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2 西の離宮での日々

西の守護竜になり、西の離宮にやって来てから3ヶ月が過ぎた。この世界に来てから2年程だけど、その中でも一番の平穏な生活を送れていると思う。命の危険が無いと言うのは、本当に有り難い。思い返せば、本当に大変な2年だった。


西の離宮に来てからは、竜力の扱い方の訓練と剣術を教わる日々を過ごしている。剣術と言っても、まだ剣どころか木剣すら手にしていない。今はまだ基礎体力作りが中心だ。体力には自信があったけど、普段使わない筋肉を使う訳で、最初の頃は筋肉痛で大変だった。


『癒やしの魔法で治せるけど、治しちゃうと筋力も元に戻ってしまうからね』


そりゃそうだ。癒やしで治せば、せっかく頑張ったのに全てが無駄になる。そんな時のイネスのマッサージは気持ち良かった。訓練後にマッサージをしてもらいながら寝落ち──を毎日繰り返していた。それも、3ヶ月経った今、ようやく慣れて来て、筋肉痛も無いし寝落ちする事も無くなった。


「体力もかなりつきましたね」


と、私を褒めてくれるのは、近衛の1人“マイラ=ペラグラント”さん。


「うん。そのお陰で、飛行するのも安定して来たと思う」


竜化して飛行するのは好きだけど、どうしても直ぐに疲れてしまってフラフラになっていたけど、今ではそれなりの距離を飛行してもフラフラにはならない。


「それなら、明日、少し遠い所にでも行きますか?」

「行きたいです!!」

「それじゃあ、カイルスさんとアルマンさんと相談しておきます」


鷲獣人の“カイルス=サリアス”さん

竜人の“アルマン=サンチェス”さん


この2人も近衛だ。もともと3人とも竜王付きの竜騎士だったけど、私が西の守護竜となり西の離宮に入宮するのと同時に、西の守護竜の近衛騎士となってくれた。おまけに、この3人のエリートが私に訓練をつけてくれているのだから、本当に有り難い存在だ。


ーどっちが主なのか分からないよね?ー


と密かに思ったりしている。


「マシロ様、そろそろランチの時間です」

「はーい」


私を呼びに来たのは、側衛の“キース”。守護竜(わたし)を絶対に裏切る事の無い側近。何処に居ても私の元にやって来る、GPS機能付きのストーカーで、どんな事でも褒めてくれる側近。ある意味、私に安心を与えてくれる人だ。





「お疲れ様です」

「リシャールもお疲れ様」


食堂に入ると、そこには既にリシャールが座って居た。私の異母弟だ。両親は奪爵の上生涯幽閉となったけど、リシャールは私が後見人となって西領に連れて来た。連れて来た当初は憔悴して暗い顔をしていたけど、今は顔色も良いし明るくもなった。


リシャールは、もともとウィンストン伯爵家の嫡男として、領地運営等の教養を身につけていたようで、よくやっていると報告を受けている。20歳になるかならないかで領地運営とは、本当に貴族とは大変だなと思う。


「そう言えば、豊穣祭があるって聞いたんだけど…」

「はい。この西領では6月に豊穣祭をするので、今はその準備で町は賑やかです。私達領主側としてはバタバタで大変ですが、久し振りの守護竜の居る豊穣祭なので、皆張り切っているようです」


大変だ─と言いながら、リシャールは楽しそうに笑っている。私の前でも、よく笑顔になる事が増えた。本当は姉弟のように気安く会話をしたいところだけど、リシャールがまだ私とは距離を置いているから、それはまだまだ難しいところだ。


「マシロ様は、まだ街には降りてませんよね?」

「うん。守護竜としての勉強が大変だからね。でも、少し落ち着いて来たから、日を調整してお忍びで降りようかなって話してたところなの」


『降りる』とは文字通りだ。守護竜が住む離宮は街の上空にあるから、街に行くにはその浮き島から降りる必要がある。ここに来てから、まだ一度も街に降りた事はないから、未だに西領がどんな所なのか分からない。


「だから、街に降りる時はリシャールに案内をお願いするから、その時はよろしくね」

「分かりました」


素直に受け入れてくれて良かった。とは言え、守護竜にお願いされたら、嫌でも『嫌だ』とは言えないだけなんだろうけど。キースがリシャールを警戒していないから、嫌われてはいないと思っている。


「リシャール、何か困った事とかはない?」

「ありません。皆さん、こんな私にも優しいので…」

「何かあったら、私じゃなくても良いから遠慮せずに言ってね」

「はい、ありがとうございます」


そうして、食事が終わるとリシャールは食堂から出て行った。


「うーん……」


リシャールがそう言うのだから、今は様子をみるしかない。気付いたのは、お母さんだった。


『リシャールの新しい普段着を見た事ある?』


リシャールには、領地運営の手伝いをしてもらっているから、それ相応の給金を渡しているから、お金には困っていない筈なのに、ここに来てからもずっと数枚の同じ服しか着ていなかったのだ。




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