表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/48

31 招かれざる客①

*カイルス視点*



交流会1日目は穏やかな雰囲気だった。

マシロは最初は緊張していたようだったが、参加者達と会話をしていくうちに笑顔が増え、途中からは楽しそうにしていた。

中には、マシロに息子を紹介して縁を持とうとする者や、近付こうとする騎士爵の者達が居たが、それらは尽くキースが笑顔で牽制していた。忘れがちだが、キースは一番若い上にマシロの前ではへにょへにょになっているが、獣人でありながら竜騎士になった実力者だ。本気になれば、この会場に居る若手の竜人の竜騎士よりもレベルは上だろう。そんなキースが浮かべるのが、圧の掛かった笑顔だ。若手の騎士や普通の貴族にはよく効いている。キースは、自分が守護竜の側衛だとは知らないうちから、自分や親すらも竜人だと知らなかったマシロに執着していた。マシロとキースが主従関係になってから、2人は2人だけの絆で結ばれているのが分かる。不思議な事に、そんな2人の距離の近さに不快感は無い。寧ろ、マシロの近くにキースが居る事で安心している。守護竜と側衛の関係は、本当に不思議なものだなと思う。


だからこそ、白竜であろうがなんであろうが、本当にジャスミーヌが守護竜だと言う事は有り得ないと言える。ただただ、白竜だと言うだけで、彼女にはマシロの様な、形容し難い空気は纏っていない。騎士としても惹かれるような強さも無い。白竜で公爵となって傲慢になっただけだ。女性としての魅力も感じない。今更俺に近付いて来られても迷惑なだけだ。


『ズルズル引き伸ばしても無視しても、あの手のタイプは執拗いし調子に乗るから、さっさと片付けよう』


と、皆の意見が一致したのは有り難かった。





******



『今日中に、リシャールにこれを届けてくれる?』

『それなら、俺が届けよう。丁度、離宮に戻る予定だったから』

『それじゃあ、宜しくお願いしますね』


交流会2日目の途中で、マシロから頼み事をされ、俺は鷲になって直ぐに離宮へと向かった。



バサッ──   バサッ──


離宮に向かう者は限られている。入宮を許可された者か、招待された者しか入る事ができないからだ。だから、本来なら、今離宮に向かっているのは俺だけの筈が、俺の後ろから誰かが付いて来ている。


ー本当に、予想通りの動きをしてくれるなー


本来なら警戒して警告を出すところだが、今回はこのまま離宮へと向かう。どこまでも愚かだ。


暫く飛び続け離宮に辿り着くと、俺はまた人の姿へと戻り、そのまま離宮の門へと向かう。


「カイルス様!」

「………ハイエット公爵、何故ここに?」


ジャスミーヌ=ハイエット。俺の後を付けていた人物だ。自分が何をしでかしたのか、理解しているだろうか?


「カイルス様と話がしたいと、マシロ様にお願いしたのに全く聞き入れていただけなくて。だから、こうして追って来たの。ここでなら、2人だけでゆっくりお話ができるでしょう?」

「先ず、側衛キースから名呼びは失礼だと言われてませんでしたか?」

「あら、ごめんなさい。まだまだ幼い子だから、ついつい名呼びしてしまうの。今は本人が居ないから許して下さる?」

「次からは気を付けて下さい。そして、私はハイエット公爵と話す事は何もありませんから、このまま本宮の方にお戻り下さい」


交流会の途中て、挨拶もせずに帰る事は無礼な行いだ。許可無く離宮に踏み入った事も見逃す事はできない。


「私の裏切りを怒っているのなら謝るわ。公爵家の息子に声を掛けられたら、断る事ができなかった……分かってくれるかしら?」


謝ると言いながら、それは謝罪ではなく、ただの言い訳でしかない。


「話はそれだけですか?私からは、何も話す事はありませんから、このまま戻って下さい」

「カイルス!待って!私は、ずっとカイルスの事を──」


パシッ───


俺の手を掴もうとするジャスミーヌの手を払い除ける。


「例え公爵であっても、名前で呼ぶのは止めて欲しい。私には、もう婚約者が居るので、私に触れるのも止めて欲しい。こうして2人きりになる事も、金輪際止めて欲しい。ご理解いただけましたか?」

「婚約者……まさか………」

「そうです。公表はまだですが、マシロと婚約しました。竜王陛下と大神官の承認を得て」

「大神官!?」


普通の婚約、婚姻は竜王の許可があれば成立するが、俺とマシロの婚約には大神官の許可も出た。それは、聖女ユマ様がマシロの母親だからだ。この2人から許可を得た婚約だから、例え公爵が意義を申し立てようとも覆る事は無い。


「でも、カイルスは私の事が好きだったから、大切にしてくれてたんでしょう?婚約は…仕方無いとしても、貴族同士でお互いが良ければ、関係を持つ事は許されるでしょう?」


それはいつの時代の貴族だ?子供が出来難い竜人の貴族は、確かに妾を持つ事が当たり前の時代もあったが、今はそうではない。それが当たり前だったとしても、ジャスミーヌはお断りだし、マシロだけで良い。俺が一緒に居たいと思うのはマシロだけだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