! ここどこですか、あの後どうなったんですか?」
「むにゃむにゃ」
揺すっても口をびろ~んとしても起きない。
あの一瞬でギアをMAXに切り替えて走り回るロズマリーさんはどこに行った!
「まりあ~ん、むにゃ」
ロズマリーさんが寝ぼけて抱きついてくる、ちょっと馬鹿力で剥がせそうにない。
「起きてください! 朝ですよ~ご飯の時間ですよ~ラビッツの肉ありますよ~」
作戦を変えてみる、肉食系のロズマリーさんならこっちの方が効果があるはずだ。
「まりあ~ん、おっぱい無くなっちゃったよ~むぐむぐ」
「アッーヤメテェー!」
ロズマリーさんが胸元に顔を寄せると吸い付いてくる、マリア~ンさん助けて!
「イヤ、ダメだって! アッ待って!」
ガチャ! っと良い音と共に扉が開かれる、助かった?
「あらあら? まぁまぁ~ごゆっくり~」
ガチャ! っとまた音を立てて扉が閉じられる、違う……
「違いますからー! 助けてヘルプミー」
大声で助けを呼ぶ間もロズマリーさんは馬鹿力でくっ付いて来る。今の人も日本語がわかるみたいだ。
ガチャ! っと音を立てて少しだけ扉が開いた。
助かった? 扉が少し開いてこちらをのぞくちいさな目が見えた。
背丈から言って一〇歳くらいの女の子? もしかして……
「マリーおかーさーん、ロズマリーかーさんが男の子連れ込んでるよー」
「違うから! 助けてよロズマリーさんが寝ぼけてるだけだから!」
ロズマリーさんが起きたのはその後マリアンさんが来てからだった……
――∵――∴――∵――∴――∵――
「おはようカナタ! 朝から辛気臭い顔すんなよ」
「誰のせいですか……」
宿の食堂でロズマリーさんと向かい合って座る、スマホを見ると九時と表示されている。この時間こっちでも大体あっているみたいだ六時・九時・一二時・一五時・一八時と一日五回鐘が鳴るらしい。
ロズマリーさんの実家? はロッズ&マリアン亭という宿だった。気のせいか名前が?
「ロズマリーさんの両親がロッズさんとマリアンさんですか?」
「いいや、違うぞ?」
「マリアンさんと姉妹とかですか? ロッズさんの妹さんって線もあるか」
「何言ってんだい? ロッズがあたいの旦那でマリアンが嫁だよ? 娘がメアリーって名前だよ」
ん? どういう事かな、三角関係? メアリーが娘で産んだって言ってたしマリアンさんが嫁?
「ロズマリー、ちゃんと説明しないとカナタさんが困ってるのですわ」
さっきの扉を開けて去っていった人が来た、話の流れ的にマリアンさんかな?
真っ白な長髪に少し青みの帯びた瞳、ロシア系の妖精さんをそのまま大人にしたような整った顔立ちだ。灰色を基調としたワンピースのような服に皮製のベストを着ている、ロズマリーさんにも負けずとも劣らないプロポーションである。
ロズマリーさんが近づいて濃厚なキスを始めた! えっ、朝から何してるのというかそっちもイケル人だったの。
「あたいの嫁だ!」
ロズマリーさんがどこかに歩いていくと、真っ白に少し銀髪が混じった髪に灰色の瞳、顔面を横に走る傷後がある強面のおっちゃんを連れてくる。また濃厚なキスを始めた!
「あたいの旦那だ!」
次の獲物を見つけたロズマリーさんが入り口のカウンターからこちらを覗いていた真っ白な髪に灰色の瞳、ワンコのような耳が生えているロシア系の妖精さん、メアリーちゃんを抱えて連れて来ると、オデコにキスをしてボクの座っている膝の上に置いて行った。
「あたいの娘だ!」
全然わかりません、異世界だから一夫多妻制度が有るって事?
「おねえちゃん、私がロズマリー母さんとマリアン母さんとロッズお父さんの娘です」
「貴族語上手だね。ヨシヨシ」
撫でられるのが嬉しいみたいで尻尾がもぞもぞ動いている。
先ほど誤解を解いた時に性別はばれている、いきなりシーツを引っぺがして確認してくるとかロズマリーさんの血が濃いみたいだ。
何時の間にかロッズさんが居なくなってる、宿のカウンターに戻ったみたいだ。この人は全然喋らないし怖い顔なので近寄り難い、でも根が凄い良い人見たいでニードルラビッツの肉とブレードラビッツの肉を10kgお礼にあげたら『……使え』と言って手入れがされた硬皮の盾と、ラビッツレイピアを入れる鞘をくれた! 寡黙な人みたいだ。
「マリアンがこう言う事は詳しいから任せるよ」
「ロズマリーとメアリーはお父さんと一緒に朝ごはん作っちゃってね」
「わざわざ貴族語で話してもらってすいません……」
そう、ここに来てから全部貴族語で喋っている、話を聞いてみるとロッズさんは元冒険者でマリアンさんはなんと元男爵位を持つ貴族様だった!
