Rp3、残骸
戦闘区域は無残にも残骸だらけで、一部の艦隊から救難信号が送られ、小型救助船の中にクルー達が乗っている。それ等を助けるのがライズの役目でもあった。イラ・ウーズの宇宙区域をよく見ると、ライト・オブ・ホールだけでなく、あちこちにダーク・オブ・ホールらしき束が飛び交っている。
他にも星や、むき出しの大地、自然で形成されている様な形状のものも散らばっていた。
――――――
戦闘で与えるのは超自然界から産まれた化学物質によって、科学者・研究者等が抽出したエネルギー、電子分解体である。
それ等を各艦隊のエネルギー源として活用し、推進剤或いは、砲撃用のエネルギーとして用いる。当然、探知ミサイルや、光学エネルギーミサイルにも搭載されているチップや燃料、それに形状変化をも与える迎撃用の液体として入れられている。
その範囲はたかが知れているが、
直径400キロメートルまで届く”ロングカノン砲”として
内側から発射されるのだ。
◇
「この時も宇宙に俺達艦隊の残骸・・・それに、敵側の物体が流れている・・・俺達は何故、次元間戦争なんかを始めたのだろう・・・」
この宙域には、小型ロボで移動する事が在る。それは珍しい物質やエネルギー体が存在しないかどうかを確かめる為だが、艦体の修理用としても活用している。
それでも突如として戦闘に巻き込まれるが、その場合は同じ推進剤を使用して艦内ドッグへと隠れたりもする。時として、それが当たり前の様に熔解する事すらある。人ごと・・・。
「幾ら、生命が宇宙の頂きに存在して居たか・・・惑星さえも溶かすようなエネルギーで物理的破壊を与える軌道ミサイルなんて搭載したところで、生命が生き永らえる道理など・・・」
――惑星コアロックでの研究ラボでは生命理論に基づく研究が成されている――。
それは戦闘で失った体の一部や存在そのものをコピーし、電脳的な生体本能を与える事で同様の人物・生物を蘇らせるというテクノロジー。それ等によって亡くなったとしても即、蘇らせる事の出来るような時代・・・。
幾ら費やしても次元から現れる者同士が手を取り合う事など、いつの事か、と胸を高鳴らせる者もいた。
「あまり艦体デッキの方に上がるのはよせよ?いつ飛来する物体に艦体が傷付けられるか分かったものじゃない。そこは薄い壁だからな」
「はぁ・・・幾ら硬度と粘度を組み合わせたとしても、エネルギーに変換すれば只の液体・・・自分らしさを失って尚、新たな自分を受入れるなんて、嫌だよ・・・」
―――ライズも同じような苦悩を抱えていた。
確かに同じ生命だとしても記憶の無い自分は、どこからやってきたのかすら理解する方法も無い。なぜ、自分は生き残っているのかすら分からない。どこかのホールエネルギーから現れたのかも知れない悩みが常に付きまとう。
だから医療チームに検査されて、研究チームの被検体の様な扱いを受けるのかと思えば、ミヘルに想いを募らせる事さえ出来ている。
本当は、教伝に在るような“大いなる意志”によって生かされているのかも知れないと、考えてしまう次第である。
――――
「戦闘後で良かったよ。今頃戦闘なら俺達は生きて居られないからな・・・運が良くても体の一部が破損していて、また作り直される・・・そんな時代なんだよな・・・」
「・・・空しいと・・・?」
「あぁ、空しいね・・・自分らしさを再び蘇らせるというのは、受け入れがたいんだよ」
ホールエネルギーの中から時折、人工生命体と機械生命体という遺伝物質が飛来する事が在り、その事で研究チームが別の惑星へと飛ばされ、異次元のモノが育たないかどうかを是非とも味わってほしい等と、指示を受けるという、生をも食らうような実験が繰返されてきた。
それも若い人材に任せようというのは、その物質から得られそうなエネルギー体として融合して来るように言われているのと同じ違和感を持つ者も少なくはない。
◆
―惑星プローメル―
「ミヘル、そっと・・・そ――っと割るんだぞ?そのスーツが守ってくれるから心配する事も無く割ってくれッ」
「ええ~~っ?き、聞えませ~ん・・・よいしょ、」
“パリンッ”
「上手くいったな。あとは異変が起きないか、様子を観察するだけだ。光子メモは取っておいてくれ」
「了解した・・・さてと、ミヘル・・・異変は感じられたかな?」
「そんな直ぐには・・・でも、匂いがする・・・なに?甘い?」
「ん?・・・甘いな・・・焼き菓子と違う甘さだ・・・ハーブ?」
“シュウウゥ―――”
「炭酸ガスと似ている。これだと温泉みたくなるな・・・」
「え?空気が無いのだぞ?・・・なのに、温泉・・・だと??」
―――――
周辺の岩、砂、土が溶ける様に混じり合う。
研究チームメンバー達はその異様さに戸惑いを隠せなくなっていた。
(ライズ・・・どうしよう・・・変な事になっちゃったよ・・・)
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