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ボクが異世界?で魔王?の嫁?で!  作者: らず&らず
第3章 トランジションステージ
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第79話 夜のデートで宝箱?

 今日は色々頑張ったからお腹もペコペコ、食堂からは凄く良い匂いがする――これはラビッツステーキの匂いだ! ルナの嗅覚によるとブレードラビッツらしい、尻尾ふりふりである。


 新しい装備も手に入れたし、パワーレベリングに最適な狩場も確保してきた。食堂に意気揚々と入って行く。


 そんなボク達を待っていたのは、カンカンに怒ったメアリーと土下座するプテレアだった。


「「「「「「あっ」」」」」」


 食堂に集まったメアリーとプテレア以外の人の声がはもる。メアリーはプテレアから視線をこちらに移した。


「おかえりなさい♪」

「ただいま? おいしそうなステーキだね!」


 とりあえず初めて見るくらい超笑顔のメアリーが怖い……笑顔なのに牙が覗いている。入り口に立っていてもしょうがないので自分の席に移動して座る。無言でそれぞれの席に座る皆。


「今日はアルフとユノとユピテルがデート帰りにブレードラビッツの肉を買ってきてくれました。皆味わって食べましょう~」

「デートじゃないって言ってんだろ! なぁ、ユノとユピテルも何か反論しろよ!?」

「「別に……」」


 ワイワイと騒がしくなる食堂、男三人は隙を見てデートに行って来たみたいだ。本来なら日にちを決めてデートプランを練ってからになるはずが、明日から王都に行く事になっている為ちょっと無理したみたいだね。

 急にもかかわらず誘いに乗ってくれた彼女さん達には、感謝の念が尽きない……


「うちとカナタとキャロルとメリルの分が無いで?」

「それでは~いただきます♪」


 座る前から気が付いていた。ボク達四人の席には料理が用意されていない。ルナの目の前でブレードラビッツステーキをナイフで切らずに豪快に頬張るメアリー。噛んだ場所から肉汁があふれ出し、脂の甘い匂いが食堂を満たしていく……


「ジュルリ……うちのは?」

「全てそこのプテレアから聞いたよ? メリルも抜け駆けご苦労様、後でレオーネからお話しがあるそうだよ?」


 レオーネがステーキを一口サイズに切るとメリルにアーンしていた。でもメリルの顔色がさえない、『欲望に負けた。でも今は後悔している……』と呟いて口に突っ込まれたステーキを咀嚼している。


 この面子ならキャロラインはご飯にありつけても良い気がする? 一応ゲスト扱いだったような……


「あっ、そうそうキャロラインお嬢様? 明日出て行くかカナタの眷族になって嫁――ルナの嫁になるか今ここで決めてね? 明日から王都行きだし……今日一日誰かさん達が遊んでいる中、汗水垂らして働いてた庶民の私達と同じ立場になる? 王女様に出来るのかな~」

「私は! 私はルナの嫁です……カナタの眷属になりますわ!」


 メアリーの威圧感が半端無い! 笑顔を引きつらせたキャロラインは言い返す余地も無くボクの眷属になる事を承諾した。

 こちらを見るメアリーの視線が獲物を狙う肉食獣の目になっている……視線がそれた?

 食堂の扉が開き誰かが中に入って来た。


「フェリおかえりなさい、挨拶回り済んだ? 明日から王都行きだから今日はユックリ休んでね? あっと、ブレードラビッツステーキが四枚余ってるんだけど食べて行く?」

「えっと……もうエルナさん特製のフルコース食べたから良いです、明日は初めの鐘が鳴る前に食堂に来ますね? おやすみなさい」


 フェリは尋常じゃない空気を感じ取ったのか逃げるようにして食堂を後にする、そしてメアリーの言葉からステーキがまだ四枚ある事に気が付いたルナが尻尾を振り始める。


「うちの「ちょっと黙ってて?」……ご飯」


 ルナをその眼光で沈黙させるとこちらを向くメアリー……とうとうボクの番が来たよ。


「何が言いたいか分かってるよね?」

「えっと……皆の新しい装備ゲットしてきたよ! あと良いレベル上げの狩場確保したし、それに――」

「何が言いたいか分かってるよね?」


 笑顔のままメアリーは言う……ここは土下座して許してもらおう、そうしよう!


