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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第1章 チェンジリング
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第10話 ワシがシステム『ガイア』じゃ! セカンドコンタクト犬耳お姉さん

 目を開けるとそこは……薄暗い森の中でした。天使御用達の服は来たままだ。気を利かせてくれたのかな?


「開始地点ってもっと安全そうな場所を選ぶよね普通!」


 かなりびびりつつ周囲の警戒をしながら素早くフェイクラビッツ製靴を装着する(毛皮巻いただけ)。幸い細い木が疎らに生えているくらいで足元に生えている雑草っぽい何かの草も15cmにも満たない長さだ。

 鳥の声すらしない静まった森……生き物の気配がしない? これは、いきなりピンチの可能性が頭を過ぎる。

 生き物の気配がしない原因が何かによっては次の瞬間死んでてもおかしくないかもしれない。

 モンスター? が入って来れない聖なる場所かそれとも……他者を許さない強者の縄張りか、前者であって欲しい。逃げ出したい気持ちを抑えてステータスを確認する。


「ステータスオープン」




 名前:彼方=田中(カーナ=ラーズグリーズ)

 種族:人間? 年齢:17? 性別:? 属性:?

 職業:? 位:? 称号:無し ギルドランク:無し


 レベル:18[1+17+?]☆

 HP :219/219[100+100+1+18+?]

 MP :119/119[100+1+18+?]


 攻撃力:1[1+?]

 魔撃力:1[1+?]

 耐久力:5[1+4+?]

 抵抗力:?[1+4+?]

 筋力 :18[1+17+?]

 魔力 :18[1+17+?]

 体力 :18[1+17+?]

 敏捷 :18[1+17+?]

 器用 :18[1+17+?]

 運  :NORMAL[1+?]

 カルマ:0[0]


 UNS

 :【魔力の源泉】【生存戦略】

 EXS

 :【生存本能】

 スキル

 :【生存の心得F】【治療F】【解体F】


 装備品

 武器 :無し

 盾  :無し

 兜  :全てを覆い尽くすような漆黒色の羽根[?+?]【????】

 仮面 :特殊防弾ガラスの眼鏡[耐+1抵+1]【簡易鑑定】【光量調整】

 服  :天使御用達の服[耐+1抵+1]【浄化S】【自己修復S】

 鎧  :無し

 腕  :スマホ[耐+1抵+1]【簡易アイテムボックス】【発展】

 腕  :エアコンのリモコン[耐+1抵+1]【空気調和】

 靴  :無し

 その他:夜を背負った様な漆黒色の羽根[?+?]【????】




 よし、とりあえず体の持ち主の名前が分かった。カーナ=ラーズグリーズさんだ……先に謝る事にしよう。

 どうやれば会話出来るのかな……念じる? 声に出す?


「カーナ=ラーズグリーズさんいらっしゃいますか?」


 カーナ=ラーズグリーズさんいらっしゃいますか?


 反応が無い、怖がって出てこないのかな?

 怪しい人じゃないですよ~ボクの都合に巻き込んだ事と体を勝手に使わせてもらうについてのお詫びと、強制になっちゃいましたけど協力して貰える事について感謝を伝えたいのですが。


 凄くボッチな感じがする、どういう事かな手違い? とりあえず対話出来ない事には謝る事すら無理だよね。

 まず生き残って対話出来るチャンスを掴まないと駄目かな?


 ステータスよ……クエスチョンが多すぎて突っ込み様が無いんですが、もしかしてカーナさんの分が加算されて表示がバグったのかな?

 この世界の苗字の扱いが分からないけどとりあえず名前で呼んでも大丈夫だよね?

 平民には苗字が無いとかだったら名乗った時怪しまれるね! 注意しないと、とりあえずカナタで行こう。

 ボクはカナタで冒険者を目指して山奥から出てきたところって設定で行こう!


 レベルの横に白星が追加されてる、HPが100増えてるって事はこの☆何かプラス効果があるのかな。

 種族が人間? ――結構失礼な事に、他もクエスチョンだし。これ冒険者ギルドとかで開示を求められたらどう言い訳すればいいのかな……お師匠様に魔法の実験台にされたとかでいこうかな!

