ライバルを倒せ!②
翌日からも藤志朗の梨央へアプローチは続いていた。
「どんな本読んでるの?」
「・・・ミステリー」
梨央は返事をしてはいるものの、顔を向けることはない。
「ねぇ、今度一緒にどこか食べに行かない?」
「・・・行きません」
こんな調子だ。
今のところ梨央が藤志朗になびきそうな様子はない。
むしろ、苦手としているような感じがする。
「藤堂のやろう、すげぇな」
休み時間に誠はやってくると、藤志朗の方をみて驚きの声を上げた。
「まぁ確かにな」
「あんなに断られて、誘うとはなぁ。よっぽど気にいってんだな」
「大久保の方は興味なさげだけどね」
「まぁ今はな」
誠がニヤっと笑った。
「なんだよ、含みのある言い方して」
「あれだけ毎日イケメンに言い寄られたら気持ちも変わることがあるかもしれないなぁって思っただけ」
2人の様子を再び見てみるが、藤志朗が話しかけて、梨央が迷惑そうに一言答えるだけだ。
「んなわけねぇよ」
「さぁどうだろうなぁ~」
からかうように誠は言うと、自クラスの教室へ戻っていく。
梨央はただただ本を読んでいる。
(大久保が、藤堂に・・・)
考えただけでなぜか胸が痛いし、イライラしてくる。
それよりなにより、世界の為にも負けるわけにはいかない。
奏汰は意を決してスマホを握った。
学校が終わり、誠と別れた後に奏汰はカフェに向かっていた。
図書室だと邪魔が入るので、梨央とカフェで勉強することを提案したのだ。
梨央からも了解とスタンプが来たので、もうすぐ来るはずだ。
荷物を降ろしてソファーに腰かけると、あたりを見て回した。
他にもたくさんの学生が勉強している。
このカフェは2時間制となっていて、こういった勉強することも容認しているようだった。
「お待たせ」
少し息があがった様子で梨央がやってきた。
「大丈夫?」
「なんか藤堂君に追いかけられちゃって・・・何とか巻いてきた」
そう言って、梨央がいたずらっぽく微笑んだ。
梨央の可愛らしい笑顔にぼーっとしそうになったが、「じゃあ勉強始めよっか」と梨央にそう言われて、勉強道具を広げた。
今日も梨央に立ててもらった計画通りに学習を進めていく。
「ここがわからないんだけど」
「うん、ここはね・・・」
梨央との穏やかな時間が戻ってきた。
だんだん気持ちも落ち着いて、集中して勉強できるようになったころに、聞きたくない奴の声が聞こえた。
「梨央ちゃん、ここにいたんだ」
「藤堂・・・!」
笑顔で藤志朗が立っている。
ここまでくるともはやストーカーだとは思うが、「たまたまここでカフェを飲みたくなってね」と言って、奏汰の隣に座ってきた。
「ここで勉強してたんだ。僕も勉強しようかな」
「おい、ちょっと」
「・・・です」
梨央が何かを言った。
「ん?どうしたの?」
「・・・くです」
段々声が大きくなってくる。
「え?もう1回言って?」
藤志朗に聞かれて、莉央が息を大きく吸った。
「迷惑です!」
はっきり言われて困惑をしている様子の藤志朗に、追い打ちをかけるように「あなたが来ると集中できないので、帰ってください」とさらにはっきりと言った。
「そ、そうか、それは申し訳なかった」
藤志朗もあまりにはっきり言われて、ショックだったのかフラフラしながら出ていった。
その姿を見送ると、梨央は何事もなかったというように、「引き続き、勉強しましょう」と言って、問題集に取りかかった。
思わず緩んだ口元が窓に映っている。
「ゴホ、ゴホ」
誤魔化すように咳払いをして、課題にむきあった。
梨央ははっきりと藤志朗を拒絶した。
だから二人が仲良くなるはずなんてない、はずだった。
(どういうことなんだ・・・)
奏汰はフードをかぶり、電柱の影から一組のカップルを見ていた。
片方は藤堂藤志朗、そして相手は大久保梨央だ。
(どうして・・・?)
奏汰はただただ立ち尽くすしかなかった。




