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あなたに捧げる愛はもうありません。  作者: 神宮寺 あおい


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出資者との面会

「出資者の件でミラベルに会って欲しい人がいる」


 アルバートがそう言い出したのはキリアンと久しぶりに再会してから数日後だった。


「会って欲しい人?」

「ああ。前に出資者に関して心当たりがあると言っていただろう? その相手と会うことになった」


 アルバートの言葉に、ミラベルの脳裏に提案制度の話をした時のことが蘇る。たしか彼は出資者に関して一旦預かると言っていた。


「どなたかが協力してくれることになったのかしら?」

「ああ、そうだ。そして相手の出した条件が、計画の発案者であるミラベルとの面会。直接会って話を聞きたいそうだ」


 計画に対して出資するともなれば関係は継続的に続く。また、それなりの金額を出してもらうことになるのだから、会った上で説明をする必要があることをミラベルも理解していた。


「わかったわ。会う日にちとかは決まっているの?」

「なるべく早く会いたいと言っていたな」


 ミラベルとしても少しでも早く会えるのならそれに越したことはない。早く会えればその分早めに計画を進めることができるからだ。


「私はいつでもいいわ」

「俺も同席することになる。日にちはこちらで決めてもいいか?」

「もちろんよ」

「わかった」


 ミラベルの了解を得てアルバートはすぐに相手へと連絡した。程なくして返信が届き、面会は一週間後に設定される。


(いったいなぜ賛同してくれたのかしら?)


 そんなミラベルの疑問は、相手が誰なのかわかった時に解消されることになる。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「ここは……!」


その邸宅を目にしてミラベルは思わず驚きの声を上げた。いや、邸宅に着く前、目的地がわかった時点で誰が出資者なのか気づいてはいたのだけど。


「アルバート、本当に彼が?」


 そう聞いてしまったのはミラベルがその人に対して負い目を感じているからだ。自分のしてしまったことを考えれば、彼がミラベルの計画に協力してくれるとは信じ難い。


「心配することはないよ」


 ミラベルの心情がわかったのかアルバートがそう答える。


 邸宅はその区域でも一際広い面積を誇っていた。しっかりとした石造の塀が続く道を進むと見上げるほどの高さの鉄でできた門扉が見えてくる。その門扉の両側に来客を確認する門番が立っていた。


「アルバート商会のテオ・アルバートだ。当主への取り次ぎをお願いしたい」


 アルバートの言葉に門番がすんなりと門扉を開いた。本来であればたとえ先触れを出していたとしても一旦は家令や執事へと確認が入るものだ。それもなしに通過を許されるということは、それだけ信用されているということだろう。


「今日の相手が誰なのか事前に知らせなかったのは悪かった。しかし、伝えていたらいたでミラベルは気にするだろう?」

「それは……そうね」


 アルバートの言う通りだ。相手が誰なのか、もし事前に知っていたらミラベルはそのことをずっと気にし続けていたに違いない。それがわかるくらいにアルバートはミラベルの性格を熟知している。


 ミラベルはアルバートにエスコートされるまま邸宅の玄関で馬車を降りた。視線を上げれば開けられた玄関の向こう、見慣れた顔が待っている。


「……お久しぶりね」


 どんな顔をすればいいのか……そう思いながら投げかけた言葉に相手が優しい笑顔で答えてくれた。


「ご無沙汰しております。お元気そうで」


 黒のモーニングに身を包んだ家令はそう言うと丁寧にお辞儀をする。以前と変わらないその姿勢にミラベルは何かが胸に込み上げてきそうだった。最後に会った時から何ヶ月経っただろうか。一年には満たないとはいえ、その間にミラベルの置かれている状況は大きく変わっていた。


「ヒュラス卿と約束をしているのだが」


 そんな二人を見つめながらアルバートが用件を切り出す。家令はアルバートに向き直ると邸宅の奥へと手を向けながら言った。


「承知しております。ご案内いたしますのでこちらへどうぞ」


 ミラベルにとってここは懐かしい場所だ。どこに何の部屋があるかもわかっている。案内されずとも応接室に向かうこともできるだろう。

 そんなことを思いながらアルバートと共に家令の後についていった。


 コンコン。


「ご主人さま、アルバート商会の方がいらっしゃいました」

「入ってもらってくれ」


 聞こえてきた声はミラベルにとって耳慣れた声だ。顔を合わせた時に相手はどんな表情をするのか。そんなことを思いながら、ミラベルはゆっくりと扉が開かれるのを見つめていた。

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


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