 椅子から立ち上がった瞬間、ボクは両肩をメアリーに掴まれまた座り直す。タイミングが完璧過ぎて抗えなかった!?


「何が言いたいか分かってるよね?」

「無茶はしてない! ……と思うんだけど?」


 急に笑顔が消え去り溜息と共に自分の椅子に座り直すメアリー。止まっていた食事が再開されるとエルナが四人分の料理を運んでくる。どうやら何とか助かったのかな?


「カナタは明日からこれつけてね」

「あ、うん……うん?」


 手渡されたのはプテレア繊維で編まれたハーネスとリード? 子犬が付けて散歩するような両肩を通して胴体で止めるタイプのやつだ。


「何これ? フリーシアン用にしては小さいような……」

「明日から基本睡眠時間以外はこれ付けてね? ほっとくといつ危ない場所に行くか分からないから」

「意味がわからないよ!?」


 ボクは思わずテーブルにハーネスとリードを置くと、立ち上がりマーガレットの元へ逃げる。


「ちゃんと一人じゃなかったし、別に危ない場所ってわけじゃなかったし!」

「付け方がわからないのならマーガレットに教えるけど?」

「それも……有りですわ!」


 マーガレットは呟やくと急に尻尾を振り始め、潤んだ肉食獣の目でこちらを見てくる。

 思わず逃げそうになるも『要するに構って貰えなくて寂しいだけですの』とマーガレットが助言をくれたので一考し自分の席に戻る。


「ハーネスとリードはダメだけどメアリーの要求を飲むよ……」

「ご飯を食べたら二人でデート! 後、明日の朝出発前の報告を冒険者ギルドに二人で報告に行く事! これ着てね!」


 手渡されたのはフリフリがいっぱい付いた白色のサマードレスで、ワンピースと言うには少し大人、でもフリフリいっぱいで可愛い洋服だった!?


「了解……そう言えば宝箱取らずに戻ってきたね、別に今すぐ行かなくても大丈夫だと思うけど!」

「ふ~ん……」


 怒られるかと思ったけど大丈夫だった。尻尾ふりふりのメアリーは、自分のご飯を咽に流し込むようにして平らげるとこちらを見ている……これはもしかすると食べ終わるまでずっと見ている気なのだろうか?


「もうがまんできへん! うま! 肉、野菜、ブレードラビッツうま!」

「いただきますわ」

「レオーネごめん、もう無理、うっぷ……」


 切る手間すら惜しむようにステーキにかぶりつくルナ、キャロラインはお腹を可愛く鳴らし真っ赤な顔で食事を始める、メリルは……二人分の食事を無理やり詰め込まれようとしていた。


「早く食べてね♪」

「了解~」


 ブレードラビッツのステーキは、本当に植物なのかと疑いたくなるくらいサシが入っており一口食べると甘い脂が舌の上で踊りだす、気が付くと口の中から肉は消えており再び次の肉へと手が伸びて行く……


「ちょっと、メアリー? ご飯食べにくいんだけど……」

「何か他に言いたい事は?」


 満面の笑みでそう問いかけてくるメアリーにどうして良いモノか……一瞬食堂内に視線を送ると自分の尻尾を撫でているマーガレットと目が合う。


「メアリー、すぐ行くから秘密基地で待っていて?」

「ん! 分かった~♪」


 軽く肩を抱き寄せ尻尾を撫でながら耳元でそう言うと、脱兎の如く走っていくメアリー。


「アヤカは別にカナタがどれだけ女垂らしになっても良いけど、刺されるのだけは簡便ね? あっナイフくらいじゃ刺さらないか、ふふ」


 自分で言い、自分で笑いデザートのピチピチピーチシャーベットを食べ始めるアヤカに恨めしい視線を送ると急いでご飯を食べる、遅くなるとどんな目に合うか分からないしね!


