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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第二部

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天空王より


 そこは大きな広間になっていた。

 部屋の中央には数多あまたの女性に囲まれた天空王の銅像が据えられている。

 どの女性も美人で、天空王は鼻の下を伸ばして笑ってた。

 ひょっとして、これ全員が天空王の奥さんか?

 脇の方には大きな城の模型も置かれていた。


「隊長、この城は砦と同じ場所に建っていますよ」


 模型を覗き込んでいたディカッサが断言した。


「本当か?」

「周囲の地形を見ればわかります。この丘も、こちらの山も見覚えがありませんか?」

「言われてみればその通りだな。だけど、もしこの場所に城が建っていたとして、その残骸が残っていないのはおかしくないか?」


 たとえ何千年も前のものだって、エジプトのピラミッドみたいに残っているのが普通だろう?


「天空王の偉業は数々あるのですが、そのほとんどは消えてしまったそうです」

「消えるってどういうこと?」

「そのままの意味ですよ。天空王の死後、城も灌漑施設なども徐々に砂となって消えてしまったそうです」


 チート能力で無理やり創り出したものだから、耐久性がなかったのか?


「だったらここはどうなる? この遺跡だって砂になっていそうなものじゃないか」


 地上部の城が消えてしまったとして、どうして地下だけ完璧に残っているのだろう?


「なにか特別な力が働いているのかもしれませんね」


 ディカッサとそんな会話をしていると、メーリアに呼ばれた。


「隊長、ここに石板があります! しかも、文字は日本語です!」

「なんだと!?」


 考えてみれば天空王は異世界人である。

 彼が日本人であれば、日本語が残されていてもおかしくはないか。


 石板の大きさは50センチメートル×70センチメートルくらいあった。



 ここは我が同胞である異世界人のために残す修練所である。

 まあ、レベルアップのためのダンジョンみたいなものだと思ってくれ。

 ゲームが大好きな日本人なら意味は分かるよな?

 ここで修行すれば強くなれるぞ。

 もちろんある程度の危険はつきものだ。

 セーブやリセットはできないから覚悟はしてほしい。

 だが、宝箱をはじめとした各種のご褒美も用意したぞ。

 最深部には特にすてきなご褒美があるから、張り切って挑戦してくれよな!

 ちなみに、ここは地球の民の遺伝子をもった者だけが開けられるようにしてある。

 もっとも、現地人の同伴者がいてもかまわないぞ。

 一緒にレベルアップを楽しむといい。

 それでは頑張ってくれたまえ!

