プロローグ・どこかの偉い人
どこまでも続く永遠の星空。地球を見下ろせる場所にソレは居た。
「ふむ、天使どもが騒いでおるな……。一通り蹴散らし、翼をもぎ取ってやったら大人しくなったと思ったのだが」
物騒な事をつぶやく白髪ムキムキマッチョな老人は、ギリシャ神話の神を思わせる彫りの深い風格のある顔を歪ませる。
「いや……これは好機か。あの小娘との約束を、願いを叶える時が近づいたと言う事か。このワシに向かって啖呵を切った初めての人間じゃ。期待はしとったがまさかもう〔FOURTH HEAVEN〕まで上がってくるとはのう」
先ほど歪ませた顔を微笑みに変えた老人は、何も無い空間から大きな翼を取り出すと羽根を毟り始める。
「四六億年かけた我が願い、もしやすると……」
微笑みをさらに笑みに変えた老人はまるで孫に贈るプレゼントを用意するかの様に、優しい手付きで大量に毟った羽根を一枚の羽根にまとめて行く。どんな魔法か出来上がった羽根の大きさは変わらず、ただ『全てを覆い尽くすような漆黒の色』をしていた。優しい手付きで羽を撫でる老人。
もしここに他の誰かが居たのなら、脇目も振らず裸足で逃げ出していただろう……老人の顔は笑みと言うには獰猛過ぎた。まるで長年捜し求めていた獲物が、目の前に……いや、手の中に居るかの様に……
「さぁ、準備を始めようか。この〔SIXTH HEAVEN〕守護神ガイアが手を貸すのだ! 負けてくれるなよ小娘」