 何時の間にかその他に装備されてるあの天使の羽根、装備効果と付与スキルがクエスチョンだよ? そして兜に何故か羽根がある。右手で頭を触ってみると違和感がある事に気が付く。


「何でアホ毛見たいに羽根が刺さってるんだよ! 何時の間に刺されたのか覚えが無い……もしかすると【微笑の聖女】様かな? たしか気を失った時があったから照れ隠しに刺されたのかもしれない、今まで気が付かせないとか恐ろしい子」


 痛みも無くスッと抜けた羽根をスマホケースに収納する、若干色合いが違うけどあの天使の羽根を刺されたのかな? あの天使を溺愛(Sが入ってそう)している【微笑の聖女】様だから夏羽根とか冬羽根とか抜けたの持ってそう。


 さてどうしようか、暗くなる前にこの静まった森から出て町か村へ行かないと一般人のボクには野宿とか怖くて出来ないよ。

 歩き出そうとしたその時、渋い声が頭の中に響いた。


「ようこそ異世界へ! ワシは彼方(かなた)をアシストするナビゲーションシステム『ガイア』じゃ! 気軽にガイアちゃんとかお爺ちゃんとか呼んでもらって結構じゃわい!」


 とりあえず側に生えていた木に登ってしまった! 周囲を確認するも誰も居ない――幻聴?


「幻聴? 疲れているのか、よっぽどこの状況に精神をヤラレテいるのか……」

「おかしいのう、ワシ以外に喋っている声は聞こえんぞ? 疲れているのなら少し休んでいくと良いぞい」

「あんたの事だよ! 誰? どこに居るの? 姿が見えないのに声が直ぐ側……と言うか頭の中に聞こえる怖い」


 どこからとも無く聞こえるムキムキマッチョっぽいおっさんの声、辺りは鳥は愚か虫の気配すらない薄暗い森の中、この状態で平気で居られる人が居たらアプの実あげちゃうね。


「怖がらなくて良いぞい! ワシは怪しい者じゃないわい、彼方(かなた)を助ける為にどこかに居るそれっぽい偉い人が使わした使者みたいな者じゃ」

「怪しさしか無いんですが!?」


 今ボクは木の上に居る、地上10m以上ある木に一息で登れた。カーナさんはかなりのハイスペックな人みたいだ。このおっさんはもしかしたら神の知り合いかもしれない、注意しないと無理難題を押し付けられそうだ。


「あの糞と一緒にするなよ小僧……」


 空気が震えたかと思った。これは殺気? いや、そんな生易しい物じゃない……神をこれだけ嫌悪しているのなら安心かな? 敵の敵は味方って言う言葉もあるしね。

 ん? ボク今声に出してなかったよね、ガイアは心が読める?


「その通りじゃ! あの糞に復讐したいのじゃろ? 手を貸すぞい」

「一方的に親切にされるいわれがわかりません」

「ちょっとした約束じゃ……気にするでない」


 約束? 誰が誰としたのかは分からないけどボクの知り合いを知っている?

 まさか……生まれてから一度も見た事が無いボクのお父さん!?


彼方(かなた)の父親など知らんぞ? 奏と言う者の娘との約束じゃぞ? あっ言ってしもうた、忘れるんじゃ」


 急に狼狽した声になるガイア、響が日本で何か神頼み的な事してるのかも……信じて良いのかな?


「いきなり信じろと言われても無理じゃよな、とりあえず今は信じて貰わんと先に進まんぞ? 信じれなくなったらその時はワシを無視してもかまわん」


 何か信じれそうな優しいお爺ちゃんな感じがする。


「ガイアお爺ちゃんと呼んでも良いんじゃぞ?」

「一つ質問を」

「何じゃ?」

「ボクの予想が正しければガイアの声はボクにしか聞こえて無いと思うんですがそこら辺どうなの?」

「もちろんじゃ。他人には彼方(かなた)が独り言を言ってるようにしか見えんの」


 アウトー! 怪しい人一直線だよ、ヤバイ人だよ。


「システムと呼びます……それで勘弁してください」

「なんじゃ……味気ないのう」


 呼んで欲しかったみたいだ。何か役にたった後でなら呼んであげなくも無いかな? ちょっと落ち込んでるし。


「ワシ役に立つぞい!」

「それなら……町か村まで道案内お願いします」

「知らんぞい!」


 駄目だこのお爺ちゃん早く何とかしないと。スマホから何か良いメモが無いかと探して居ると、ガイアがトンでも発言をする。


「今そのスマホとやらにこの世界の詳細な地図をめーる? 添付? して置いたぞい!」


 急いで確認してみると新しいアプリが増えていた。もしかしてめっちゃ凄い人かもしれない!

