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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第二部

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遺跡の扉を開ける


 姿勢を正してファーミンは説明を始めた。


「例の録画だが、音声部分だけをメモにして退魔庁の知り合いに翻訳を依頼したのだ」


 さすがにスマートフォンを見せるなんてことはしない。

 そんなことをすれば大騒ぎになるからな。


「あの宝剣は天空王が悪魔を討伐するために使用したものである、ということが判明した。私にかけられた呪いとはつまり、その悪魔の憑依だ」


 また天空王か……。

 どうしてか知らないが、俺とはよくよく縁があるようだ。

 だが、おかしくないか?

 天空王が悪魔を倒したのなら、ファーミンが呪われる理由はない。


「天空王は悪魔を完全に消滅させられなかったのか?」

「そのとおりだ。敵は強力な悪魔で、天空王もかなり手こずったらしい。結局、悪魔を封印するにとどまったのだ」

「だとしたら、よほど強力な悪魔だったのだな。俺も天空王の伝説をいろいろ聞いているけど、かなりのチートを持った異世界人だったみたいだぞ」


 ドラゴンを素手で倒すんだからまともじゃない。


「その天空王でさえ苦労したのだから、悪魔も相当なものだったのだろう。剣ひとつでは封印できず、剣と鞘の二つに分けて封印したようだ。それでこの部分だよ」


 ファーミンは俺からスマートフォンを借り受け、動画を再生する。

 動画の中では鎖で拘束されたファーミンが髪を振り乱しながら叫んでいた。


『エーリア ムラハッダ バゴ レターブラ!』


「これは『剣を鞘に戻せば我は復活する』と言っているのだ。復活すれば呪いは解くし、強大な力を授けてやろう、とも言っている」

「ははーん、あれは誘惑の言葉だったのか。だったら普通の言語で喋ればいいのに」

「古い悪魔だから現代の人間が使う言葉がよくわからなかったのだろう。もしくは、そういった力さえ封印されているかだな」


 詳しいことは不明のままか。


「だけどさ、ファーミンの呪いはもう解けているよな」


 日本から買ってきたお祓いグッズで解呪は成功している。

 そのおかげでファーミンのとんでもない痴態を見ることができたのだ。

 あんなポーズや、こんなポーズ……。

 くっ、思い出したら軍服の下の方が窮屈に!


「イツキのおかげで呪いは解けたから、悪魔の言うことを聞く必要はない。強大な力とやらにも興味はないからな」

「だったら、この件は放置でいいじゃないか。だが待てよ……。宝剣の鞘ってどこにあるのだろう? そんなものがそこいらに転がっていたら危険極まりないぞ」


 誰かが間違って手に取ったら、今度はその人が呪われてしまうかもしれない。


「鞘も探して安全な場所に移した方がいいとは思うけど、どこにあるかわからないからなあ……」

「手がかりならここにある」


 ファーミンはまた動画を再生した。


「これだよ。鞘は『失われた王の城に封印されている』そうだ」


 あれ? そういえば正気を失ったファーミンがそんなことを口走っていた気がする。

 ファーミンはまた動画を再生して俺たちに見せてくれた。


「この部分だが、『この下だ。失われた王の城の入り口はそこにある。そこで鞘を探せ』と言っているのだ」

「ということは、砦の下に天空王の城があるということ?」


 俺たちは隊員と目を交わしてうなずき合った。

 だとしたら、あの遺跡は……。

 事情を知らないファーミンは首をかしげている。


「ファーミンがいない間に、軍の監察が入ることになってね――」


 遺跡の入り口を見つけたときの事情を説明すると、ファーミンはとたんに興奮しだした。


「これまで、天空王の本拠地がどこにあったかは不明だったよな?」


 ディカッサが答えて言う。


「はじめて降臨された場所に城を建てたという伝承はありましたが、正確な位置は伝えられていませんでした。グローブナ地方の北部という話だけが残されていたのです」


 グローブナ地方の北部と言えば、まさにこの辺りだ。

 やはり、この場所がそうなのかもしれない。


「その遺跡を私にも見せてくれ」

「もちろんだとも。本格的な調査は君が帰ってきてからしようと思っていたんだ」


 俺たちは全員で、地下遺跡の入口へと向かった。



 遺跡を目にしたファーミンは喜びつつも、慎重に内部を調査していた。


「見てくれ、ここに古代魔法言語が書いてあるんだ」

「ふむ、たしかに。これくらいなら私でも解読できる。というより定型文だから知っているというべきか」

「なんと書いてあるんだ?」

「これは『みだりに開けるなかれ』だ。古い遺跡にはよくこの警告文があるんだよ。扉に触れていないだろうな?」

「呪いのことがあったから、怖くて触っていないよ」

「賢明な判断だ。よし、扉を鑑定してみるか」


 俺は慌ててファーミンを止めた。


「待てよ。もしまた君が呪われたらどうする?」

「そうなったら、またイツキが祓ってくれればいい」


 言ってからファーミンは顔を赤らめた。

 先日のお祓いでは感度が高まり、大きな声で喘いでしまったことを思い出したのだろう。

 俺にすべてを見られたことも。

 無茶苦茶よがっていたもんなぁ……。


「そうは言っても解呪の枝はもうないんだ。まあ、金の塩は残っているけど……。そうだ、あれを扉にかけてみたらどうかな?」

「うむ、それはいい考えだ。もし呪いがかけられていれば、なんらかの反応があるだろう」


 さっそく隊長室から金の塩を持ってきて扉にかけてみたが、扉はなんの反応も示さなかった。

 念のためにファーミンも鑑定をかけたけど、やっぱりただの扉だった。


「ふぅ……、遺跡の調査って大変なんだな」

「そうだぞ。慎重に事を進めようとすると何か月もかかるのだ。犯罪者を人柱にして時間短縮を図る組織もあるようだがな……」


 やっぱり異世界は恐ろしい。

 人権意識なんてこれっぽっちもないんだから。


「それじゃあ、扉を開けるぞ。みんな、心の準備はいいか?」


 俺も含めて隊員たちは完全武装で臨んでいる。

 軍服の下には各々のフンドシも締めてきたそうだ。

 遺跡の奥から魔物が現れても、いきなり全滅はないだろう。

 俺は手に力を込めて重い金属の扉を押し開けた。


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