冒険者のロッズさんと結婚する為に爵位を義理母の息子に譲ったらしい、その後本家が没落してロッズさんと結婚して家を出ていたマリアンさんだけが助かり、生き残ったという血生臭い話だった。
でも女性でも爵位が貰えると言う事と黒髪・黒瞳はボクが知っている貴族制と少し違うのかもしれない。
「あれっ? マリアンさんは黒髪・黒瞳じゃないですよね」
「男爵位までなら黒髪・黒瞳じゃなくても国に貢献すれば資金力次第でなれますよ? 元々は王都で商店をまとめていた曽祖父が功績を認められ爵位を賜った事から始まった家ですわ」
マリアンさん丁寧に喋るとかならず最後が『ですわ』になるけど家族と話す時は素になる、ボクが黒髪・黒瞳だからかな?
「ロズマリーは私がロッズと冒険者の仕事をしている時に助けた元1級奴隷ですわ」
「ロズマリーさんの名前ってもしかして?」
「ロッズのロズとマリアンの私がマリーと呼ばれていたので奴隷解放と共に改名してロズマリーになったんですわ」
奴隷には三種類あるという事だった。
一級奴隷は主に国に自分を売りに出して買ってもらった分だけ働く個人契約の傭兵みたいだ。国が個人へ利用料金みたいなのを取って護衛として貸し出す事もあるそうだ。金額分働くと契約終了で首輪が外れるらしい。勿論えっちい事をすると法律的にもアウトで借り受けた者が貴族であろうと王であろうと首が飛ぶ、物理的に……例外がお互い合意の下なら首輪が外れOKになるとの事だ。その場合は残った借受金額を国の奴隷ギルドへ返却しないと指名手配されるとか、世界の創世神イデア=イクス様が作った【契約魔法】を使っているらしい。
お互いの合意を確認するには濃厚な接吻をしてイデア=イクス様に確認して貰うそうだ。
さっきのロズマリーさんのキスは神に誓って愛し合ってますって感じの愛情表現と言う事だ。
二級奴隷は主に軽犯罪を犯した者や借金で首が回らなくなった者などと一級になる為の戦う力を持たない者がなるらしい。釈放金を払うか借金を返済するまで特定の主の下で働かないといけないみたいだ。イメージは社畜だけど支払う賃金なり衣食住は【契約魔法】で定められた公平な内容で法的に守られている。えっちい事はお互いの合意の下なら契約終了とみなされ首輪が外れてOKの様だ。この場合は責任を取って結婚する場合が多いらしい、というか結婚しないとその奴隷から刺される事もあるそうだ……
三級奴隷は主に重い罪を犯した犯罪者や闇で売られた者、働く能力が無い者などで物扱いされるらしい。奴隷から上がる方法は基本存在せず、何故か三級奴隷は【契約魔法】では無く【隷属魔法】というもので首輪を付けられるみたいだ。主に絶対服従で何をされても文句は言えず死ぬまで首輪が外れないらしい……
話しているマリアンさんも辛そうな表情だった。そしてボクは話の途中で気分が悪くなったので止めてもらった。
何故奴隷の話をするのかと言うと、冒険者になる時ソロだと一年以内の死亡率が五〇%を越えるらしい。
出来れば一級無理なら二級の奴隷を購入して一緒に鍛えて、奴隷から開放したら正式にPTを組むというのがオススメみたいだ。
お金が無くても三級奴隷は買わない方が良いと言われた。
三級奴隷は国が関与していない奴隷ギルドが販売しているらしく詐欺・恐喝紛いの怪しいのが多いそうだ。
後は将来大物になったら一人でも多くの奴隷を助けて欲しいと言われてしまった。
『なりたくて奴隷になった者など居ない、手を差し伸べるすべがあるならそうするべきですわ』というマリアンさんの考えを聞いた。
ノブレスオブリージュ? そんな感じの話だった。ロズマリーさんの嫁さんだけあってこの人も良い人だ。
奴隷の話が終わると、マリアンさんが隣に椅子を持ってきて両手を握ってくる?
「ロズマリーから聞いたのだけど……無論聞いたのは私とロッズだけで誰にも話す気はないですわ」
「何をですか?」
何か怪しい雰囲気がする、ロズマリーさん何話したのかな。
マリアンさんが握った両手をすりすりしてくる?
「カナタさんは神の祝福が使えると言う事をですわ」
「治療スキルですけど使えますよ? どこか治しましょうか?」
「気分を悪くしないで欲しいんだけど、うちの宿それほど儲かってないんですわ」
何と無く言いたい事はわかったけど、別に治療くらい無料でしちゃっても問題無いよね。
どこかに教会みたいなところがあって、その神の祝福とやらで荒稼ぎしてても見つからなければ何も言われないよね!
