南エリア解禁
いいか?
もう一度、為になるご指導ご鞭撻をしてやろう。
序盤にパーティーを組むなど阿呆がする事なのだ!
よーく聞くんだぞ?
敵はまだそんなに強くない。
一人で十分に狩れる。
ドロップも独占でき、弱いが素材から武器を作ることができ、お金を稼ぐことができる。
パーティーには、それが出来ないとは言わない。
だが、まだ効率が悪すぎる。
いいか?
だからお前ら早くパーティー解散してイチャコラやめて川に飛び込んで寒さで悶え死ね!!
全然、羨ましくなんかないんだからな…
この街に入ってから溜息は何回着いただろうか。
街に着いたすぐ、パーティー組んでるやつらに肩をぶつけながら西の門から平原へと行ってLvを上げた。
そしてインベントリがいっぱいになったら帰って来るというのをずっと繰り返していた。
もう深夜一時。
徐々に人が減り、溜息の着く回数も必然的に減ってきた。
NPCに素材を売り、武器を買った。Lvも上がり、ここら辺のMAPはほとんど楽に狩れる。そろそろ次の狩場を探したい。
つまり、次の階層へ行きたいと思った。
このゲームは、始まりの街が有って、そこからボスを倒して行くと地下へと通じる階段が出るそうだ。
何階層まであるか明言はされていないが、下に行けば下に行く程、敵が強くなって来るというのは間違いない。
このゲームの最後には何が待ち受けているのだろうか。
今はまだわからない。
俺は夜が作り出す静寂な雰囲気の中、一人狩場へと向かった。
※※※※※※
kou
Lv.12
HP・262
MP・42
筋力・80
耐久・30
敏捷・50
器用・0
知力・0
運・0{180}
キャラクター作成時に初期SPとして100P貰える。
そしてLvが上がる毎に5P貰えるのでこういうステータスとなった。
筋力は、純粋に物理攻撃力UP。武器によっては使うために要求筋力があるので、強力な武器を持つためには必要だ。
耐久は、物理攻撃や魔法攻撃に対する耐久性。一つ上げる毎にHPが5上がる。
敏捷は、命中率、回避率、クリティカル率、動作速度を上げる。基礎的なステータスなので魔法職以外は振らなければならない。
器用は、生産職用と言っても過言ではない。
知力は、魔法攻撃力UP等の魔法職用。
ざっくり説明するとこんな感じだが、筋力に少し振りすぎたと後悔している。
このゲームにはクリティカルという相手に致命打を与えるシステムがあり、この攻撃は普通の攻撃力より2倍の攻撃を敵に与える。
運営から貰ったアクセサリー類を変えなければいけないときに敏捷や運がないとクリティカルがでなくなる。
筋力が低いとクリティカルが出ても弱いし、敏捷や運が低く、クリティカルが出ないと火力不足に陥りやすい。
「まあまだ大丈夫か」
これからのステータス振りを考えることは重要な事だ。
何と言っても、ステータスを再振りする課金アイテムが9980円もするのだから。
武器はまだNPCの店で買ったクレイモアとかいう両手剣。
防具はほとんど着けていない。
このくらいのLvで防具なんか有ってもなくても同じようなもんだ。だから、傍からみれば最低限な服しか着けていない変態な男と思われているかもしれないが構わない。
俺は、始まりの街である一階層の南のエリアである沼地に来ていた。深夜帯で周りは真っ暗なのだが、見渡すとポツポツと灯りが見える。
敵の周りだけ明るくなって狩りが出来るようになっているのだ。
この沼地に棲息するリザードマン。
2mもの強靭な体躯を持ち、体と同じ大きさの槍を持っている。
近づいて来ている俺にはまだ気付いていない。
「こいつはマトモにやり合うとヤバそうだが、両手剣持ちの俺には隠密行動なんて出来やしないんだよな」
夜だからかリザードマンはやっと俺に気付いたみたいで雄叫びを上げる。昼だとすぐ気付くのかな?VRMMOってすげえ。
「ッオラァッ!」
両手剣を両手を使って振り回す。
そんな俺の隙だらけの腹に槍を一突き。
「ウグッ」
両手剣の持ち味は、ノックバック。
両手剣の重みとダメージで相手を退かせ、そして追撃し、ずっと相手は動けないままノーダメージで倒せるという利点がある。
だが、こいつにはそれが効かないみたいだ。
打撃を与えても槍の鋭い突きで反撃される。
ゲームで無ければ死んでいるがそこはまあいいだろう。
俺がリザードマンを叩いて、そして突きで反撃されてというのを繰り返していた。
「こいつッ、堅すぎだろうがっ!!」
南エリアは初めて来たのだが、ここはこの階層の中で一番の難易度らしい。
筋力もこのLvにしては高く、敏捷もそこそこある。そして何より、運はこのLvにしてはチート並だ。
簡単に倒せない敵に会うのが初めてだった。
一回打撃を与えて、そして突かれてを繰り返していると俺のHPが2割の所でどうにかリザードマンを一体倒すことが出来た。
ドロップアイテムは、リザードマンの棘とリザードマンの猛皮だった。
今回は敢えてスキルを使わずに戦ってみたが、序盤では正直凄く強い敵だと言っていい。
おい、運営。
早いよ。
まだソロプレイをする時間だろ?
まだ序盤も序盤じゃないか…
パーティー…しね…
涙目になった所で、俺は街に帰った。