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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第二部

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ネガティブなオートレイ


 楽しい毎日が続いていた。

 国境に異常はなく、ここのところは魔物の気配すらない。

 俺たちは畑作りや料理、異世界転移に精を出す日々だ。

 もちろん地下遺跡の探索もしている。

 砦を無人にするのはよくないので、遺跡には五人チームで入ることにした。

 二人は居残りだ。 

 滅多にないことだけど、レビン村から救援要請が来ることや、来客だって考えられるからである。

 隊員たちは少しずつレベルがあがっている。

 俺とファーミンはまだだけど、これは仕方がないだろう。

 俺たち二人は元の戦闘力が高い。

 遺跡の奥まで行って強敵を討伐すればいいかもしれないけど、隊員たちに無理をさせるわけにはいかないのだ。

 少しずつやっていけばいいと思う。

 いまのところ天空王のご褒美は見つけていないけど、それだっていずれは回収したいものだ。

 ご褒美は複数あるようなので、それを励みに頑張っている。


 本日の居残りは俺とオートレイで、他の隊員たちは地下遺跡へ行っていた。


「しっかり支えていてくれよ」

「死ぬ気で支えますので、思いっきり打ち込んでください」


『これより先、カトリ領』


 俺たちは領地の境界に看板を設置しているところだ。

 オートレイが支える杭を俺が大木槌で地面に打ち込んでいく。

 こうしておけば、ここが誰の領地かわかりやすくなるというわけだ。


「ふぅ、これでよし、と!」

「これで、ここがどこかわかるようになりましたね、隊長。あ、よく考えたら、もう隊長はおかしいです。ご領主さまか、カトリさまと呼ばないと」

「そう言われても、ピンとこないな。今まで通り隊長でいいよ。ふぅ、暑い、暑い」


 季節は夏真っ盛りで、少し運動をしただけで汗をかいてしまうくらいだ。

 俺は大木槌を傍らに置いて軍服の上を脱いでTシャツ姿になった。

 山から吹き下ろす風が汗にぬれた体をクールダウンしてくれる。


「わ、私も上を脱いで、よろしいでしょうか?」

「そんなに気を使わなくてもいいんだ。それくらい好きにすればいい」


 オートレイはいまだに他人行儀なところがある。

 というか、やたらと他人に気を使ってしまうのだろうな。

 俺の了解を取ってから、オートレイも上着を脱いだ。


「…………」


 前言撤回だ。

 他人に気を使うのなら、ダイナマイト級のボディーをこんなにも無防備に晒すはずがない。

 俺が日本で買った黒いTシャツをオートレイは着ているのだが、素肌に直接着けているのでボディーラインがこれでもかというくらい、くっきりと出てしまっている。

 しかも夏だから汗でぴったりと張り付いているのだ。

 特にオートレイは大きいからなあ……。

 それに、この世界の人はブラジャーをつけないので、もう大変なことになっているぞ。

 俺もだいぶ慣れたけど、やっぱり目のやり場に困ってしまうな。


「あ~、暑い日が続きますね……。私は暑いのが苦手でして、その、胸もお尻も大きいのでとても蒸れるんです。谷間なんて汗がたまってしまって、もうベトベトです」


 沈黙が苦手なオートレイが勢いよくしゃべりだした。

 俺が黙ってしまうと不安になるようで、いつもこんな感じで話し続けるのだ。

 いいかげん、慣れてほしいんだけどなあ。


「タオルならあるぞ。木陰で拭いてくるか?」


 汗疹あせもができてしまっては厄介だろう。

 だが、オートレイは手を振って断ってきた。


「それには及びません。私にはフンドシパワーがありますので!」


 オートレイが持っているのは緑色のフンドシである。

 そして、緑のフンドシの特殊能力は、どんなものでもきれいにしてしまうというものだ。


「ずっとフンドシをはいているのか?」

「はい、この通りです!」


 オートレイはパンツのボタンを外して緑のフンドシを見せつけてきた。


「わざわざ見せなくてもいい!」

「あ、汚くないですよ。能力を使って清潔に保っていますからね。私の服や体も同じで、手をかざせばこの通り!」


 オートレイが自分の顔を手でさすると、汗ばんだ肌がサラサラのスベスベになっていた。


「すごい能力だよなあ」

「夏場はとても便利です。どんなに汗をかいても、ひと撫ですれば臭いませんから」


 そう言いながら、オートレイはTシャツの中に手を突っ込み、腋や胸などを直接なでまわしている。

 うわ、下乳が見えたぞ!


「おい、俺の前でやらなくてもいいだろう」

「し、失礼しました。効果をご覧に入れたくてつい……」


 しょんぼりとうなだれたオートレイを慌ててフォローした。

 このこは気が弱いから、叱られるといつまでも引きずってしまうのだ。


「怒っているわけじゃないんだ。ただ、俺も男だからさ、そういうのを見せられると困るんだよ……」

「つまり、こんなブサイクな体は見たくないと……。はい、わかります……、はい」


 ネガティブだなあ。


「そうじゃないって。オートレイはちっともブサイクじゃないぞ。顔も体も」

「慰めていただかなくてもいいんです! 自分のことはよく知っていますから」

「お世辞じゃないって」

「どうせ、私の裸を見たって、神官さまのときのようにアソコを大きくしてはもらえないんです。私なんて天空王の花嫁なんて柄じゃないし……」

「なんだと?」

「私なんて天空王の花嫁って柄じゃありません!」

「そこじゃない!」


 いまオートレイはとんでもないことを言ってなかったか?


「神官さまのときのようにアソコを、ってどういうことだ?」

「っ!」


 オートレイは怯えた目で俺の方を見上げた。

 まるで、肉食獣に追い詰められた草食動物みたいに震えながら。

 沈黙の数秒過ぎ、突然オートレイがその場に土下座した。


「申し訳ございません! 隊長室の洋服入れに隠れて覗いておりましたぁあああっ!」


 どういうことだ?

 たしかに、隊長室で俺とファーミンは互いを慰め合ったことがある。

 うん、ソファーを使って、かなり官能的にやらかした。

 だけど、扉にはきちんと鍵をかけておいたはずだぞ。

 とにかく、深呼吸して落ち着こう。


「ふぅ……。なんでそんなことになったんだ?」


 オートレイを怖がらせないよう、俺は優しい調子でたずねてみた。


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