「さぁ、いっちょ夜のデートと行きますか~」


 ボクが立ち上がると同時に全員席から離れて行く、もしかして……もしかしなくても付いてくる気満々な気がする。




 ――∵――∴――∵――∴――∵―― 




 早めに食事を終えたのでまだ一九時にもなってない、食堂を出て少し茜色に染まり始めた空を眺める。

 皆一生懸命になってボクを支えてくれている、その気持ちに答える為にボクは何が出来るのだろうか?


 ……王都に付いたら状況が許す限り遊ぼう、お金も金貨にして93枚もある、皆で買い物を楽しむのも良い。

 そしてダンジョン『異界の宮』も見に行ってみたい、どう考えても今日行なったパワーレベリングと同じ事が出来る気がする。切り立った崖に囲まれた断崖絶壁のような中央に入り口があるらしい、キャロラインの話によると監視用の物見塔が二ヵ所建てられており、賄賂次第では中に入れてくれるそうだ。

 一応入れる場所は切り立った崖の一番上の部分までらしいけど……そこまでいけるなら中央付近に沸いている魔物を倒してレベルを上げる事も出来る筈、調整したリバリバルニートの出番が来るかもしれない。


 思わず鼻歌を歌いながら秘密基地への入り口を滑り降りて行く、周囲には気配がまったく無いけど――逆にそれが怪しい。

 滑り降りた先の秘密基地入り口広間ではメアリーが戦闘準備を終え待っていた。


「ヤル気全開だね……何処行く気なの?」

「えっ!? 夜のデートでその宝箱回収に向うんだよね?」


 メアリーの中ではもう既にそう言うプランになっているらしい、反論して墓穴を掘るのも嫌なのでそれでいこう。


「ちょっと準備にスマホ空けるね? 金銀財宝の山だったら持ち帰るのが大変だし、魔晶の欠片が二四一個と謎鉱石が二〇三個か、【分解】連打!」

「何度見てもそのスキル凄い、まさに一クランに一人のスキルだよ!」


 謎鉱石はほとんどが鉄と銀だ、真新しい鉱石は全然出て――おっ? 何か1cm角の赤っぽい石が出てきた!



『ルビー原石』

 ルビーの原石。

(自然鉱物)



「微妙? あまり綺麗じゃない、研磨しないとダメなのかな?」

「ダイヤみたいにする?」

「いや、多分それ失敗する。何でも圧縮すれば良いって物じゃなかったはず? 何故か完全な1cm角の原石だから軽く研磨してプレゼントするよ! 【冶金】ん? 【冶金】ふむ」


 一度目の【冶金】で表面の曇りが取れ、二度目の冶金で宝石っぽい感じになった。



『ルーンルビー』

 研磨の段階で魔力の宿ったルビー。

(宝石)



「なかなか綺麗に出来たと思う、難しいカットの方法は今度研究してみるとして……このままでも宝石として結構良い感じ? 銀鉱石も有ったしチェーンも作れるからネックレスにするね?」


 目を輝かせこちらを凝視するメアリー、目の前で銀鉱石に【冶金】を使い細いチェーンに加工すると先にルーンルビーを固定する、落ちないように八つの角それぞれを銀で覆いネックレスに加工……一応【超硬化】もかけておこう。


「これは他意はまったく無い、メアリーにプレゼント」

「ありがとうカナタ……」

「さぁ、宝箱を回収して明日に備えてゆっくり休も? プテレア入り口をお願い」

「主殿、通路のプテレア化が終わったので安心して宝箱を回収してきてください!」


 尻尾を全力で振るメアリーの首にネックレスをかけると、カウンターに居たプテレアにあの扉前直通の通路入り口を開けてもらう。

 さすがに魔物が徘徊するダンジョンへ直通しているのでプテレアの分体が常時居るこの広間カウンターの裏に通路を繋げて貰った。


 通路内部はピンク色の光りを放つプテレアの蔓で覆われていた、怪しい雰囲気がする……

 メアリーが先ほどから言葉数少なくなり、とうとう左腕にしがみ付いて黙り込んでしまう。

 通路はプテレア化のおかげもあり、歩かなくても現地へと運んでくれるのでメアリーの頭を撫でてマッタリ歩く。


「もう着いちゃった……」

「ん? 結構早かったね、後はこの扉を……あれ?」



『アダマンタイト製の扉』

 アダマンタイトで作られた扉。表面に儀式魔法陣が彫られている。

 :魔法耐性



 どう見ても扉は開いていない、試しに扉に手をかけると……真横(・・)にスライドした!?


