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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第二部

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花火大会の準備


 花火大会について相談しにレビン村の村長さんの家を訪ねた。

 村人たちは忙しく、花火なんてしている暇はないと断られることも考えられたが、それは杞憂だった。

 村長さんは丸顔をほころばせながら喜んでいる。


「花火というのがどういうものか、お話を聞いてもよくわかりません。ですが、カトリさまのことだからきっと楽しいものなのでしょう。ありがたく、お話を受けましょう。村の者には私から伝えておきます」


 元来、レビン村の人々はお祭り好きなのだ。

 娯楽が少ない田舎ということが関係あるかもしれない。

 村長さんは俺の提案にたいそう喜んでくれ、花火大会は五日後の夜に行われることとなった。


「打ち上げは当日の夜八時におこないます」

「夜の八時……」

「時間についてはうちのメーリアが伝えますので、みなさんはボッシュ湖の方角を見上げておいてください」


 メーリアは俺がプレゼントした腕時計を持っている。

 時計を合わせておけば間違いはないだろう。

 当日の段取りを決めてから、村長さんの家を出た。



 レビン村から帰ると、今度は日本へ転移した。

 花火の打ち上げにはボッシュ湖の小島を使う予定だが、そこへ渡るためのボートを購入しようと考えたのだ。

 当日までに間に合うかどうかはわからなかったが、俺とリンリは大きな釣り道具屋へやってきた。

 むかし、ここで釣り用のボートを売っているのを見たことがあったからだ。


「異世界にはなんでも売っているのですねえ……」


 リンリが感心しながら店内を見回している。

 釣り道具だけでこれだけの品ぞろいというのは、異世界人にとって驚嘆すべきことなのだろう。

 それにしたってこの店の品揃えは素晴らしいな。

 ついでに隊員たちの釣り道具も買っていくとするか。

 釣り堀天ちゃんで釣れる魚は非常に美味しく、砦のみんなもすっかり刺身が好きになった。

 料理に熱心なアインは俺より上手に刺身を引けるようになっている。

 今では義父さんのレベルに追い付こうとしているくらいだ。

 次はみんなを寿司に沼らせてみようかな?

 ご飯も気に入っているから、みんなどっぷりはまってくれるにちがいない。


「隊長、あそこにボートがありますよ」


 リンリの視線の先に釣り船が四台展示されていた。

 種類も、ゴムボート、カヤックタイプなど様々だ。

 その中で俺の目をひいたのはプラスチック素材で出来たレジャー・フィッシングボートである。


「店頭見本の販売だから特価なのか。二馬力の船外機もついているんだな」


 重量は40キログラムもないから、軽トラの荷台に一人で積み込むことも可能だろう。

 店員さんに聞いてみると、この場で受け渡しも可能とのことだった。


「よし、これを買っていくぞ」

「承知しました」


 さっそくカードで購入し、買って帰ることにした。

 梱包されたボートが台車で駐車場まで運ばれてくるとリンリは待ちきれない様子でそれに飛びついた。


「よっと!」


 女性のリンリが軽々とボートを持ち上げるのを見て店員さんはたまげている。


「パワフルな人ですね」

「彼女、格闘技をやっているんですよ」

「ああ、それで……」


 地下遺跡で鍛えている俺たちにとって、小型ボートや船外機程度ならわけもなく持ち上げられるのだ。

 隊員の中でも特にパワフルなリンリならもっと重たいものだって平気だろう。


「隊長、そっちの船外機とやらも渡してください」


 船外機を渡してやるとリンリは軽々と持ち上げ、ロープで荷台に固定していた。


「へへっ、本当は縛るより縛られる方が得意なんですけどね」

「はっ?」

「すいません、彼女は外国人なんで日本語が得意じゃないんです」

「はぁ……」

「本当なんです……」


 店員さんの視線から逃げるように俺は軽トラを発進させた。



 砦に転移して軽トラの荷台を確認すると、ボートの形状はかなり変化していた。

 いつのまにやら梱包が解け、ボートはむき出しになっている。

 形状もまるで別物になっているぞ。

 武骨で平べったい箱のような形だったのに、今やカッコいいモーターボートみたいになっている。

 それだけではない。

 ボートと船外機は別々の包みになっていたはずなのに、船外機の方が消えていたのだ。


「どこへいってしまったのでしょう? しっかり縛ったはずなんですが……」


 オロオロするリンリを安心させた。


「大丈夫だよ、リンリ。これは転移チートだ。船外機がボートに組み込まれたんだよ」


 異世界転移によってボートと船外機が合体してしまったようだ。

 結果、こちらは動力機械が組み込まれたボートになってしまったらしい。


「ファーミンを呼んでくるよ。これも鑑定してもらわないとな」


 といっても、当初はボートと船外機を別々に鑑定してもらう予定だったのだ。

 だがこれならば、一つ鑑定するだけでよくなっている。

 ファーミンの仕事が減ったのだから好都合といえば好都合だった。


 ボートの鑑定を終えたファーミンが小さなため息をついた。


「どうしてこう次から次へとアーティファクト級のモノが出現するのだ……」

「そんなにすごいのか?」

「うむ、これは魔導高速艇だ」


 なんスか、それは?


「定員は三名と少ないが、最高時速は63キロメートルらしい」


 もとは二馬力エンジンのはずなんだけど……。


「船体は軽量にして頑丈、船体重量は魔導エンジンを含めて39キログラムだ」


 素材は高密度ポリエチレンじゃなかったの?

 それに軽すぎなんだけど!

 高性能に越したことはないんだけど、変化が目まぐるしすぎて気持ちが追い付いていかない。


「イツキはこれをなんに使うつもりだ?」

「打ち上げ花火をする島へ渡るために……」

「オーバースペックもいいところだな」


 返す言葉もなかった。


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