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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第一部

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ゲームは続く


 ディカッサがフンドシ姿で宙に飛び上がっていた間、樽の中のオッサンは微動だにしなかった。

 つまり『チョビ髭危機一髪』は異世界を転移することによって、オッサンではなくプレイヤーがフンドシ姿で飛び上がるというチート能力を得たようである。


 それにしてもディカッサはすごい格好だな。

 フンドシしかはいていなのに、お尻を床について開脚しているぞ……。

 って、俺はなにをじっくり観察しているんだ!

 正気に返った俺は慌てて視線を逸らした。

 顔をそむけたまま俺はディカッサにたずねる。


「心身に異常はないか? けがをしたようならアインに言って治療を――」


 だが、ディカッサは俺の言葉をさえぎって立ち上がった。

 そしてわざわざ俺の正面までやってきて赤ふんを見せつけてくる。

 さすがに腕で胸は隠しているが、きわどい格好であることは変わらない。

 目のやり場に困ってしまうよ。


「隊長、これはすごいです!」


 そんなことを言われなくても、フンドシの破壊力なら身に染みてわかっている。

 エチエチすぎて、まともに見ることもできないぞ。


「いいから服を着ろ」

「それどころじゃありません!」


 おや、ディカッサの反応が変だな?

 彼女は胸を隠すことも忘れて俺の前に手を突き出してきた。


「ご覧ください」


 といっても、胸を見てもらいたいわけではなさそうだ。

 ディカッサはお得意のツーフィンガー・ファイヤーを出してきた。


「それがいったいなんだって……あれ? いつもより炎が大きい?」


 普段はライターの炎ほどの火力だが、今日は二回りほど火炎が大きい。


「ひょっとして、それはフンドシの効果なのか?」

「そのとおりです。この下着をはいていると魔力の循環がよくなるのですよ! 検証するためにいまから脱いでみます」


 俺は慌てて後ろを向いた。

 背中側ではシュルシュルと衣擦れの音がしている。

 きっと、ディカッサが褌を外しているのだろう。


「おお! やっぱりそうです。褌を外したら炎の大きさが元に戻りました」

「そうか……」


 そう言われても確認するわけにはいかないもんな。


「大変です、隊長!」


 ディカッサが焦ったような声を出すが、やっぱり振り向くわけにはいかない。


「どうした!?」

「フンドシのつけ直し方がわかりません」


 そんなことを相談されても困る。

 フンドシの締め方なんて俺だってわからないのだ。

 これまで身に着けた経験もない。


「隊長、やってもらえませんか?」

「君には恥じらいというものがないのか!?」

「目的のためなら手段は気にしないたちですので」


 そうだったな、ディカッサはそういうやつなのだ。


「フンドシの締め方は日本へ帰ったときに調べる。とにかく今は服を着てくれ」


 不承不承ながらもディカッサは軍服を身に着けたようだった。


「隊長、もうこちらを向いてもかまいませんよ」

「ああ……」


 なんだかどっと疲れてしまったな。

 夕飯前に少し休みたい気分だ。

 ところが、そんなことをディカッサは許してくれなかった。


「さあ、続きをしましょう」

「はっ? なにを言っているんだ。これがどんなアイテムかはもうわかっただろう? こんなものを続けたら、みんなが裸になってしまうのだぞ」

「ですが、フンドシを手に入れられます」


 そういうことか。

 ディカッサは力説する。


「これは戦局を決定づけるために投入される決戦装備と言っても過言ではありません。砦の全員が装備するべきです」


 フンドシ小隊がここに爆誕!?

 だが、そんなにすごいものなら試してみるのもありだな。

 赤フンを身に着けて魔動波を打ってみたいという気持ちが心の奥で湧き上がる。


「それじゃあ、一人ずつ個室で試してみよう」


 誰かに裸を見られるなんて嫌だろうから、一人でプレイすればいいのだ。

 そう考えて、とりあえずオートレイにチョビ髭危機一髪を渡した。


「さっそくやってきてくれ」

「了解です! これで土魔法がパワーアップしたらうれしいですね」


 喜んで出かけていったオートレイだったが、五分もしないうちに浮かない顔で戻ってきた。


「ダメでした」

「ダメってどういうこと?」

「反応があるまで剣を刺したのですが、飛び出てきたのは人形の方で、私は宙に飛べませんでした」


 フンドシも手に入らなかったようだ。


「ひょっとしたら一回限りの効果だったのかもな」


 俺の推理をディカッサは否定する。


「結論を急ぐべきではありません。この場合、いろいろな可能性があります」

「というと?」

「先ほどとの違いを確認しましょう」


 違いといえばこんな感じかな。


「まず、さっきは対戦だったが、今度は一人だった。それから、先ほどは観客がいたけど、今回は誰もいなかった」

「まだ、ありますよ」

「他に何かあるか?」

「先ほどは男女が同じ部屋にいた。でも、今回は女しかいなかった」


 たしかにディカッサの言うとおりだ。


「だったら、次はメーリアとアインで検証してもらおう」


 俺の依頼を受けて人のいない部屋へ行った二人だったが、やはり収穫なしで戻ってきた。

 メーリアが詳細を教えてくれる。


「アインと交互に剣を刺しましたが、やはり反応はなく、人形が飛び出しただけでした」


 次に観客がいた場合を考え、もう一度メーリアとアインに対戦してもらい、それをリンリが見守ることにしたが、やっぱりうまくいかなかった。


「残る可能性は男女が同室することです」


 ディカッサが真面目な顔で俺を見てきた。


「たしかにそうだが、それはまずくないか?」

「どうしてですか?」

「それはそうだろう。俺がいて特殊効果が表れるとしたら、当たりを引いた人は俺に裸を見られてしまうんだぞ」

「べつによいではありませんか」


 ディカッサは事もなげに言うけど、全員が彼女のような気持ではないだろう。


「いやいや、よくはないって」


 俺としては部下に配慮したつもりだったが、アインは逆に不満をぶつけてきた。


「ディカッサだけが裸を見せるなんてずるいです!」


 こいつはなにを言っているのだ?

 俺にはまったく理解できないのだが……。

 困惑する俺にリンリまでもが文句を言う。


「そうですよ、天空王のように平等に接してください」


 誰だ、天空王って?

 助けを求めるべくメーリアを見たが、彼女も他の隊員たちと同じ気持ちのようだった。


「兵士は平等に扱うべきです」

「メーリア……、君はこのゲームを続けることに賛成なのか?」


 メーリアはきっぱりとした態度でうなずく。


「いや、だって……、でも……、裸を見られるんだぞ! 俺に……」

「か、かまいません……」


 恥じらうメーリアのまわりにいた隊員たちも、なぜかうなずいていた。


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