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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第二部

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星のクッキーを食べたなら……


 広間へ移ると、俺たちはおやつの準備を始めた。

 隊員たちはポットにお湯を沸かし、皿やカップを並べている。

 俺は棚にしまっておいたクッキー缶を取り出し、ファーミンに中身を見せた。


「これを鑑定してほしいんだ」


 アインの作ったクッキーは異世界転移した結果、丸から星へ形状が変わっている。

 ひょっとしたら特殊効果があるかもしれない。


 真剣な表情で鑑定に取り組むファーミンが驚きの声を上げた。


「えっ……?」

「どうした?」

「う、うむ……たいしたことではないのだが……」


 めずらしく歯切れが悪い。

 大抵のことは隠し事なく教えてくれるんだけどなあ。


「はっきり言ってくれ。危ないものなら対処を考えなければならないだろう?」


 お茶の支度を終えた隊員たちもテーブルの周りに集まってきた。

 彼女たちが来て、ファーミンのうろたえようはさらに増す。


「いや、本当にたいしたことはないのだ。ただ……」

「ただ?」

「わ、わずかながら……このクッキーには……さ、催淫効果があるようなのだ」


 催淫効果……だと……?


「というと、これを食べると……ムラムラっとしてしまうのか? どれくらいの効果があるのだろう……?」

「か、鑑定では『わずかに』と出ているだけで、具体的にどれくらいムラムラするかはわからない。体質などもあるから、人によって違うだろうからな……」


 甘く危険な香りのする食べ物である。

 アインの奴はなんてすば……けしからんものを作ってしまったのだ!

 だが、俺は隊長として理性的にふるまわなければならない。

 こんなものが隊員たちの口に入ってしまったら……。


「いずれにせよ、食べない方がよさそうだよな」

「そうはまいりませんっ!」


 大きな声できっぱりと否定したのはアインだった。


「おい……?」

「これは私が焼いたクッキーです。調理した人間として効果を試す義務があると考えます」


 そんな義務があるのか?


「いやいや、やめておいた方がいいって」

「では、このまま捨てろとおっしゃるのですか?」


 そう言われると反論しにくい。

 食べ物を粗末にするのは俺の主義に反するからだ。


「お任せください。何かあったときはお願いします」


 お願いしますって、どうすればいいんだよ?


 アインは俺が制止する間もなくクッキーを口に入れてしまった。

 小さな口でもぐもぐと咀嚼して、ついには飲み込んでしまう。

 その場にいた誰もが黙ったまま、一分ほどアインを凝視していた。

 やがて、沈黙に耐えられなくなった俺が質問する。


「平気なのか?」

「お母さまにいただいた缶に入れていたせいでしょうか、食感はまったくかわっていませんね。サクサクしたままでした」


 そういうことを聞いているのではないのだが、アインはわかっていて言っているな。


「特殊効果はどうなんだ?」

「とってもエッチな気持ちになってきたかもしれません!」

「なんだって!?」


 俺が驚きの声を上げると、アインは小さな舌をぺろりと出してみせた。


「なんて、冗談ですよ。ちょっと体が熱くなってきたくらいですね。それ以外の変化は感じられないかな……?」

「びっくりさせるなよ。そうか、効果はわずかみたいだからな。そんなものかもしれないな」


 安心したというか、残念というか……。

 エッチの前とかに食べたら、気分が盛り上がるのかもしれないが、普通にしていればたいした効果はないのだろう。


「あの、私も食べてみていいですか。さっきからもうお腹が空いていて……」

「どうぞ、召し上がれ」


 アインからクッキーを受け取り、オートレイも口に入れた。


「とても美味しいです。もう一個いただきますね」


 パクパクとクッキーを食べ続ける二人を見て不安になってしまう。


「そんなに食べて平気なのか?」


 だが、アインはおかまいなしだ。


「なんともないですよ。隊長もおひとつどうですか?」


 オートレイも食欲全開で四個目を口にしている。


「とても美味しいです。傑作と言っても過言ではありませんね」

「だったらいいけど。……ん?」


 なんか二人の距離が近くないか?

 気のせいかな……? 胸の先端で俺の腕をつついているような気がするんだけど……。


 ツン……ツンツン……ツンツンツンツン。


 気のせいじゃない!

