Rp4、命がけの攻防
異界からの訪問者が現れた。それは、「闇」と呼ばれるモノである。
名を多様なる、氏を次元として、「多元なる門限」とした。
「また、検出しないと・・・」
「エネルギー体だけでいいから、無理はするな?」
「OK」
――――この泉の様に湧く、ライト・オブ・ホールとダーク・オブ・ホールの中から稀に闇の魔王集団、星々の銀河、人類、機械生命文明などが存在する様な遺伝子が付着している。しかし物質や液体、素因なる原子すら吸い込むブラックホールには近寄らない事にしている。
彼等、人類は各ホールへと艦隊を寄せて尚も小型ロボットを操縦し、艦のハッチから近付いてゆくのだった。
そのエネルギー体を抽出する為のブラックボックスをクローアームに取り着けて、アームのワイヤーからボックスの装置を扱い、そして遺伝子を吸収すると、そのまま艦へと返ってゆくのだった――。
「しかし、この微少のエネルギー体だけで、大幅に増幅させる推進装置を研究ラボで扱うとなると、相当な研究員と実験装置が必要になるんじゃないのかな?」
「もう、人工生命体と機械生命体が合同作業をしているから、新たな生命体で活用しているとか、色んな出来事が起きているんだ。俺達はまず、その仕事の補助を任されているからな」
――――――――
身の安全を確保し、大型にも膨らむ各ホールの遺伝子エネルギーだけを抽出するのは、相当以上の訓練が必要になる。
まず、極小糸を使った内視鏡ロボを操縦する事から、一般的な機械操作、操縦技術、学術技能を取得していなければ、その門にさえ弾かれてしまう。
そうならない様に、的確かつ、内容を絞っての試験を行う事になって居た。
そこから身体能力のテストを受け、微細生物なる細胞を検出すると、そのまま遺伝子ボックスへと入れられて培養。
その後、新型生命体の実用実験になるという形式を研究ラボで取り入れている。
「よう、兄弟。また俺達と一緒になるのか?」
「俺だろ?お前と同じ兄弟、生命体だぜ?記憶も充分受け継いでいるし、同じ作業も出来るから心配無用だ!」
「じゃぁ、ミルコーヒーでも飲もうぜ!」
「俺達の好みも同じで良かったよ・・・」
―――そんな時だった!
“ゴウウ――ゥン、ガタガタガタガタ・・・ドンッ!”
「なんだ!この、揺れはァ!?」
「アンノウン、未確認飛球生物ッ!!」
「艦長!これは・・・ッ」
「異次元からの来訪者・・・アスラゲージだッ!!」
“ヒュオオ――ォォ――――ォン”
耳が切り裂かれる様な、強い超音波。何かがこちらへとやって来ると言って操縦デッキに居る艦内全員、各艦隊全員が声を轟かせている。
その姿を黙って見ている訳ではなく、何かに怯えているような壮観なる景色を唯、見ているしかなかったのである。砲身を構えるよりも先に接近してくる為である。
“びゅあおおおお―――ォォ―――ォ――・・・”
―――声か、音か、聞き分けが出来なかった―――。
翻訳回線を繋いでも全く応答もせず、解答さえ無かったのだ――――。
人類全体が震える様な言葉・音・電波・風、全てが否応なく、ようやく砲身を構える事が出来るのだった。“直ちに撃て”と艦長が叫んでいたのに、そのキャノン砲さえ届かない。対エネミー索敵エネルギーでさえ通り抜けてしまう程の速度。
それ等を一気に駆け巡るとアスラゲージはそのまま、全艦隊を飲み込む渦を発生させていた。
「がぁ・・・ァ・・ごキャアァァ―――」
「我々と同じ声の悲鳴を上げている。もしかすると、コレは人類と同じ遺伝粒子が絡んでいるのかもッ?」
<<<お“い”お前達よ・・・我の声が聞こえるな?>>>
「艦長!アスラゲージが言葉を脳にッ!?」
「むぐぅ、何という苦痛だッ!!?」
「回線ショートダウン、脳波にダメージあり!!!」
<<<その技術を黙って提供しろ>>>
「脳梁波に語りかけている・・・何という傲慢さ、何という気流ゥッ!!」
砲身を向けても何ら反応しなかった。キャノン砲を一方でも浴びせれば、即座に反撃してくるだろう、と誰もが感じていた。
それは物理的ではない、超音波にも近い態度でだ。しかも艦隊全体が揺れ動くように渦に引き込まれそうになった。
<<<サンシャインを覚えているか?>>>
「・・・揺れる・・・宇宙・・・」
「・・・零の世界線・・・」
<<<お前達の祖先だ。このような文明では叶わぬだろう>>>
――――
この世界線は永続的に捻じ曲げられており深き森のごとくやがて各ホールへ変容を遂げてゆくのだった。
だからこそ、人類は祖先にすら耳を傾けず、ただ本を読み漁る事しか出来なかったのである。
そうして文明は発展を遂げていったのに、この宇宙に出た途端、別次元からの脅威に晒されるだけであった。
それに対抗するように、「我等も」と声を挙げ知を付けて宇宙へと出て行き、各惑星との生命体との共闘で人工と機械の融合を果たしていき、こうして戦闘区域だとして今、この場に存在するのであった。それがまるで動けないで居た!
<<<近い内に次元規模の生命が辿り着くだろう>>>
艦隊はその音声を脳に刻まれた。その音声を通じて技術は提供したのである。まるで、各ホールからやってくる遺伝子を「返せ」と言わんばかりの勢いで、即座に去っていった。
その空域の渦は直ぐに消え去り、艦隊全員・全人類の脅威は去っていったかのように感じられた。
――ヘル・・・
「はい?」
「ミヘル、異常は・・・?」
「何だか、随分と眠っていたような気がします・・・」
「そうか・・・しかしどうも空域が歪められた痕跡が残っている。注意しろ、新米よ」
誰もが予想だにしない事が、目前に起きる時がもう間もなくやって来ることを予言していたのが、アスラゲージの“近い内に”という語源であった。
それは、畏怖の“預言書”から降って来た紙切れそのものと同等だった。
行間=交戦中の恐怖感を出してみました。
※アスラゲージはサンシャインと同等の存在です。




