Rp8、暗黒宇宙生物
一人の青年、ライズ・インバルスが航行の旅から帰って来る時に、このように伝えていた。それは恐怖にも似た歓喜のような声で、だ。
――――
「あはははは・・・俺は、“宇宙生命体”に出逢ったんだぁ―――ッ!今頃、他の皆も俺と違う生命体に移り変わったんだろうなぁ~~ッ!」
「艦長・・・彼は・・・」
「宇宙の生命軌道に乗って漂流して居たところ、救われたのだそうだ。スーツ無しで自ら宇宙に身を投げたという・・・愚かだ」
「気持ちいい旅だったぁ―――ッミヘルぅ、おい、ミヘルはどこだぁ~~?」
「・・・彼には記憶が無かった・・・」
「度重なる研究ラボの実験で意志が分裂していたのだろう?」
「あぁ、そうだ。少しでも戦力になりたいと志願した技師が、こうしてレンジに入ったら、オーブントースターから現れたという事だ・・・」
“あはははははッ!!!”
艦内の監視室でモニター越しに看取られるライズであったが、その意志は別の次元であるこのフォレスによって遺伝的に操られてしまったのである。つまり残骸である漂流物をそのまま裸に被せて浸食が行われたので、このようにして狂ったのだと皆は憐れむように見ていた。彼の遺伝子には別の生物の名残の在る、形式的にも異なる生命がこびりついていた。
――宇宙惑星パルマ―ジュの研究ラボ
「研究ラボには被検体とした者の記憶を一時的に消去し、コンピューターに組み込むことで、新たな遺伝物質から移植細胞に転用すると、次に体ごと凍結されてしまう。被検体によっては随分と永い旅を強いられるので、その内容によっては別の記憶に摩り替えられるという状況に陥るのだよ」
「だから、彼は名前だけは覚えられ、それ以外は日常的な内容しか理解できないと?」
「そうとも。人間は宇宙の空域内で放り込まれると、細胞分裂じゃなく、細胞委縮を始めるのだ。他の星々のような空間膨張を起こすような生命も居れば、我々人類のように、縮小を始め、脳酸素量が低下するという」
「では、その低下に応じて身体は温存され、記憶の内容だけが他の遺伝記憶を貰い受けると?」
「勿論そうだ。でなければ、我等・生命研究理論に対する侮辱でしかないからな。万が一、移るという、死をも乗り越える意志と魂が存在するという事で、人工生命体の理論と実験が完成したとされると、それもそれで意識が保たれているのはおかしい、と言われてしまうだろう」
暗黒星雲から飛来する、アスラゲージと同等のエネルギーが宇宙空間に散布されるという事は、少なからずも人体へ影響するという事になる。それが暗黒物質であればそのまま人体の形成中に別の遺伝物質・元素が入り混じるため、記憶したての人工生命体であるライズのような者にとって、情報量が多すぎるという話になってしまうと、研究者は危惧していた。
―――しかもその異変は、この宙域内だけではなかった――――。
<<<インシュビ―よ、蘇るがいい>>>
<<<アスラゲージよ、我等が魔王よ>>>
<<<覇王と一体となれ>>>
――惑星プローメル――
その頃、研究メンバーのリーダー、テイルと総長、黒木は新人メンバーであるミヘルの様子を見守っていた。それは子供をあやす態度で子育てをしている小さな母親像である。
「ほらほら~ミルクですよぉ~」
「慣れたな・・・」
「ああ、」
「はぁ~い、お母さんのおっぱいが欲しいんですねぇ?」
「自らお母さんと言っているなぁ~」
「保育係に向いて居そうだ・・・」
「あなたのお名前、決めましょうか?」
「なぁ、赤ちゃんなのに名前決めるのって、この時期だったか?」
「下手に決めるのは最後だと言っていたな」
「だが、それは人工生命体として生まれ変わった場合だったよな?」
「そうだ。だから被検体ナンバーを決めて、そこから名前を決めるというよ」
「じゃぁ、あなたの名前は、光り輝く強さ、インシュビ―なんてどぉう?」
―キサマ、何故その名を知っている?―
「へ・・・?」
―――
――暗黒惑星――
暗黒宇宙物質として漂流する、遠き遥かな惑星のそれぞれに闇の軌道がもたらされた。そこには神よりも太陽と闇の境目に光る虹を崇める集団が列を成していた。そこには別の生命が宿る事を信仰されており、異なる遥かなる世界線から異動したモノを受入れる準備が出来ていた。
そう、異変でいう「喜びと希望」に歓喜している様子である。
意志として。
<<<呼ばれた。その名が>>>
<<<魔王アスラゲージがそこへと向かう>>>
<<<覇王インシュビ―が蘇ったぞ>>>
―往け、そして交われ―




