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あなたに捧げる愛はもうありません。  作者: 神宮寺 あおい@受賞&書籍化


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大事なことは

「計画を進めるに当たってすべての資金を商会から出すとなるとやはり資金面での不安が募るわ。それはアルバートが指摘した通りだと思うの」

「それでもやる意味があるのだろう?」

「もちろんよ。いずれ黒字になると信じているもの。でもそれがいつになるかはわからない」


 もし長い間赤字のままであれば商会としてはじわじわと響く打撃だ。たとえアルバートが許してくれたとしても、そうなってしまったらミラベルは自分で自分が許せないだろう。


「だから、出資者を募集するのはどうかしら?」

「出資者? 寄付ではなくて?」


 一般的に貴族は様々な場面で寄付を行う。慈善事業であれば教会や孤児院への寄付が多いだろうか。他にも目をかけている若手へ支援したりするのも同様だ。そして今回の提案は多くの貴族の目には慈善事業のように映るだろう。もし寄付を求めれば人によっては応えてくれるかもしれない。

 でも、ミラベルは寄付に頼る気はなかった。


「寄付では継続的な資金源として不安定でしょう? それに、この提案に賛成してくれる男性は少ないと思うわ」


 寄付先を決めているのは基本的に男性だ。ミラベルの計画は彼らにしてみれば喜ばしいと思う内容ではない。


「だから、寄付をあてにするのではなくて最初から仕事として考えてくれる相手を探した方が良いと思うの。私情に流されることなく事業として考える相手であれば、利益が出るかどうかが大事になってくるはずよ」

「なるほどな。しかし出資者が表れない可能性もあるぞ?」

「そうよね。その可能性も考えておかないといけないわね」

「ふむ……」


 ミラベルの言葉にアルバートがつかの間黙り込む。


(いったい今あの頭の中で何を考えているのかしら?)


 アルバートが黙り込んでいる時は何か考えごとをしていることが多い。特に書類や壁など、一点を見つめながら黙っている時は特にそうだ。そういう時は話しかけても生返事が返ってくる。


 そのことに気づいてからミラベルは考え事をしているアルバートには話しかけないようにしてきた。そして彼が考えをまとめるのを待つのだ。


(それにしても、いつ見ても綺麗な顔ね)


 ミラベルはふとそう思った。

 常日頃は身にまとっている雰囲気や口から出る言葉、金茶色に輝く瞳の印象が強いアルバートだが、その実とても整った顔をしている。本人はあまり自身の容姿に頓着していないが学生時代もアルバートに憧れていた学園生は多かった。思えばいつも近くにいることでパメラと共に妬まれたものだ。


 そんなことを思っていたらアルバートの視線が動いでミラベルと目を合わせる。


「出資者に関しては一旦俺が預かってもいいか? 少し心当たりがある」

「でもアルバートに頼ってしまっては提案制度のルール違反なのでは?」

「キリアンを説得できたらとの条件はつけたが、この案件はすでに採用扱いだ。であれば商会としての仕事になる。当然、俺が協力しても問題ないだろう?」

 

 ニヤリと笑ってアルバートがそう言った。


 ミラベルとしてはありがたい申し出ではあるが裁定が甘くはないだろうか。

 心配になってそう言おうと思い小さく開いた口は、しかし何の言葉も発することなく閉じられる。


(今はアルバートに頼ったとしても、この計画を進めることが肝心だわ)


 たとえ周囲から甘やかされていると思われてもミラベルはどうしてもこの企画に挑戦したかった。


「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうわね」

「もしウダウダ言うようだったら強制的に進めてしまうところだったさ」


 少し逡巡した後にそう答えたミラベルにアルバートが軽口をたたく。


「そんなことしないでしょう?」

「どうだかな」


 続くやり取りはいつも通りの二人だ。

 そうやってミラベルはアルバートと共にその後の計画を立てたのだった。

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


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