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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第二部

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成行きの行方はいかに?


 小一時間ほど俺とファーミンは楽しく箱崎12年を飲んだ。

二人でソファーに並んで座り、いちゃいちゃしながらカップを傾けている。

こんなところを隊員たちに見られたらまずいかな? なんて気持ちもあるのだが、どうにもやめられずに俺たちは六杯めの箱崎を飲んでいた。

 ファーミンが俺に寄りかかりながらトロント視線を向けてきた。


「こんなにいい気持になったのは初めてかもしれない。これはウイスキーのせいかな? それともミズキのおかげだろうか?」

「きっとウイスキーのせいさ」


 そんなことを言いながら、俺の気持ちもまんざらではなかった。

 きっと俺とファーミンは相性がいいのだろう。

 いわゆる、馬が合うというやつだ。

 そこに箱崎12年の効果が加わって急接近してしまったのだと思う。

 ファーミンは俺より年上で、常識を備えた好人物だ。

 普段は隊長として気が張っている俺にとって、対等の関係で、肩肘張らずにしゃべれる相手というのがありがたかった。


「ふぅ……。そろそろやめておかないとな」


 寂しそうではあるが、ファーミンはきっぱり宣言した。

 ファーミンのこういうところが俺は好きだ。


「ああ、これを飲み干したら今夜はお開きにしよう」


 俺たちは軽くカップを合わせえて、最後の一口を飲み下した。

 そのとき、通路からドタバタと足音がして隊員たちが部屋へなだれ込んできた。


「失礼します!」


「どうした、メーリア?」

「その、例のあれが終わりましたのでご報告に……。あの、そちらの方は?」


 例のあれ、というのは映画のことだな。

 部外者がいるのでメーリアなりに気を使ったのだろう。

 ちょうど隊員が全員そろっているから、ファーミンをみんなに紹介してしまおう。


「こちらはレビン村に赴任してこられた神官のファーミン・クロウ殿だ」


 隊員たちにファーミンを引き合わせた。

 ファーミンに許可をとってから、呪いのことも含め、これからしばらく砦で暮らすことも説明しておく。


「苦労をかけると思うがよろしく頼むよ。ところで、この砦の隊員たちはずいぶんキッチリしているのだな……」


 ファーミンが不思議そうに隊員を見ている。


「どうしてそんなことを感じるんだ」

「いや、こんな時間だというのに、全員が完全武装じゃないか」


 言われてみればそのとおりだった。

 娯楽室に集まったときは平服に着替えていたというのにどうなっているのだろう?


「みんな、その恰好はどうした?」


 メーリアが代表して答えた。


「じゃ、邪悪なものが指輪を狙っております!」


 リンリがそれに続く。


「私たちは備えなければなりません」

「お、おい、あれは……」


 オートレイも青い顔をして具申する。


「ち、地下にシェルターを作りましょう。いざというときはホビットたちをそこにかくまうのです」


 困ったな。

 現実と映画の区別がつかなくなっているようだ。


「みんな、安心してくれ。あれはぜんぶ空想の話だ」

「でも、あれはすべて現実に起こっているように見えました」


 映像技術の発展はすごいところだもんなあ……。


「異世界にはそういう技術があるんだって」


 みんなに説明をしているとディカッサが不安そうに俺をつついた。


「どうした?」

「先ほどから神官さまの前で異世界の話をしていらっしゃいますが……」

「じつはそうなんだ」


 俺はファーミンに箱崎12年を鑑定してもらった経緯を説明した。


「ということで、俺はファーミンを信頼している。だから、俺が異世界からやってきたことも打ち明けたんだ」

「うむ、我々は友だ。大切な友人の秘密を吹聴することはないから安心してほしい」


 ディカッサも俺たちの説明を聞いて納得したらしい。


「よくわかりました。隊長と神官さまはご友人になったということですね」

「まあ、そういうことだな」

「それでしたら話がはやくて助かります」


 このサイコパスはなにを考えているんだ?


「話が早いって、どういうことだよ?」

「ちょうどいいので、お二人でキスしてください」

「はっ?」

「実験です。我々意外とキスをしても異世界に行けるのかを確かめようではありませんか」

「ディカッサ、いくら何でもそれは失礼だぞ。それにキスをするのは友だちではなく恋人だ」


 ディカッサの勝手な言い分を叱ろうとしたのだが、それを止めたのはファーミンだった。


「いいじゃないか、それくらい。イツキが相手ならキスくらい問題ないぞ」

「しかしなあ……」


 戸惑う俺の手をファーミンが強引にとって自分の腰に回した。


「キスをするときはこうだろう? 自信を持って引き寄せろ」

「ファーミン、酔っているな?」


 ファーミンが俺の耳元でささやく。


「ああ、酔っ払いさ。ガサツな女でも恥じらいはある。こんなことでもなければキスをねだるなんてできないからな。これ以上私に恥をかかせるな……」


 この様子にディカッサは大満足だ。


「さあ、実験をはじめましょう」

「わかったからあっちを向いていてくれ」


 俺がそう頼むと完全武装の兵士たち五人は回れ右をして壁の方を向いた。


「ファーミン、いいのか?」

「早くしろ。これでも照れている」


 それ以上待たせるわけにもいかず、俺はファーミンとキスをした。


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