46 双子
*キース視点*
竜人に双子が生まれる事は滅多にない。
でも、鷲獣人の場合は双子が生まれる事もある。
マシロ様が生んだのは、双子の鷲獣人だった。それも、黒色と白色の男女の双子だった。
黒色の鷲獣人エレ様。マシロ様そっくりの可愛い女の子。
白色の鷲獣人セフィド様。カイルス様そっくりだけど可愛い男の子。
「双子が可愛過ぎる!!」
「本当にキースはブレないな」
「本当に可愛いけどね」
エレ様とセフィド様の寝姿を見ながらニマニマしていると、アルマン様とマイラ様がやって来た。
「今日は初めての飛行練習だったから、疲れたでしょうね。よく寝てるわね」
そう。獣人は種族によって異なるが、3歳から5歳位で獣化する。この2人も、先月の3歳の誕生日を迎えてすぐに獣化した。
『竜の私より、隼のキースの方が2人と近いし、キースなら上手に教えてくれると思うから』
と、マシロ様から2人の飛行の練習をお願いされ、今日は飛行の練習をしていた。勿論、初日から上手く飛行する事は難しい。双子も、翼を羽ばたかせるのもやっとて、練習をしていた庭園の芝生の上をコロコロと転がって笑っていた。
ー可愛かった!!ー
翼を羽ばたかせているのに浮上せず、地面に一回転。何が起こったか分からずのキョトン顔─からの大笑い─する可愛い鷲が2羽。デレずに居られる筈が無い。側で見ていたマシロ様もずっと笑っていた。
そんな状態が暫く続いた後、エレ様が芝生の上にコロンと転がったままうとうとし始め、セフィド様もエレ様に寄り添うように寝転がってうとうとし始め、『このまま寝かせるわ』と言って、マシロ様が2人を抱き上げてベッド迄運んだ。だから、今の2人は鷲のままで眠っている。
そして、そのタイミングで竜王陛下からの先触れがあり、マシロ様は、今からこの離宮にやって来る竜王陛下の迎え入れの準備をしている。
「竜王陛下も、2人を前にすると“ただのお祖父ちゃん”ですよね」
本当に。あの竜王陛下の目があんなにもデレデレになるとは、誰が予想できただろうか?レナルド様と一緒になると、“孫自慢”が凄まじい。双子も竜王陛下には懐いているから問題無いけど、鳥人で黒竜の圧をものともしないのは、流石はユマ様の孫でマシロ様の子だなと思う。鳥人の子供が黒竜に懐くなんて、聞いた事は無い。だから、竜王陛下も双子が更に可愛く見えるのかもしれない。
「今日は、ユマ様とレナルド様も来る予定だから、夜は宴会になりそうだな」
「料理長が張り切ってました」
毎週末、ユマ様とレナルド様は泊まり掛けで離宮にやって来ては、双子の孫を構い倒している。
ちなみに、リシャールさんとメイさんには、まだ子は生まれていない。竜人と人間だから、やはり子供は出来難いんだろう。それでも、あの2人はとても仲が良い。今でも週に1日は離宮に報告を兼ねてやって来て、双子を構い倒してから帰って行くのが、2人のルーティンだ。双子の存在が、皆との繋がりを強くしているんだなと思う。
「エレ様もセフィド様もそろそろ目が覚めそうだし、竜王陛下もそろそろ来る頃だろうから、お茶の用意をして来ます」
「それじゃあ、私が2人を見ておくわ」
と、双子の事はマイラ様に任せて、俺とアルマン様は竜王陛下を迎える準備に向かった。
******
「じーじ、まほー、きれいね」
と、エレ様が言うと、レナルド様は更に魔法を駆使して双子の喜びそうな物を発現していく。簡単に見えて複雑な魔法を展開するのだ。分かる人が見ると、如何にレナルド様が凄い魔道士なのかがよく分かる。だからだろう、そんなレナルド様を、ユマ様と竜王陛下は面白そうに笑って見ている。
離宮内では、双子と遊ぶのはレナルド様だけど、室内遊びが一段落すると、次は竜王陛下の出番になる。
「りゅーおーさま、とぶ、いい?」
「りゅーおーさま、ぼくも!」
「ああ、任せろ」
双子がお願いすると、竜王陛下が双子を抱き抱えて外へ行き、竜化した陛下が双子を手で包み込んで上空へと飛び立つ。“空中散歩”だ。この散歩は双子の大好きな遊びの一つ。マシロ様ともよく空中散歩をしている。
ー俺もしたかったー
こればっかりは仕方無い。隼の俺には、どう頑張っても2羽の鷲を抱える事はできない。
そして、勿論、マシロ様の今の野望は、“双子を背負って飛行する”事。
「主の野望が、相変わらず可愛い!」
「キース、お前もそろそろ伴侶を見付けた方が良いぞ?」
と、カイルス様に真剣に心配された。でも、側衛は基本そんなものなのだ。主以外に興味が無いのだ。俺は、マシロ様と双子の幸せを見ているだけで満足なのだ。
空中散歩が終わると、次はユマ様が双子と一緒にお風呂に入る。
「ばーば、しゃぼんだま、つくる」
「つくるー」
「任せなさい!今日は金色のシャボン玉を作るわよ!」
「「きんいろー!」」
シャボン玉を作るのに、聖力を使うのは、ユマ様だけだろう。『その使い方、間違ってます』とは言えない。双子が喜んでいるなら問題無い。
そして、お風呂から出ると、今度はイネスが双子をベッドに横にならせてから絵本を読む。それを聞きながら、双子は眠りに就く。
「おやすみなさいませ」
そうして、双子の1日は終わる。
「キース、私、殆ど子育てしてないけど大丈夫?」
「全く問題ありません。竜人の子育ては、こんな感じなんだそうです」
「育児ノイローゼとか、寝不足とか経験してないよ?」
「育児ノイローゼ?」
それが何なのかは分からないけど、竜人は子供を大切にする種族で、親だけではなく、周りの大人達も一緒になって育児をするのが当たり前なのだ。
ー例外も居たけどー
「私、ちゃんと母親してる?」
「勿論です。エレ様もセフィド様も、母親のマシロ様の事が大好きですからね」
双子はいつも笑顔だけど、母親であるマシロ様に向ける笑顔は格別だ。双子が如何に母親が大好きなのかが分かる程に。
一つ心配するとすれば───
カイルス様だ。
勿論、双子は父親のカイルス様の事も大好きだし、カイルス様も双子を見る目はデレデレだ。
ただ、皆が育児をしてくれるお陰で、カイルス様とマシロ様の自由時間が増える。増えると言う事は、2人の時間が増えると言う事。2人の時間が増えると言う事は────マシロ様が、ベッドから出て来れない日が増えると言う事だ。
『3人目も有り得るかもな』
と、笑っていたのは竜王陛下だ。
竜人で子供が3人とは滅多に無い。聞いた事が無い。長寿な竜人でも、母胎に負担が掛かるから、“できて1人、驚きで2人”レベルの出産率。でも、マシロ様なら、3人目も有り得なくはない。マシロ様はあのユマ様の子で、マシロ様自身の竜力も凄いから。マシロ様が大丈夫なら、3人目が生まれても大歓迎しかない。
そんな事を笑いながら竜王陛下と話していたのは5年前だったか───
マシロ様が、3人目となる白竜の子を生み、竜王国内が祝福ムードに包まれた。




