Rp2、畏怖から現る!
「全砲身、超距離パルスアンジェクター装置開け!」
「敵艦、照準合わせ!」
「撃ッッてぇェエ―――!!」
歪み、切れ目、宇宙の波。多様な風上のように宇宙は眩き閃光を放つ。ここは畏怖の世界線から来たライト・オブ・バーストの影響で様々な次元変容が漂う。
“グオオオ――・・・ォ―・・・ン”
伝記に在るように、宇宙空間と云えど、その空気と気流の擦りあう音が鳴るのを確認できる。
それは宇宙の汽笛というものか、戦艦隊同士の合図のレーザー送信音は、空しく響くのである。各砲身を整備すると、艦隊の中身を一斉に掃除し出す艦内のクルーたち。掃除をするといっても、小型メカへ指示を出し、コールフォンで確認をする。
無論、手作業だってある。何時、戦闘になるか分からないからだ。
――――
「艦長ッ、異物体の飛来によりモニターには、多くのブルーサインが点在します。これは救難信号にも似た・・・ッ」
「デタラメだ!―――それはレッドサインが変換されたのだ―――ッ」
ロックオンする前にその異物体が艦体へ傷を付けてくる。瞬く間に沈壊してゆく戦艦もあり、救難信号と見紛う、そのサインによってオールコスモス艦体は、ほぼ全滅していた。残る艦体もそこから来る飛来物によって被弾らしい、状態となり、他の艦隊へ救護班を送る様にと、サインしなければならなかった。それほど救護船が損壊した艦体からやってくるので、アンカーを使って牽引するのも苦労する。
「おい、ライズ、こちらの艦隊にも救難信号がやってきた。イエローサインだが、向かってくれるな?」
「了解!」
だが、ライズ・インバルスはミヘル・ブレトーナの名前を呼び続ける。愛おしいながらも自分自身も戦闘区域の中に巻き込まれるかも知れないと感じながら、彼女の名前を呼ぶのだった。今頃、彼女自身が惑星プローメルに派遣されているとは知らずに・・・。
「ミヘル・・・」
宇宙イラ・ウーズで生まれたにもかかわらず、彼には記憶が無い。何故、そのような事が起きていたのか分からずに戦闘に巻き込まれる形でなく、自ら志願し隊の中へと身を寄せていたのか、それすらも記憶にない。
それでも周りと動いている内に、その身体記憶能力が彼を呼び起こす様にもなるので、医療チームでは“未知数”として黙認している。
「大丈夫かな・・・旅行・・・」
彼は一体、何処から現れたのだろうか・・・と。
◇
―――その一方で―――、
惑星プローメルに試験試用のカプセルが泳ぐような反応を示していた。それは生物としての感覚か、それとも異次元からの調達するエネルギーのせいか、何れも分からぬまま研究と実験が成されようとしている。そこから新たなるエネルギー体を確認できるかも知れないからとして、生命学者から『どうか、巻き込まれてくれ』と一通のメッセージと共に依頼をされている。
「ミヘルゥ――お前その試験管ン―――割るなよォォ――ッ?」
「だから声が大きいんですってば!分かっていますよ・・・もォ~う、よいしょっと・・・あっ!?」
“ガチャ――――ン”
試験管の数本が落ちて割れた。つまり重力的に普通の惑星と同じで、無重力では無いという事だ。それを気付かずに降りて来た人類たち。
研究チームとしてやって来たのはいいが、未知なる生物との遭遇を感知したように、武装類は所持するよう命じられていた。
だが、問題はそこではなく、その試験管が割れた事に在る。
「スーツを着て居てよかった・・・リーダーにバレないかなぁ・・・?」
「おい!・・・割っただろ??」
「ひいっ、わ・・・わたし・・・」
「それ、ローとブローサインの点眼液と同じ原理で出来ているんだ。もう一方の試験管は割らない様にベルトに固定しているだろ?驚くことはない・・・」
「あ・・・はい、根黒総長・・・」
危うく事態は一変するところだった。それでもミヘルは新米研究所のチームメンバーで放っておくと何をするか、分からない根黒はそれを温かく見守ってくれていた。彼女にとっては“親代わり”も同然の存在だからだ。
――――
「・・・おい、ミヘル・・・あれ程、割るなと教えといただろ?・・・確かに、オレ達は研究ラボから命令が下っている。その内のメンバーではあるが、同じチームでもある・・・。注意しろよ・・・」
「あ、はい・・・」
(ライズ、今頃は仕事をして居る頃かなぁ?)
我が身よりも、自らを愛してくれている人を心想いにする彼女は、今は遠き惑星に住んで居る両親の事などよりも、今ここで働いてくれているチームメンバーとしての役割の方が大事だと感じていた。それにライズ自身も同じ艦体のレベルで動いている。そう思うと何故かペンダントの片割れを眺めてしまう。
「よいしょ・・・っと」
(戦闘区域に飛ばされていなければいいけど・・・)
―――それが、畏怖なる遺伝物質とも知らずに。