 地図アプリを起動してみると拡大縮小できるかなり精密な地図が出てきた。


「ガイアお爺ちゃん本気(マジ)感謝!」

「ふぉぉぉー! わが生涯これほど嬉しかった事は無いぞいぃぃ!」


 ガイアは謎のテンションアップ状態だ。とりあえず食料もアプの実しかないし移動しようか。

 木をするすると降りるとMAP(地図アプリの名前)を確認する、町まで結構遠いけどなんとかなるかな?


「あっ、そろそろ時間じゃわい。交信出来るのは一日一回一時間だけじゃから注意して交信するんじゃぞ?」

「分かったよアプリありがと」

「それと天使を守る事は出来んが、日本に居る彼方(かなた)の縁者はワシが責任を持って守るので心配しなくて良いぞい!」

「ガイアお爺ちゃん大好き!」

「フォォォッー」


 謎の掛け声と共に交信が切れた。

 何時の間にか心に余裕が出来ている、ガイアのおかげで町まで行けそうだし。ここで食べ物とか見つけるともっと嬉しいね!

 でもこういうシステム的なのって普通は知的なクールビューティーお姉さんがしてくれるんじゃないのかな……


 遠足気分で歩き出す、平面地図のMAPを信じて……




 ――∵――∴――∵――∴――∵―― 




 歩きながら少し思った事は、どうも身長が前より低いからなのか。体の重心が変わってて歩きにくい、我侭は言えないし慣れるまでの辛抱かな?

 平面地図を確認しながら進んでいると遠くに動く影が見えた。結構遠いし暗い、もう少し近寄らないと名前わからないかな?


『ニードルラビッツ』


 さすがチートと言われた【簡易鑑定】、名前が分かるだけだけど射程はかなりあるようだ。500mは離れているよね、何でそんなに遠くの影が分かったかと言うと頭突きで木を折り倒して根をかじっている? かなり大きな音が聞こえるからだ。


 静かに背後から近寄り観察する、大きさは中型犬くらい? フェイクラビッツの親戚みたいだし蹴り一発で倒せるかな? 攻撃力がありそうな顔(額に30cmくらいの角が生えている)してるし、出来れば反撃される前に倒さないと痛い目に遭う事間違い無しだ。ばれない様に静かに歩き近寄る。


 余程お腹が空いてるのか一心不乱に根を穿っているニードルラビッツを射程に捉えた。素早く走りよって必殺のトーキックをお見舞いする!


「アウチ! めっちゃ硬い」


 思わず叫び片足で逃げる、首の真後ろから蹴ったのにニードルラビッツが前につんのめっただけだった。

 後ろを見ると突撃体勢を取ったニードルラビッツがこちらを睨んでいる!

