色違い
隊員たちと話し合い、全員分のフンドシが手に入るまでチョビ髭危機一髪を続けることになった。
だが、俺の心境は複雑だ。
そりゃあ俺も男だから、隊員たちの裸を見られるのはうれしいさ。
だけど、それは正しいことなのだろうか、という懸念はある。
それにゲームを続けるということは、俺も彼女たちにフンドシ姿を見せなくてはならないということだ。
だが、隊員たちは妙に乗り気で、フンドシ姿をみられることを気にしていない。
むしろ楽しそうにゲームの準備をしている。
これも異世界ならではのマインドということだろうか?
こちらに来て二年になるが、異世界人の感情の機微や情緒となると、まだまだ理解が追い付かないことが多かった。
「さあ、改めてはじめましょう」
副長としての責任感か、メーリアが場を取り仕切った。
他のみんなもやる気を見せている。
あれ、軍服を着たディカッサも座っているぞ。
「君はもうフンドシを手に入れただろう。まだやるのかい?」
「重複した場合はどうなるかを検証したいと思います」
そういうことか。
「ちなみに今は普通の下着です。先ほど手に入れたフンドシは外してあります」
「わざわざ見せなくていい」
白い木綿でできた簡素な下着をディカッサははいていた。
事務的にそういうものを見せつけてくるディカッサに対して、俺は妙な色気を感じてしまう。
なんだかわからんが、心に刺さるものがあった。
プラスチック製の短剣を手に取り、俺は樽に突き刺した。
まずはチョビ髭危機一髪の効果がまだ続くのかを確認するとしよう。
先ほどと同じ条件でプレイすれば、それは自ずと判明することである。
「よーし、次は私の番ですね」
俺が刺すと、今度はリンリが黄色の短剣を持って狙いを定めた。
「きゃあっ!」
深々と短剣が突き刺さった瞬間、宙に飛び出たのはチョビ髭ではなくてリンリだった。
なんと、二発目にして当たりを引いてしまったのだ。
ディカッサのときと同じように、リンリの服は脱げ、黄色いフンドシをしめただけの姿になっていた。
「うおっと!」
転ぶこともなく、リンリは格闘家らしい身ごなしで床に着地した。
衝撃で形のよい胸が揺れたのを確認してから俺は視線を逸らす。
なんか、ごめん……。
でも、なんとなく目を離せなかったんだよ。
引き締まっていて美しい体だった……。
「これ、まだ使えますよ!」
リンリは嬉しそうに声を上げている。
俺もチョビ髭危機一髪が一回こっきりのゲームじゃないとわかって安心したよ。
背後でディカッサの鋭い声が上がった。
「リンリ、フンドシの色が違うわ!」
「そういえば、そうだね。ディカッサのは赤だったけど、私のは黄色だ」
俺は後ろを向いた態勢のまま自分の考えを言う。
「剣の色が関係しているんじゃないか? リンリは黄色の短剣を突き刺していたじゃないか」
チョビ髭危機一髪の短剣には赤、青、黄、緑、ピンクの五種類があるのだ。
俺の意見を聞いたディカッサが肯定する。
「言われてみればそのとおりです。たしか私は赤い短剣を突き刺したと思います。五色もあるのに、それを考慮しなかったのはうかつでした」
「仕方がないさ。ところでリンリ、服を着てくれないか? それから特殊効果についてみてみよう」
「あ、はい」
後ろでゴソゴソと音がしている。
床に散らばった軍服をリンリが着ているのだろう。
「はい、もういいですよ」
「うむ……なっ!」
なんと、リンリは軍服の上だけを着て、下はフンドシを締めただけの姿だった。
くそ、またもや俺の心にドストライクである!
「なんて恰好をしているんだ!」
「上からパンツをはいたら効果がなくなるかもしれないと思って……」
そんなリンリをディカッサが褒めている。
「いい判断ね、リンリ。それで、特殊効果はどうかしら? 私と同じく魔力が上がっている?」
「魔力……、うーん、魔力は上がっている感じはするなあ。でも、もっと限定的っていうか……」
考え込んでいたリンリが軽くステップを踏み出した。
「やっぱりそうだ。身体能力上昇の効果があるようでスピードが上がっています!」
「なんだって? リンリ、軽く手合わせをしてみよう」
「はい! かまわないので魔動波を二、三発入れてください」
「そうじゃなくて、これは黄色のフンドシの検証だから……」
広間にはじゅうぶんなスペースがあったので、俺たちはその場で軽いスパーリングを行った。
本当だ。
確かにリンリの動きが速くなっている。
「体が軽いです。こんな攻撃もできますよ」
リンリは多段蹴りを使ってきた。
「百連脚! なんつって」
百回も蹴っていなかったけど、それに近い迫力はあるな。
ただ、それをフンドシ姿でやるので、俺としては非常に困った事態になってしまったんだよね。
「あれ、隊長の動きが重いですよ?」
「うむ……」
フンドシ連脚は手強い……。
まったくもってけしからん話だった。
黄色のフンドシの効果を確認すると、ィカッサがゲームの継続を促してきた。
「さあ、検証を続けましょう」
俺としてもそれに異存はない。
ただ、ピンクのフンドシはちょっと嫌かな。
あと、すぐにフンドシ姿になるのも……。
二人の裸を見てしまい体が反応してしまっているのだ。
フンドシ姿になったら、いろいろとバレてしまう……。
「す、少し休憩しないか?」
「そんな時間はありません。それとも、なにか特別な事情がおありですか?」
「いや……」
本当のことなど言えるはずもなく、俺はできるかぎり時間を使って椅子に腰かけた。
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