「ルナが押しても引いても開かないわけだね……イヤ、鍵が開いたおかげかな?」

「この扉も綺麗……」


 言われてみればこの扉は、高さ2mくらい横幅2mくらいの正方形に近いアダマンタイトの固まりだ。

 持って帰れたら良い盾になるかもしれない?


「収納出来たら……って収納出来た!」


 スマホに収納出来たら良いと思い手をついてみると案外普通に収納出来る、メアリーが居なかったら回収し忘れていたかもしれない。


「奥には、祭壇? 綺麗な宝箱?」

「灯火シュート!」


 一応メアリーを入り口に待たせ部屋の内部に進入する、見た感じ中央の祭壇以外特に何も無い。

 正方形に近い形の部屋で四隅に突き出た棒のような物が見える……松明?


 祭壇は高さ1mくらいしかなく階段が結構急だ。ゆっくり足元を確かめるようにして歩くとすぐに宝箱まで着いた。



『アダマンタイトの宝箱』

 アダマンタイトで出来た宝箱。

(???)



「アダマンタイトで出来た宝箱らしい、ランクとかあるのかな?」

「えっと、石が一番しょぼくて、木・鉄・銅・銀・金・レアの順番に中身が豪華になるってロズマリー母さんが言ってたよ?」

「なら間違いなくレア宝箱だね~」

「あ! あと石が一番ミミックが多くて、レアに近づけば近づくほどミミック率が下がるみたいだからその宝箱は安全かも!」


 振り返りメアリーの話しを聞いていると、通路から狼の尻尾が覗いていた。


「ふむ~ルナはどう思う? まぁどっちにしてもあける事には変わりないけどね!」

「あっ? ルナ! もう……皆も居るんでしょ!」


 ルナの尻尾が引っ込み皆が顔を出す、リトルエデン総出で宝箱回収になってしまった。

 アダマンタイトの宝箱に手を伸ばし蓋に手をかける、後ろから『真っ赤な宝箱やで!』と話す声が聞こえた……ルナが真っ赤に見える!?


 蓋に手をかけたボクは一瞬躊躇しすでに遅かった事を悟る、宝箱の蓋は自動で開き内部には大きな牙が沢山生えていた!


「ガブチョガブチョ」

「知ってたし! 全然平気だし! 丁度良いから【テイム】して動く荷物入れ的な従魔にするし!」

「「「「「「……」」」」」」



『アダマンタイトミミックLv125』



 手を齧るミミックは【テイム】を物ともせずに、ボクの左手をひたすらカミカミしてくる……


「これは持久戦かもしれない、戻って寝よ……」

「ぷっ、あははは、カナタらしいね!」

「アヤカはこの部屋、多分BOSS部屋だと思う……それダンジョン『奈落の穴』の最下層BOSSかもね」

「まぁ【テイム】出来たら丸儲け、暫く試してみて無理なら――ばらしてアダマンタイトとしてグロウにでも売りつけよう!」


 通路を戻りプテレアにアウラ縄で左手ごとミミックを結んでもらい、寝室に移動する。今日は残念ながらミミックが居るので部屋の端っこで一人眠る事にした。

 凄く残念そうなメアリーの頭を右手で撫でると、全員順番にキスしていく……たまには一人寝も良いかもね。


「明日は王都へ向うのか……皆お休みなさい~」


 ベットに入ったらすぐに皆の寝息が聞こえてきた。ちょっと過密スケジュール過ぎるかな……

 明日からはもっとマッタリした生活を目指そう。午前中は狩り、午後からは遊びみたいな?


 まぁ、まずは王都に向って……クリスの機嫌を取らないと。

 王都に向う道とか知らないけど大丈夫かな?


「ガブチョガブチョ」


 ラーズグリーズの町で暮らす最後の夜は、こうしてミミックの噛み音と共に更けていった。

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