 木を盾にして逃げる、後ろから凄まじい音と木が倒れる音が聞こえてくるが振り向く余裕が無い。

 前方の茂みの奥から水の音が聞こえる……聴覚が鋭いカーナさんに感謝! 水を収納して水鉄砲で攻撃する作戦で行く。


 茂みを抜けるとかなり広い池に出た。池の周りには特に危険そうな物はな無い。


「水収納、来るなら来い、ここがお前の墓場だ!」


 収納は声に出さなくても発動する、だけどちょっと調子乗ってました。振り向いたそこに居たのは二匹に増えたニードルラビッツだった。


「仲間を呼ぶとは卑怯な……」


 片方を水鉄砲で攻撃するともう一匹からの攻撃を回避できない、足が震える。

 ニードルラビッツはこちらが怯えているのがわかるのか、少しずつ間合いをつめながら角を素振りして攻撃する気満々だ。

 ニードルラビッツが急に鳴き始める、何か威嚇の声と言うより……


「なっ! BOSSっぽい」


 茂みから新たな固体が登場した。大型犬並みの体格に角が120cmは有る、ニードルどころかもうレイピアのような角だ。


『ブレードラビッツ』


 ブレードって剣か、三匹がそれぞれ間合いを取りながら囲むように近寄ってくる。後ずさりながらも注意をブレードラビッツへ向ける、あっ。

 水が無くなった池の土に足を捕られて尻餅を付きそうになりとっさに後ろに手を伸ばすと……柔らかい何かを掴んでしまった。


「ムニュっとしたこの幸せな感触は……」

「ぱけら!!」


 この声は!? 振り返ると背後には真っ白な長髪? 毛並み? の犬耳わがままボディーのお姉さんが全裸でこちらを……


「うえっ!」


 考え終わる前に犬耳さんに左手で抱っこされて宙を舞う、今立っていた場所にブレードラビッツが角を振り下ろしていた。


 犬耳さんは右手に持っていたクレイモアをブレードラビッツの首へ正確に叩き込む。


「ガァッ!」

「ひぃっ」


 ニードルラビッツでさえ凄く硬かったのに……気合を入れた声と共にブレードラビッツの首を抵抗無く落とす犬耳さん、生きた心地がしないが助けてくれたみたいだ。


「ひゃっ」


 大きくジャンプした犬耳さんが次の獲物の首を瞬きする間に落とした。

 一撃で二匹とも倒すとかクレイモアの攻撃力も凄そうだけど、犬耳さんの技量が凄まじい事がうかがえる。


「ぱけら?」

「助けてくれてありがとうございます……」


 それだけ伝えると歩きながら食べたアプの実を全部吐いた。血の臭いの割りに青臭い臭いと、ラビッツの首から緑の血が流れているのを直視してしまったからだ。


「ぱけら?」


 犬耳さんは倒した獲物を一箇所に集めるとボクの背中を摩りながら『ぱけら?』と聞いてくる。

 ボクの知ってる言葉の中にぱけら? と言う物は無い、薄々感じていたが……異世界語とかそんな感じだと思う。

 元池の中から連れ出され(お姫様抱っこされている)獲物の隣に置かれる!?

 この人何で吐いてるか分かってないよ! それともボクも獲物扱い……


 犬耳さんが元池から何か植物を採って来ると、右手を目の前に掲げて見せてくれた。左手では抱えるように大量に持っている。


『ピチピチピーチ』


 ん、どういう事なのかな食べろって事? でもいきなり『はい、あーん』はレベルが高いんじゃないだろうか?

 躊躇していると口に突っ込まれた。程よい甘さとピーチっぽい食感にスーッと気分が良くなってくるハッカみたいな風味、これ絶対売れる!

 抱える程採る理由が分かった。


 気分が落ち着いて一つやり残していた事に気がつく。池の水を戻して無いから魚が死にかけて――無かったけどこのままじゃ時間の問題かもしれないので、池に向かってスマホを向け水を出す。


「すげーなアンタ。それは魔法かい?」

「日本語喋れるんじゃん!」


 思わず突っ込んでしまった。でもさっきまでぱけらしか言ってなかったけどどうしてかな?


「日本語ってなんだい? あたいはロズマリー冒険者だから仕事の関係で貴族語を喋れるのさ」

「貴族語? ボクはカナタです、危ないところを助けていただいてありがとうございました」


 日本語が貴族語? この世界の貴族は日本語を喋るのか……昔日本から転送されてきた人達が居たとかそんな感じで権力者になった日本人が言葉を伝えたのかな?


「そんな布っきれ一枚で武器も装備も持たずに帰らずの森を散策とは、貴族様は何考えてるかわからないねぇ。とりあえず目を見て話な、恩着せがましくする気は無いが失礼じゃないかい? 獣人とは目も合わせたくないのかい?」


 勘違いされてる、不味い事になりそうだから目を見て伝える。


「服を着てください! 色々見えてて天国(ぱらだいす)じゃなくて……お話しが出来ません!」


 今顔が真っ赤になっている自信がある。さっきから左手で抱き上げられたりお姫様抱っこされたりしたしね!


