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4 お忍び②

「美味しー!」


リシャールのお勧めは、フィッシュフライのホットサンドだった。フワフワのタルタルソースにトロトロのチーズが掛かっているけど、レモンのような爽やかな後味で食べやすくて美味しい。


「西領に流れる川にはミネラルが多く含まれていて、色んな魚が生息しているので、魚料理が有名なんです」


確かに、離宮での食事にも必ず魚料理が出る。日本と同じ様な物もあれば、初めて口にする様な物まであったけど、どれもこれも美味しかった。刺し身もあって驚いたけど、新鮮な魚がいつでも手に入るのなら納得だ。異世界で刺し身やカルパッチョ擬きが食べられるとは思わなかった。


「なので、魚料理目当ての観光が盛んだったりもします」

「あぁ、だから竜人以外の人もそれなりに居るんだね」


街に降りて分かった事。竜人以外の人達が結構居る事。商業施設の近くにホテルが多い事。


「西領は、観光業で潤ってるんだね」

「そうです。西領は比較的気温も温暖な領で、年通で見ても税収に大きな変動がないので、安定していると言えます」


温泉は無いようで、それは残念だ。後は、果物農業が盛んなようで、デザート系も竜王国一を誇る程の種類があり、デザート食べ放題のお店も多いそうだ。


ー少し落ち着いたら行ってみたいなぁー


それからも、リシャールに案内されながら街を見て回った。






結果、少し前迄は魔獣や魔物が現れていたけど、綻びが無くなり、ここ数ヶ月は現れる事は無いそうで、今のところは特に大きな問題は無いようだ。


「まだ時間があるから、服でも見に行きたいんだけど、お勧めのお店はある?」

「案内します」

「お願いね」


と言って、リシャールが案内してくれたお店は、貴族御用達の立派なお店だった。因みに、私は東領から旅行で来た子爵令嬢“マリアーヌ”と言う設定だ。


「私は外で待っているので、マシロ様だけで─」

「駄目よ、リシャールも一緒に来て」

「でも───」

「拒否権は無いから」


と、私は渋るリシャールの背中を押しながらその店へと入った。




『ペットの入店はお断りしています』


と言われた為、(キース)は外での待機となり、私とリシャールとカイルスさんの3人で入店した。

リシャールは、フードを被って静かにしている。


「どんな服を希望ですか?」

「普段着を何着か買おうかなと。できれば、動きやすい物が良いかな」

「なら、こちらに──」


貴族御用達とあって、良い素材が使われているのが分かる。値段はそれなりだけど、デザインも豊富で3着程買う事にした。


「今日の観光案内のお礼に、リシャールにも服を──」

()()()()()……ですか?」

「え?そうだけど、何か?」


今迄ニコニコしていた定員が、“リシャール”と耳にした途端笑顔を無くし、後ろに静かに控えていたリシャールに視線を向けた後、再び私へと視線を戻した。


「貴方は、そこのリシャールの知り合いですか?」

「そうです。だから、リシャールに観光案内をしてもらっているんです」

「そうですか……それなら、残念ですが、この店の物を貴方やリシャールに売る事はできません。お引き取りを……」

「はい?」

「………」


定員は笑う事無く、私の選んだ服を片付け始めた。その様子を見て反応したのはカイルスさん。そのカイルスさんが動き出す前に、軽く手を上げて動きを止めた。


「何故ですか?」

「何故?あぁ、そうでした、貴方は観光客(他所者)だから知らないかもしれませんが、そのリシャールは犯罪者の子供なんですよ」

「犯罪者の子供?」

「そのくせ、罰も受けずにのうのうと生き残り、更には上に媚びへつらったのか、守護竜様を誑かして領地運営にも首を突っ込んでいるんですよ。そんな人や関係者に、我が店の物は何一つとして売る物はありません」


ー貴族御用達が聞いて呆れるー


先ず、観光客で潤っている領で商業を展開している人が観光客を“他所者”呼ばわりするのはアウトだよね?

それと、確かにリシャールは犯罪者の子供だけど、リシャールが償わなければならない罪は無い。被害者の私達が必要無いと言っているのに、全く関係の無い人がリシャールに罪を償わせようとするのはおかしい。勿論、リシャールは何も反論しない。


ーだから、外で待つと言っていたのかー


それと、新しい服を買った様子が無いのも、これが理由だったんだろう。貴族御用達の店でこの対応なのだから、他の店でもこんな感じなんだろう。


「分かりました。私も、こんな店の物は要りません」

「なっ……ふんっ。流石は犯罪者の知り合いですね」


ユラッと、カイルスさんの雰囲気が変わったのが分かったが、定員は全く気付いていない。


「さあ、早く出て行って下さい。出入り口は、お分かりでしょう?」

「おま───」

「カイルスさん、リシャール、直ぐに出ましょう!」


私は慌てて、カイルスさんの背中を押しながら店を出た。





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