表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/48

9 収穫祭③

「飛行してる時も凄いなって思ってたけど、地上に立つと更に凄い人波だね」

「今年は特にだな。マシ──()()()は小さいから、はぐれないように気を付けないと」


と言って、カイルスさんにガッシリと手を繋がれている。これは(色んな意味で)有りなのか?と、キース達に視線を向けても微笑まれただけだった。カイルスさんにとっては“迷子防止の為の親子手繋ぎ”なのかもしれないけど、私は緊張して仕方が無い。それでも嬉しいなと思ってしまうのだから、握られた手を振り解くことができない自分がいる。カイルスさんには恋人も婚約者も居ないから、迷惑さえかけなければ、想う事は自由だろうと開き直る。


ー私だって恋愛はしたいー


守護竜ともなれば公平な視点を保たなければいけないけど、恋愛をしてはいけないと言う事は無い。詳しくは分からないけど、バージルさんには恋人も婚約者も奥さんも居ないけど、ローゼさんは恋愛には()()で、ニーロンさんは結婚していて子供も居るそうだ。


「ジェナ、何か甘い物を食べませんか?」


“ジェナ”とは、お忍び時の私の名前だ。“マシロ”も、この世界では珍しい名前だから、この世界に合わせた名前を作った。


「食べたい!マイラさんのお勧めはある?」

「そうですね……お勧めと言うか、東で人気のあるもちもちのドーナツが出店してるらしくて、それが気になっなます」

「もちもち!探して───」

「ジェナ、走ると危ないから」


思わず走り掛けた私の手を引いて、ポスッと改めてカイルスさんの側に引き寄せられた。


「うん!走ると危ないね!でも、この近さ、歩き難くない?」

「人が多いから、これぐらいの近さで丁度良い。護りやすいしね」

「なるほど!」


()()を兼ねているなら仕方無い。人が多い所では、護る側からすれば大変だろうから、護られる側の私も、我儘を言ってはいけない──と、私は素直にカイルスさんと距離を詰めたまま歩き出した。


「ジェナ、素直過ぎて……大丈夫ですか?」

「嫌がってないから、大丈夫じゃないかな?グイグイ行くカイルスなんて、ここでしか見られないしね」


心配するマイラに、面白そうに笑って2人を見ているアルマン。


「素直で可愛らしいのがジェナですから!」


と、安定のキースだった。




******



『少し一休みしよう』と言う事で、私とマイラさんは公園のベンチに座り、カイルスさんとアルマンさんはドリンクを買いに行ってくれた。キースは『見回りをして来ます』と言って、隼になって飛んで行った。珍しい色をした人間が居ないかどうか──


「女の竜騎士って、どれぐらい居るの?」

「竜騎士の1割程で、カイルスさんやキースさんの様な獣人の竜騎士も1割程です」

「1割!?それは……凄いね」


獣人でありながら竜騎士になるのは大変だと知っていたけど、そこまでとは思わなかったし、キースもそうだった事を忘れていたとは、キース本人には言えない。寧ろ、純粋な獣人のキースの方が、カイルスさんよりも苦労したのかもしれない。やっぱり、もともと側衛になるだけの実力を持っていたからこそ、側衛になったのかもしれない。


ー“可愛い”以外でも認めてもらえる主にならないと!ー


いや、(そもそも可愛くもないけど)可愛いだけで守護竜になった訳じゃないけど。この豊穣祭が終わると、本格的に浄化の訓練を始める予定だ。10年に1度、浄化をする為に竜王国内を巡り廻るそうだけど、この100年間していなかったから、私の訓練の成果次第で直ぐに巡り廻る事になった。それには、聖女由茉も同行予定だから、私にとっては心強い存在だ。


「私の両親は所謂政略結婚であまり夫婦仲が良くなくて、子供にもあまり興味のない人達で、そんな親の代わりに私に愛情を注いでくれたのが兄なんです。イケメンで頭も良くて優しくて何もかもが完璧で……私は顔はイマイチだし女のくせに背が高くて頭も良くなくて…でも、体力だけは自信があって、剣を持ってみたら楽しくて……竜騎士になれた時は、兄が一番喜んでくれたんです。その上、守護竜の近衛になった時は泣いて喜んでくれたんです。それが、私が一番嬉しかったんです」


まだまだ新人子竜な守護竜だけど、マイラさん達にも誇ってもらえるように頑張らないと!


「素敵なお兄さんだね。また機会があれば紹介してね」

「え!?良いんですか!?いつでも呼び出しますよ!?ありがとうございます!!」


『マ──ジェナ、大変です!!』


そこに慌てて飛んで来たのは(キース)


「キース、どうしたの?」


()()()()を着けられた女性を見付けました。アルマン様が保護しています。どうしますか?』


“あの首輪”


「勿論、そのまま保護して離宮に連れて行くように言って。マイラさんは、この事を離宮に居る守護竜に伝えて、使用人達に受け入れる準備をするように伝えて。私はどうしても飛行スピードがアルマンさんとマイラさんよりも劣るから、後からカイルスさんと一緒に離宮に帰るから」

「『承知しました』」


私が指示をすると、キースは元来た方向へ、マイラさんは竜化して空へと飛び立った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