「へぇ……」


 急にニヤニヤしだす犬耳さんじゃなかった、ロズマリーさん。


「あたい結構良い体しているだろ。触ってみるかい?」


 これ以上は鼻血を噴きそうだったので回れ後ろしてラビッツと見詰め合う、背後から笑いながら装備をつける音と服と皮鎧? のすれる音が聞こえる。

 ここは獲物の解体でも手伝って恩返しをしよう、大き目の葉っぱを数枚ちぎって来てラビッツの下に引いて解体を始める事にする。


「【解体F】」


 今気が付いた事だけど両手に獲物を持って解体を使うと二匹同時に解体出来る! ダブルスキルと名付けよう。三匹の獲物を解体し終えて解体結果を確認する。


魔晶の欠片1・イデアロジック(スピアスタブ)2・ニードルラビッツの肉2・ブレードラビッツの肉1・ラビッツの毛皮3・ラビッツレイピア1・ラビッツブレード1。


 レイピアとブレードが出た! あとレアっぽいイデアロジック?が二個に肉が三個に毛皮は角関係無く同じラビッツの毛皮だ。ちょっとレイピアが欲しい……いや、何とか交渉して町まで借りるだけでも良い。丸腰じゃラビッツに殺されてしまうかもしれない。


「いま……何したんだい!?」

「えっ、怒ってます? 助けてくれたお礼にせめて解体の手伝いをと思ったんですが……ごめんなさい」


 あれ? 失敗したのかな、もしかしたら解体したら消える臓物とか食べれるやつがあったのか、失敗した。


「いやいやいや、カナタあんた凄いよ! それ解体スキルじゃないかい? 解体スキル持ちとか王都の冒険者ギルドでも二~三人居れば良いほどのレアだよ! 冒険者になる気があるならうちのクランに来ないかい?」

「えっえぇ?」


【解体F】ってそんなレアだったのか、いきなり目立つと悪い人に目付けられそうだから怖いんだけど。


「確かに冒険者になる為に町を目指してましたけどそんなレアなスキルだったとは知りませんでした」

「はぁ!? 町を目指すってココどこだか分かって言ってるのかい? 帰らずの森深層だよ? 護衛はどこに居るんだい、貴族様をすっぽかして逃げたとかだったら冒険者の風上にも置けない野郎だ! ぶん殴ってやるよ」


 何か勘違いしてる、と言うか帰らずの森深層って名前からして死亡フラグ臭がぷんぷんする。

 何とか話を逸らさないと、さっきのレイピア借りれないか聞いてみよう。


「一人で来たので護衛は居ませんよ、それよりそのラビッツレイピア借りても良いですか? 町までで良いのでお願いします」

「いや、倒したのはあたいだけど。そもそもレアラビッツ見つけたのはカナタじゃないか、全部カナタの物で良いよ。あたいは元々『ピチピチピーチ』の採取が目的だからさ、これが高く売れるんで一抱えも売れば大銀貨1枚は硬いねぇ」


 なんという無欲で良い人だ……感動した!


「そんな事は言わずにせめて二個あるイデアロジックを一個でも貰ってください、ロズマリーさんが助けてくれなかったら多分死んでました」

「それは……そうかもしれないけどイデアロジック……通称は魔晶と呼ばれるんだけどその価値が分かってないのかい? ギルドの買取カウンターに持っていっても金貨1枚は硬いんだよ? 貰えないよ」


 ロズマリーさんは受け取ってくれそうに無い、金貨が何円くらいか分からないけど一枚くらいならそこそこくらいじゃないのかな? こういう時は定番のアレだね!


「それなら魔晶一個で町までの護衛をお願いしたいです」

「カナタみたいな子供を置き去りにするわけないじゃないかい」


 ロズマリーさんはそう言うとドロップアイテムを布製のバックパックに放り込むと(肉はつぼみたいなのに入れてた)肩にかけボクの手を引いて歩き出す、どこまで良い人なんだ! 異世界に来て初めて会った人がロズマリーさんで良かった。


「ところでカナタ、あんた兄弟はいるのかい?」


 アッー! 忘れてた……でも姿違うし大丈夫だよね?


「カナタと同じ魔法を使って、似た匂いの人だったんだけど……あたいがどうした! って聞くと走って逃げて行ったんだ」


 喋るロズマリーさんの目が怖い……時々スンスンと匂いを嗅いでくる、握った手はあくまで優しく……でも外れない様に指を絡めている。


「前回の『ピチピチピーチ』の採取もあの時の魔法が無ければ大分苦戦したしねぇ……あたいが初めて食べた美味しいお肉もくれたのに、お礼を言えなかったよ」


 べろりんっと舌なめずりしながら話すロズマリーさんを、どうごまかすかを考えながら森を歩いていく……お腹すいたなぁ。

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