「ロズマリーさんが居なければボクは今頃、ラビッツの餌になってたか……悲惨な最期を迎えていました。ロズマリーさんの嫁さんを助ける事に対して対価を貰おうとは思いません。それに言い難いんですが治療がどれくらい回復するのかまだわかってないんです」
「なら私で試すと良いですわ!」
いきなり立ち上がったマリアンさんがロズマリーさん並の馬鹿力でボクを引っ張っていく。
「ちょっと待って、待ってちょっと! ロズマリーさん~マリアンさんを止めてくださいー!」
マリアンさんの部屋と思われる場所へ引っ張り込まれるボク、ロズマリーさんがロッズさんを連れてきてくれた。説得してくれるみたいだ良かった……人体実験とか怖くて出来ないしね。
「……やってくれ」
「ロッズが喋ったぞ! マリアン! あたい声を聞いたの半年振りくらいかもしれないよ」
援護射撃が来た!? そしてロズマリーさんは全然関係無い事言って喜んでる、ダメだ逃げ場が無い。
「ロッズはそれなりに有名な冒険者だったの、【舞盾のロッズ】と言ったら重戦士の憧れだったのですわ」
「そうですか、後ボクはステータス鑑定系のスキル持って無いので、内臓の疾患とか見えない部分の回復は難しいですよ?」
見た感じロズマリーさん並に元気だけどマリアンさんのどこに怪我が? 内臓疾患とかは治せるかわからないんだけど。
「冒険者リングから状態異常を見るので大丈夫ですわ」
今気になる言葉が出たけどさっさと治療して冒険者ギルドに行こう。
「便利な物があるんですね。で、現在なんと表示されているのですか?」
「裂傷:古傷と表示されてますわ」
「……わかっているよな?」
ロッズさんが聞いて来るけど何を……顔怖すぎ、これは治せなかったらロッズさんの盾が舞うのか!
「患部に近い場所に手を当てるのでどこですか?」
マリアンさんがボクの手を服の中に突っ込むと逃げれない様に固定してくる。
「昨日ロズマリーとロッズとも話しをしたのですわ」
「マリアンは冒険者時代に傷を負って子供を産めなくなったんだよ、お願いだよカナタ」
「メアリーが妹か弟が欲しいって言うんですわ」
ロズマリーさんは一緒の死線を越えたから多少なりボクの事を信用してくれていると思う、けれどロッズさんとマリアンさんは何で初めて合った人を信用できるのかな……
「最後に……今日初めて話した人を信じても良いんですか? 悪い人だったら――」
「――カナタさんの目を見て決心しました。可能性があるのに恐れて逃げる事は私の……私達の信念に反する事ですわ」
一連の話とメアリーちゃんの話とロズマリーさんの証言から推測するに裂傷:古傷は今触っている右足付け根から臍までを縦断しているこの傷が原因らしい、ロズマリーさんのおかげと。母親の強さを目の当たりにして全力で治す事を誓う。
「いきます……古傷なので時間がかかるかもしれませんが耐えて下さい、【治療F】!」
それから二回目の鐘の音が鳴り丁度お昼になった時マリアンさんの裂傷:古傷は治癒したのだった。
【治療F】は規定のMP消費に達しましたので【治療E】にレベルUPします。
更新
名前:彼方=田中(カーナ=ラーズグリーズ)
種族:人間 年齢:13 性別:女 属性:?
職業:? 位:? 称号:無し ギルドランク:無し
レベル:18[1+17+?]☆
HP :219/219[100+100+1+18+?]
MP :119/119[100+1+18+?]
攻撃力:1[1+?]
魔撃力:1[1+?]
耐久力:6[1+5+?]
抵抗力:?[1+4+?]
筋力 :18[1+17+?]
魔力 :18[1+17+?]
体力 :18[1+17+?]
敏捷 :18[1+17+?]
器用 :18[1+17+?]
運 :NORMAL[1+?]
カルマ:0[0]
SES
:【生存闘争】
UNS
:【魔力の源泉】【生存戦略】
EXS
:【生存本能】【第六感】
スキル
:【生存の心得F】【治療E】【解体F】
装備品
武器 :無し
盾 :硬皮の盾[耐+1]
兜 :無し
仮面 :特殊防弾ガラスの眼鏡[耐+1抵+1]【簡易鑑定】【光量調整】
服 :天使御用達の服[耐+1抵+1]【浄化S】【自己修復S】
鎧 :無し
腕 :スマホ[耐+1抵+1]【簡易アイテムボックス】【発展】
腕 :エアコンのリモコン[耐+1抵+1]【空気調和】
靴 :無し
その他:夜を背負った様な漆黒色の羽根[?+?]【????】
:全てを覆い尽くすような漆黒色の羽根[?+?]【????】




