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いちやあけて

「本日はこちらでお休みください」


と案内されたのは爽やかなオレンジが香る部屋だった。ベッドなどは固めのゼリーのような、柔らかめの低反発素材のような、不思議な感触がした。手触りはスフレのようだった。


部屋にはベッドとソファ、机がある。ソファにはクッションが両端にそろえられている。


夢の中で寝るというわけの分からない状況だが、眠れそうなのだから眠るべきだろう。そして目が覚めたらまた新しいお菓子のデザインなどを考えなくては。


しかし、この夢の世界で見た様々なもの。いくつもの果物がなる木や本物そっくりのブローチなど、参考になりそうな物がたくさんあったな、とも思う。そういう意味ではよい夢だったと言えるだろう。


まぶたを閉じれば浮遊感と共に眠りに落ちた。



そして一夜明けて。


「なんでまだこの夢なの?」


お菓子の世界の夢から覚めず、普通にお城の客室で一泊しただけのようだった。


「もしや、これが世に聞く『異世界転生』・・・・いや、転移?」


体は自由に動くのでとりあえず周りに集中してみることにする。


足の裏には床の感触。鼻には部屋のオレンジの香り。耳にはお城の外で鳴いているだろう鳥の声。


それら全てが、これは現実であると伝えてくる。


これは、正直困った。そんなことは考えていなかった。


目が覚めれば夢は終わって、お菓子のことを考える日常が待っているかと思ったのだが・・・・。


と、ここまで考えて止まる。


今いるこの世界だって、お菓子だらけなのだ。お菓子のことをより純粋に考えられるではないか。


もう売値をいくらに、とか。ノルマがいくつ、とか。余計なことは考えなくて良いのではないか。


そう思うと今の状況も悪くないように思える。何よりもなんでこうなったのか、どうやって戻るかも分からないのだ。立ち止まるよりは健全だろう。


「よし、王様に聞いてみよう」


もしかしたら歴代の作り手というのも、異世界転生や転移をした人間だったのではないだろうか?


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