ライバルを倒せ!④
週明けに学校へ行くと、いつも通り梨央は本を読んでいた。
珍しく藤志朗は梨央に声をかけることもなく、席に座って他の女の子達と話している。
あのデートの後に何があったのかわからないが、念のためにカフェで勉強しようとLINEをすると、既読にはなるがいつもようなスタンプが来ない。
一抹の不安がよぎる。
とはいえ、みんなの前で声をかける勇気もなく、放課後になって来てくれるかわからないままカフェに奏汰は向かうしかなかった。
カフェに荷物を置いて、カフェラテを飲んで待つ。
(もしかして藤堂と付き合うことになって、返事がない・・?付き合うようになったから、あえて教室では話さなくなったとか・・・?)
悪い想像ばかりが膨らんでいく。
問題集を広げ、集中できないと思いつつ、問題に取り組んでいると、「・・・お待たせ」と梨央がやってきた。
「お、おぅ」
梨央はいつものような笑顔はなく、クールな顔だ。
イライラしているのかもしれない。
「あ、あのさ、これわからないんだけど」
「これ、前も教えたよ?」
明らかに梨央の態度が冷たい。
だが、帰る様子もなく、いつもように淡々と勉強している。
(何か怒らせることをしたのか?)
奏汰がいくら考えてみても答えはでない。
色々考えてしまい、集中できず問題を間違えてまた冷たく返事をされてしまった。
最後まで理由がわからぬまま「今日はこれで終わりね」と言って梨央が片付け始めた。
奏汰はしょんぼりとした気持ちで片付けて、一緒にカフェを出る。
「じゃあ、私こっちなので」
そう言って梨央が反対方向を向いて去っていく。
(このままじゃ・・・)
「ちょっと待って!」
梨央のところまで走ると、梨央は下を向いて目を合わせてはくれないが、待ってくれた。
「俺、何かした?大久保の気に障ること」
「・・・別に」
「いや、明らかに機嫌がよくないっていうか・・・恥ずかしい話だけど、今まで女の子と仲良くしたりとかほとんどしたことないから、話すのすら緊張してしまうし・・・。なんか失礼なこととかしてたら、ごめん!」
奏汰が頭を下げると、ぽかんと驚いた顔で梨央がこちらを見ている。
素直に謝ってみたが失敗だったかと背中に汗をかき始めた時、梨央の小さな声が聞こえた。
「・・・藤沢さんとは仲いいよね」
「藤沢?」
「・・・この前二人できなこちゃん連れて歩いてるのをみました」
「藤沢は女の子の枠じゃないっていうか、小学校から知ってるから誠と同じ感じで話せるって言うか・・・。あの日も昔遊んだことある神社の裏に行って、川見てきただけなんだ。すごく綺麗な川でさ、今度大久保も行こ?な?」
なんでこんな言い訳しているんだろうと思いながら、祈るような気持ちで梨央をみると、梨央は少し表情をゆるめて「・・・行ってもいいよ」と言った。
「じゃあさ、俺も1つ聞いてもいい?」
「いいよ」
「藤堂のことなんだけど・・・」
藤堂とデートをしているところを見てしまったことを話すと、驚いた表情をしながら「あれはデートじゃないです!」と珍しく大きな声で言ってきた。
「あまりにもしつこく勉強の邪魔をするので、やめてほしいと改めて伝えたんです。そしたら、一度だけ自分とも出かけて勉強を教えてほしい、そうしてくれたらもうしつこくしないからって言われて・・・」
「なんだ・・・、そういうわけだったんだ」
心底ホッとした。
梨央を落とせるかはおいといて、藤堂に負けるのはごめんだ。
「最後告白されたんですけど・・・」
「告白!?」
「もちろん、お断りしました。これで勉強を邪魔されることはないと思います」
梨央はそういうと、くるっと奏汰に背を向けた。
「ふ、2人で勉強することは、私にとっては大事な時間なので・・・」
そういうと、「じゃあ、また明日」とそのまま帰ってしまった。
その場には顔を真っ赤にした奏汰だけが残された。
そして翌日も学校へ行くと、藤志朗がいつものように梨央に話しかけている。
「と、藤志朗、お前・・・」
奏汰がそういうと、髪をいじりながら、「僕は一途なんでね」と白い歯を見せて笑った。
「まだまだ大変そうですなぁ」
誠が後ろからかうように声をかけてくる。
奏汰はため息をつくと、いつもの自分の席に座った。




