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CASE3 犯罪者:02

登場人物のおさらいです。

今回は主要メンバーは除いた、久々の登場人物、今回からの登場人物のみです。



黒岩学登

クラブ・フィールドオーナー。総志朗の保護者的存在


日岡篤利

今回の依頼人


白岡奈緒

総志朗のセックスフレンド


光喜

総志朗のもうひとつの人格?


「よぉ、黒岩」

「お待ちしてましたよ、佐久間さん」

 

 薄暗いカウンターでグラスを磨いていた学登が、営業スマイルで男に近付く。

 佐久間と呼ばれた男は、黒いスーツのポケットに突っ込んだ手を学登に差し出した。それを軽く握って握手を交わすと、学登はその手を『Stuff only』と書かれたドアに向ける。


「こちらへ」

「例の物は、もう揃ってるのか?」


 佐久間の手が何かを握るような動作をする。人差し指だけ、くの字に曲げ、腕を上下に動かした。


「ええ。大丈夫ですよ。また抗争でもあるんですか?」

「まあね。やっかいなことだがな」


 学登は「大変ですね」と笑って、ドアを開けた。






「そおちゃ〜ん」


 奈緒がふっくらとした胸を総志朗の背中に押し付ける。たまらず総志朗は体を反転させて、奈緒の体を強く抱きしめた。


「ね、浮気してたんでしょ〜?」

「いきなりその話かよ」

「だってぇ、9月とか10月とか、全然あたしと遊んでくれなかったじゃん。エッチもしてくんなかったしさあ。浮気だ、うわきぃ」


 思いっきり頬を膨らませて、総志朗の顔のすぐ横に顔を寄せる。総志朗の頬に奈緒の膨らんだ頬が触れた。


「浮気じゃねえもん」

「ほんとかなあ〜? 男の人って、浮気するとエッチが増えるか、無くなるかのどっちかなんだってえ。総ちゃんは、無くなる方でしょ〜?」

「どっちだろうねえ」


 奈緒は体を総志朗に押し当て、背中に手を回す。そっとキスをすると、それに答えるように総志朗からもキスをする。


「まあ、どっちでもいいや。あたしが総ちゃん大好きぃって気持ちは変わんないしぃ」

「それはありがとう」

「あたし、総ちゃんのこと、守ってあげるんだもん。そばにいてあげる。総ちゃんが誰を見ていても、いいんだあ。総ちゃんが好き〜」

「奈緒はいい女だね」


 褒めてもらって嬉しいのか、奈緒は満面の笑みを浮かべ、上着を脱いで下着姿を露わにする。


「総ちゃん、大好き」


 何度も交わすキス。体中が溶けていくような感覚の中、2人はベッドに倒れこむ。パイプベッドがぎしりと揺れた。






「へえ。人殺しの依頼〜?」

「ああ。追い返したけど、金をポストに入れていきやがったから、明日返しに行って来るよ。通ってる小学校はわかってるし」


 脱ぎ捨てた洋服をかき集め、奈緒はそれを着ていく。その背中を総志朗は寝転んだ体勢のまま、眺めていた。


「今時の小学生は怖いねえ〜。あたしがそのくらいの時は鼻水たらして、お菓子食べることしか考えてなかったよ〜」

「それもどうかと思うけど」

「誰を殺してほしいって言ってたの?」


 すべての洋服を着終わった奈緒は、きれいに着ることが出来たか、全身鏡の前に立って確かめる。くるりと一回転した拍子に、ピンク色のショーツがちらりと見えた。


「父親、だってよ」

「……まじ?」

「まじ」


 奈緒の姿をじっと見つめたまま、総志朗は困り果てた顔で苦笑い。奈緒は考え込むように眉間にしわを寄せた。


「それってぇ、ほんとに殺したいのかなあ」

「え?」

「だってえ、ほんとに殺したいなら、自分でグサッとやっちゃうでしょ? ええと、12歳? そのくらいなら罪は問われないんだし」


 グサッの部分を強調して、奈緒は言う。もちろん、動作つきで。


「受けちゃえば〜?」

「おいおい。オレが刑務所に行ってもいいのかよ?」

「自分でやっちゃえば早いのに、わざわざ誰かに頼むってことはぁ、たいして殺す気ないよ。むしろ止めてほしいんじゃな〜い?」

「ふむ。確かに」


 ニーソックスを太ももまできっちり伸ばした後、まだベッドに戻ってきて、奈緒は寝ている総志朗ににじり寄る。


「いくらもらえるの?」

「封筒には10万入ってた」


 10万程度で人が殺せると思ってる辺りはまだ子どもだよな、と笑う。

 奈緒は総志朗の裸のままの体を右手でなでながら、言った。


「お金だけ、いただいちゃおうよ〜。殺すふりだけすればおっけおっけ! 10万だから〜韓国あたりなら2人で行けるじゃん! 韓国行こう! やきにくやきにく!」

「いいねえ」

「よし! 決まり〜! お仕事がんばろ〜」


 エイエイオ〜と両手を振りかざした奈緒のその後ろ。総志朗は幻覚かと思って、目をこすったが、そこにそれはいた。


「な、しえさん……」

「ここ、私の家よ? あんたら、なにしてんの?」


 バイトから帰ってきた梨恵が、キッチン横のドアで固まっている。真っ裸の総志朗と、総志朗にすり寄っている奈緒。まさにあれが始まる瞬間のような2人の姿。


「不純異性交遊は、どっかのラブホでやれ! バカップルッ!」

「なしえっち、こわあ〜い。鬼さんだ、鬼さんだあ」


 いつものごとくだが、怒りで角を生やした梨恵と、なぜかはしゃぐ奈緒。それを総志朗はあきれた目で見ていた。







 2人の関係を、とやかく言うつもりはない。

 セフレなんてありえないって、今でも思うよ。

 でもね、そんな関係でもいいって言う奈緒ちゃんの強い愛情に私は驚かされた。

 捨て身の愛を、自己犠牲の愛をばかげてるとも、間違ってるとも思うけど。

 それでも。

 幸せそうに笑う奈緒ちゃんを、私は嫌いにはなれなかった。

 大好きだったよ。

 また、会いたい。笑顔を見せて。

 夢の中でもいいから。


 

今年最後の更新です。

読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。

来年も頑張りますので、よろしくお願いします。


来年の更新予定ですが、年末年始は仕事が忙しいため、年始の更新が非常に難しいです。4日以降になると思います。申し訳ありません。


それでは、良いお年を!


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