 これは、おっぱいモールス信号じゃないか!!


「おい、アイン」

「なんか止まらなくて……」

「オートレイもいいかげんに……」

「も、申しわけございません! でもでも、こうせずにはいられないのです。私もやめようとは思うのですが、体が言うことを聞いてくれません」


 これが催淫効果?


「ずるい!」


 そう言うなり、リンリもクッキーを口に放り込んだ。


「なにごとにも検証は必要ですわ!」


 ディカッサもかい!


「私が副長としてみんなをまとめなくては……」


 メーリア……。


「仲間外れはやめてくれ」


 ファーミンもなのか?

 みんながいっせいにクッキーを食べているぞ。


「いったい、どういうつもりだ? 休憩したら引き続き地下遺跡を――」


 俺の言葉はオートレイにさえぎられてしまった。


「お、お情けを……」


 そんなうわごとを言いながらオートレイはさらに大胆な行動に出た。

 俺の腕を胸の谷間に挟んで体を上下させているのだ。

 アインはもっとひどく、俺の脚を自分のふとももで挟んで、抱きつきながら体をグラインドさせている。


「ファーミン、催淫効果は『わずか』じゃなかったのか?」

「だから、個人差があるといっただろう」

「って、なにをしているんだよ!」


 背の高いファーミンが後ろから俺を抱きしめつつ体をこすりつけはじめた。


「メーリア、なんとかしてくれ」

「了解であります。みんな、きちんと順番を守るのよ! 三人が終わったら、次は私とリンリとディカッサの番ですからね!」


 そういうことじゃない!

 メーリアは俺がプレゼントした腕時計できっちり時間を計っているようだ。

 さすが生真面目な性格をしているだけある。


 だが、おかしいぞ。

 これは本当にクッキーのせいだけだろうか?

 俺と彼女たちの間になにやら魔法的なつながりを感じる。

 体を密着させることによって、そういった力が働き、彼女たちの感度を増幅させている気がするのだ。

 やはり、俺たちには運命的なつながりがあるのかもしれない……。


「んんっ!」


 ブルブルと体を震わせていたオートレイが俺からそっと離れていった。

 余韻に浸っているオートレイにメーリアが声をかけている。


「もういいの? あと三分残っているわよ」

「ま、満足しましたので……。それより着替えてきます」


 どうして着替えないといけないの?

 俺、わかんない!


「そう……。ねえ、どうだった?」

「く、口では言えません。体験してください」


 オートレイが離れた場所に、すかさずディカッサが入り込んできた。

 その表情はいつになくトロンとしている。

 君は無表情キャラじゃなかったっけ?


「さあ、一緒にクッキーの特殊効果を検証しましょう♡」

「もう、じゅうぶん効果はわかっただろう?」

「まだです。見せてもらいましょうか、催淫クッキーの力の神髄とやらを!」


 みんなにまとわりつかれて俺はまったく動けないでいた。


 ♡ ♡ ♡


 ブルブルっと大きく体を震わせてメーリアが俺から離れた。

 遠慮がちな動きをしていたから、満足するまでに時間がかかってしまったらしい。

 他の者はみな着替えをしに自室へ戻っている。

 なんだかとっても気まずいけど、声をかけた方がいいのかな?


「あ~、動けるか……?」


 メーリアは声を出さずにコクリとうなずいた。

 そして、両手で顔を隠しながら走って部屋を出て行ってしまう。

 ようやく終わったか……。

 ぜんぶで三十分くらい体をこすり付けられていたな……。

 俺はクッキーを食べていないけど、お預けをくらってアソコはとんでもない状態になっているぞ。

 これ、どうしたらいいんだよ?

 それと、あいつらは全員わかっていてクッキーを食べていたよな!


 腹立たしさを感じないでもないが、心は不思議と落ち着いていた。

 それよりも、彼女たちと密着したときに覚えた、運命的な感覚が不思議だった。

 やはり、キスをすることで異世界へ行ける相手は限られていると思う。

 隊員やファーミン以外とではおそらく無理だ。

 もしかしたらまだ増えるかもしれないが、わかっているのはあの六人だけである。

 それだけは確信することができた。


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