                                天空王より



 稚拙な文章ではあるが、天空王は気さくな一面を持っていたのかもしれないな。

 だが、こんな場所を作り出すなんて、やっぱりとんでもないチートを授けられたのだろう。


「修練場とはどういうことでしょうか? 我々が入ってもよろしいのですか?」


 修行や鍛錬が大好きなメーリアは嬉しそうだ。


「現地人の同伴者がいてもかまわないと書いてあるから平気だろう」


 奥へ通じる扉に耳を付けて、気配を探ってみる。

 ここがゲームに出てくるようなダンジョンというのなら、中にいるのは魔物にちがいあるまい。

 それを倒せばレベルアップができるというわけだ。

 はっきり言ってこれはすごいことである。

 だってここは剣と魔法のファンタジー的世界ではあるが、そういったゲーム的要素はないからだ。

 いくら戦っても、ゲームのような経験値は得られない。

 獲得できるのは現実的な経験とそれに伴う成長や慣れだけなのだ。

 もし、魔物と戦うだけで確実にレベルがあがるというのなら、こんな便利な修行場所はないのだ。


「予定通りこのまま突入するぞ。打ち合わせた隊列を組め」


 狭い通路での戦闘を想定したフォーメーションは考案済みだ。

 俺とリンリが前衛、メーリアとディカッサが中衛、その後ろに治癒師のアイン、最後尾をオートレイとファーミンが固める。

 盾役がいないのは少々不安だが、正面から突っ込んでくる敵は地面を経由する魔動波でなんとかなるだろう。


 ダンジョンへ通じるドアには大きな握りがついていた。

 これに触れれば、俺の遺伝子を読み取って封印が解除される仕組みになっているらしい。

 そっと手を置くと魔導装置が起動し、ロックの外れる音が広間に響いた。


「封印は解けたな。よし、行くぞ」


 俺たちはダンジョンに突入した。



 扉の奥はレトロなロールプレイングゲームの世界だった。

 石造りの狭い通路がまっすぐに奥へ向かって伸びている。

 薄暗くはあるが、完全な暗闇ではない。

 壁に小さな照明がついているからだ。

 これも天空王なりの気遣いだろう。

 初心者にも優しい安心設計だった。



「油断するなよ。おそらく魔物が出てくるはずだ」


 俺の予言通り、数メートルも進まないうちに地を這う巨大な芋虫が現れた。

 敵はまだこちらに気がついていない。

 俺とリンリはその場にしゃがみ、ハンドサインで中衛の攻撃を促す。

 メーリアは矢を、ディカッサは火球を放って奇襲攻撃をしかける。

 不意を突かれた芋虫はなす術もなく、その場に倒れた。


「よし、撃破を確認」


 人工の修練場だけあって、いきなり強い敵は現れないようだ。

 このような弱い敵で少しずつ成長していけ、という天空王の方針なのだろう。


「隊長、魔物のむくろが光っています!」


 メーリアの言うとおり、死んだ魔物の体から光の粒が浮かび上がり、超高速でこちらに向かって飛んできた。


「っ!」


 よける間もなく光の粒は俺たち七人の体に入り込む。

 だが、痛みや不快な感覚はないぞ。

 それに、直接魔物を倒したメーリアとディカッサには特に大きな粒が入り込んだ。

 おそらくこれは経験値みたいなものだろう。


「みんな、異常はないか?」


 周囲を警戒しながら隊員たちの様子を確認する。

 どういうわけか、メーリアとディカッサがぼんやりしていた。


「なにかあったのか?」

「それが……その……」

「なんとなく……」


 二人の言葉は要領を得ない。


「治療が必要なのか?」

「そうではなく……」


 メーリアは信じられないといったような表情で言葉を継いだ。


「自分の中で何かが変化したというか……」

「私も同じです」


 おそらく、いまの戦闘で二人ともレベルアップしたのだろう。

 隊員たちの戦闘力はもともと低いのだ。

 簡単にレベルアップしたとしてもおかしくはない。


「それがこの修練場の効果だよ。この調子で続けていけば、いずれ変化がはっきりと実感できるはずだ」


 その後、二回ほど戦闘を繰り返して、俺たちは地上へ引き上げた。

 戦闘に不慣れな隊員たちに疲労の色が濃かったし、強く力を求めているわけではないからだ。

 ご褒美とやらもあるみたいだから、今後も修練場へ来ることはあるだろうけど、ガツガツとレベル上げをする必要も感じない。

 無理はせず、今日のところは休むことにしたのだ。


「さあ、おやつにしようぜ。そうだ、おやつと言えば、ファーミンに鑑定してもらいたいものがあったんだ」

「日本から新しい食べ物を持ってきたのか?」

「いや、アインが焼いてくれたクッキーだよ」


 こちらから日本へ持っていくことで特殊効果がついたかもしれない、あのクッキーだ。

 母さんがくれた空き缶にしまってあるから、湿気ってもいないだろう。

 安全なようならみんなで食べればいいし、特殊効果があるのならなおありがたい。

 隊員たちには紅茶の準備をしてもらい、ファーミンには鑑定に取り掛かってもらった。

―――――――――――――――――――――――――――――

次回は少しエッチです。

苦手な人は飛ばしてください。

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