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世界を救うために君を落とします  作者: 月丘 翠
作戦《3》体育祭で活躍すべし
12/17

体育祭で活躍すべし! ②

今日はいよいよ土曜日。


体育祭のことも世界のことも一旦置いておいて、今日は梨央とのご飯を楽しもう。

奏汰は鼻歌まじりに準備を始める。

服装は、ネットで上から下までセットで全て購入した。お

小遣いやら貯めてきたお年玉が吹っ飛んでいったが、これも世界の為だと思えば安いもんだ。


少し早めに待ち合わせ場所へ行くと、目立っている人がいる。

チラチラと周りの人が視線を送っている。

本を読みながら、待ち合わせの相手を待っているようだ。

みんな彼女を見ては、「綺麗な子だね」「芸能人かな」と言って、通り過ぎていく。


(もしかして、あれはー)


「ねぇ、1人?」

若い男が彼女に声をかけている。


「今は一人です」

そんな美人である彼女、梨央は本から目をそらすことなく、淡々と答えている。


「ならさ、俺と遊びにいこうよ」

「行きません」


速攻で凍りそうな冷たい態度で断っている。


「そんなこと言わずにさ、楽しませてあげるからさ」

「嫌です。迷惑なので、やめてください」


一切、男の方を見ようとすらしない。

男は強行突破しようと思ったのか、梨央の腕を掴もうとしている。


(やばい・・・!)


奏汰は駆け出した。

すると、梨央はスルッと掴もうとした手を避けると、本でパシッとその腕を叩いた。


「いてぇ・・・。何すんだよ!」


男が怒って掴みかかろうとしているところで、なんとか奏汰が梨央の腕を掴むと、「行くぞ」と駆け出した。


しばらく走って、振り返ると、どうやら追いかけては来ていないらしい。


「はぁはぁはぁ、良かった・・・」

「すいません」

梨央も顔を赤くして、息が上がっているようだ。


「・・・とりあえず、お茶でもいこか」

店の予約まで時間があるし、少し気持ちを落ち着けた方がいい。

近くのカフェで気持ちも身体も落ち着けることにした。


なんだか落ち着かない。

店に入ってしばらく経つのに、ソワソワしてしまう。

梨央は注文したカフェラテをずっと見ている。

学校でも美人だと思ってはいたし、周りもそう言っていたが、私服になるとより美しさが強調されている気がする。

普段学校の指導で髪は結んでいることが多いが、今日は髪をおろしていて、艶のある髪が梨央が動く度に揺れている。

白の襟付きの水色ワンピースに、白のカーディガンを羽織っている。

こんな美人とカフェに来てこの後ご飯とか、奇跡でしかないよな、そう思いながら、奏汰もコーヒーに目を落とした。


「あ、あの」


「はい?!」


「さっきはありがとう」


「あぁ、全然逃げただけだし。むしろ、もっと早く助けないとダメだよな」

梨央は、手を突き出して左右に振りながら、「ううん、全然そんなことないよ!」と言った。


「さっき気づいたんだけど市川くんって・・・足速いよね?」


「昔からなんでか知らないけど、足だけは速いんだよね」


「・・・いいな、足速いの」

梨央がぽつりと言った。


「え?大久保さんも運動神経いいでしょ」


「ううん、そんなことないよ。走るのはどちらかというと苦手で」


「そうなんだ」

最強の梨央にも苦手なものがあるとは意外だ。


「でもなんか勝手に速いって思われて、アンカーとかさせられること多いから困っちゃうんだよね」


恥ずかしそうに困った顔で髪をくるくる指に巻きつけている。


「確かに俺も速いんだろうって勝手に思ってたよ、ごめん」


「あ、全然、そんな気にしないで」慌てたようにそういうと「期待されるのもありがたいことだものね」梨央はそう言って、カフェラテをゆっくり一口飲んだ。


「そういえば、もうすぐ体育祭だな」


「そうだね。6月にやるなんて変わってるよね。雨で中止になるかもしれないのに」


「教師もやりたくないのかもな、体育祭」


「そうかもしれない」そう言って、梨央はふふふと微笑んだ。


その後、時間が来て予約した店に移動した。


“ サマーリーフカフェ”


小さなレストランだ。

昼間はカフェで夜はレストランをやっている。

値段もそんなに高くなく、家族連れも多い。


綺麗な顔のウェイターに案内され、席に座った。


「颯太くん、こっち運んで」


女の人に颯太と呼ばれウェイターは、「予約で料理は承っておりますので、飲み物の注文などございましたら、および下さい。ではごゆっくりどうぞ」というと、「今行くー!ちょっとクロバくん!それダメ、それは触らないで!」と慌てて、奥に入っていった。


「なんだか慌ただしい店だね」


「うん。でもこの店美味しいらしいよ。藤沢に教えてもらってさ」


「藤沢って藤沢小春さん?」


「うん。藤沢とは小学校から一緒で、なんとなく話すことも多くて」


「・・・そうなんだ。あの・・市川君ってどんな小学生だったの?」


「小学生の時?うーん、そうだなぁ。今とあんまり変わらないかもなぁ。友達もあまりいなかったし、毎日遊んで寝てただけって感じかな。大久保さんは?」


「私は・・・うん、同じ感じだよ」

なんとなく触れてはいけない話題なのか、沈黙が訪れる。

どうしようかと思っていたところに、料理が運ばれてきた。


「こちらがサラダとスープでございます」


女の人がにこっと笑うと、置いて去っていく。


「美味しい」

スープはコーンスープで、甘くてまろやかな味だ。

梨央が嬉しそうに微笑んでいる。


「口にあったみたいで良かった」

その後出てきたハンバーグも美味しくて、あっという間に平らげてしまった。

最後のデザートのアイスも美味しくて、「お腹いっぱい」と言いながらも梨央も最後まで食べきっていた。

「ありがとうございました」


店を出ると、21時近かったので、梨央を家まで送ることにした。

もう春を超えて初夏が近いが、夜はほんの少し肌寒い。


「今日はありがとう」


「いやいや、これはお礼だから」


「嬉しかった。私、家族以外とお外で食事とかしたことなかったから」


「そうなんだ?なんか初めてが俺で申し訳ないな」


「そんなこと、そんなことないよ。楽しかったもの」

「そっか、それなら良かった」

他愛もない話をしていると、あっという間に梨央の家の前についた。


「じゃあ、また明後日学校でな」


「今日はありがとう」


「うん。じゃあ」


そう言って、奏汰が背を向けて歩き出すと、「あ、あの!」梨央に呼び止められて振り返ると、「あの、えーっと、気を付けて帰ってね?」とそう言って、梨央は家に入っていった。


(どうしたんだ・・・?)


疑問に思いつつも、家に向かっているとスマホが震えた。


“今日はありがとうございました。楽しかったです。それで・・市川君さえよければなんだけど、また一緒にご飯行ってくれる?”


「もちろん、喜んで」


奏汰は一人夜空に向かってガッツポーズをした。

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