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19 似た者母娘

芽依さんを保護してから3ヶ月が経った。

最初の頃は数人の人としか対応ができなかったけど、今では離宮内の人であれば、普通に対応できるようになっている。そして、1ヶ月前から、この世界や国についての勉強と、共通語の勉強を始めた。翻訳機能の魔道具を着けているから、会話に困る事はないけど、読み書きは自力で覚えない限りどうにもならない。読み書きができなければ、働くどころか普通の生活にも支障が出て来る。


『働く為には、言葉を覚えないと』


レナルドさんが、元の世界に還す方法は無いのか?と調べているけど、やっぱり可能性は低いらしい。芽依さん自身も、還れないと自分で自分に言い聞かせているようだった。辛くない筈はない。私は、唯一の家族のお母さんが一緒だから、元の世界に未練は無い。勿論、バイト先の女将さんと大将さんに挨拶ができなかった事は心残りだし、最後に一度会いたかったと言う思いはあるけど。でも、芽依さんは、家族と離れ離れになってしまった。未だに、芽依さんは日本では行方不明者のままだろう。それでも、芽依さんは少しずつ明るくなって、今では庭園菜園を楽しむようになっている。おまけに、リシャールとも仲良くなったそうで、一緒に土まりれになっているそうだ。


「この離宮の人達もそうだけど、芽依ちゃんもリシャールには偏見を持ってないからね」

「リシャールは本当に良い子なのに。相変わらず偏見を持ってる人の方がおかしい」


守護竜(わたし)の弟を虐める奴は赦さない』


と、一言言えば収まるかもしれないけど、悪化する可能性もある。まぁ…偏見を持ってる人程、中途半端な貴族で、それなりの高位貴族の人達はリシャールに関しては“無関心”と言ったところだ。

リシャールに何癖をつけて来たあの衣装店は、あれ以降高位貴族からの注文が無くなったらしい。今では、男爵家や、下流の子爵家からの注文ぐらいしかないそうだ。私が何かをした訳でも、何かを下した訳でもない。


“あの店主は人を平気で見下す”

“あの店主は客を選ぶ”


何故か、色んな噂が一気に広まり、一気に顧客が減ったそうだ。それとは逆に、リシャールに感謝して服も売ってくれた衣装店は、貴族からの注文が増えたと言っていた。あの店の服は、素材は良くてデザインも良かったから、あれ以降も何度か服を買っている。芽依さんが着ている服も、そこで買ったものだ。


『スカーチョはないんですね』


の一言で、その店のデザイナーから『それは何ですか!?』と、質問攻めにあっていたけど。


「ねぇ、茉白、相談なんだけど……」

「何?」


お母さんからの相談とは珍しい─と思いながら聞いた話は、芽依さんをお母さんかレナルドさんの養子にすると言う事だった。


「私は反対しないよ。ただ、芽依さん本人の意思を優先したいけど」


芽依さんが『嫌だ』と言っても、彼女がこの世界で1人で生きて行くのは難しいだろう。出処不明な独り身の平民なんて、碌な扱いはされない。女性ともなれば、最悪、娼館で働く娼婦だ。黒色だから、また奴隷商人に狙われる可能性だってある。それが、“聖女由茉の娘”“レナルドさん(魔道士)の娘”となると、話は全く違って来る。


「でも、正直なところ、お母さんの養子は難しいんじゃないかなぁ?」

「やっぱり?」


お母さんは、ただの聖女ではなく“救国の聖女”であり、“守護竜の生母”となってしまったから、そう簡単に許可が下りるとは考えられない。例え、竜王が許可しても、他から反対されるだろうし、反対されれば竜王も強制的に許可を出す事はできない。


「やっぱり、レナルドさんの養子にするのが一番かしら?」


ー2人が結婚すれば問題無いよね?ー


とは、まだまだ言ってはいけないよね?もう、2人が一緒に居る事が当たり前になっている今日この頃。レナルドさんとお母さんが一緒に、この離宮に帰って来ても、使用人達は当たり前のように迎え入れてご飯と客室を用意している。付き合っていない──と言う方がおかしい状態だと言う事に、本人達2人だけが気付いていない。


「婚姻届、出しとこうかな?」

「茉白、何か言った?」

「何も……兎に角、またその辺りは芽依さんと話をしてみた方が良いね」


兎に角、レナルドさんが父親になると言う事と、芽依さんが妹になる事は、大歓迎です!





******



「ねぇ、キース」

「何ですか?」

「お母さんって、“一を聞いて十を知る”人なのに、何で自分の恋愛事には発揮されないのかなぁ?」

「…………」

「誰がどう見ても相思相愛じゃない?」

「…………」

「あれで『戦友だからね』って言い合ってる2人は、可愛いけどおかしいよね?」

「…………」

「勝手に婚姻届出したら、怒られるかなぁ?」

「それは怒られるでしょうね」

「うーん……焦れったい!!」


ー鏡をお持ちしましょうか?ー


とは言えない。ある意味、マシロ様の言葉は全てブーメランになっている──事に全く気付かないマシロ様は可愛いし、ユマ様の娘なのだなと思う。

同じ部屋に居るカイルス様は遠い目をしているし、アルマン様とマイラ様は笑っている。


「温かく見守りましょう」と、俺はそれだけしか言えず、マシロ様は「そうだね」と、楽しそうに笑った。





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