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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第一部

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筋トレ・魔トレ


 俺は心を落ちつけてディカッサに質問した。


「ダンベルに魔力を通したんだな?」

「そうです。そうしたら押し戻されるような感覚がして……」


 説明を聞くよりやってみた方が早そうだ。

 俺は床に落ちていたダンベルを拾い上げて魔力を通した。


「ん? なにも反応がないぞ」

「そのままではだめです。動かしてみてください」

「ふむ……」


 俺は両腕をおろし、手のひらが正面を向くようにダンベルを握った状態でゆっくりと肘を曲げた。

 アームカールという上腕二頭筋を鍛えるエクササイズだ。

 するとどうだろう、筋肉に負荷がかかるのは当然なのだが、同時に魔力の流れにも負荷がかかった。


「なんだ、これ!?」

「ねっ! 変な反応ですよね! 魔力が遮断されるというか、通りにくくなるというか……」

「解釈としてはだいたいそれであっていると思う。おそらくだけど、これを続けることによって魔力量があがるんじゃないかな?」

「なんですってっ!」


 魔法使いであるディカッサの瞳がギラリと光った。


「本当ですか!?」

「一朝一夕にはうまくいかないと思うけど、継続していれば効果は出ると思うぞ」

「わたくし、毎日ダンベルを上げます!」


 砦の中でもディカッサとアインは特に非力だ。

 このダンベルがあれば筋力と魔力の両方が上がるから一石二鳥だろう。


「ちょっと、私にも一個貸しなさいよ!」


 アインもさっそくトレーニングをはじめたぞ。

 飽きずに続けていれば、そのうち成果は現れるはずだ。


 一生懸命ダンベルを持ち上げるディカッサとアインを傍目に、俺たちは検証を続けた。

 だが、腹筋ローラーとプッシュアップバーはいたって普通の商品だったようだ。

 この二つはハズレで、リンリは少ししょんぼりしている。


「こっちはダメだったかぁ……」

「いやいや、当たりが一つでもあってよかったじゃないか。魔力トレーニングのグッズなんてこの世界にはないのだから、これだけでも大収穫だぞ」


 そう慰めるとリンリもようやく笑顔を見せた。

 横を見るとダンベルを持ち上げていたアインとディカッサがゼイゼイと息をついている。

 張り切りすぎてオーバーワークになっているのだ。

 魔力はともかく、筋力がついていかなかったのだろう。


「それくらいにしておけよ。何事も過ぎたるは猶及ばざるが如し、だ。ほどほどにな」


 二人とも汗をかいて、前髪がぺったりとおでこにくっついているのがおもしろい。

 ディカッサやアインのこういう姿は初めて見たよ。


 呼吸を整えたディカッサが前に出た。


「改めまして、次は私が買ってきたものを検証しましょう」

「君は何を購入したんだい?」


 自信ありげな表情を浮かべながらディカッサが取り出したのは数々の化粧品だった。

 どれも高級そうなしつらえで、いかにも特殊効果がありそうに見える。


「これは期待できそうだな。だが、使い方はわかるのか?」


 化粧品の使い方なんて、俺は知らないぞ。

 だが、それはディカッサだって同じことだろう。

 砦の兵士が……、いや、都の連隊でだってそんな兵士は見たことがない。

 パーティーに参加する女性士官ならしていたのかな?

 そういうことは気にしないから、覚えていないなあ……。


「問題ありません。店員に詳しく聞いてメモしてまいりました」


 さすがはメモ魔のディカッサだ。

 きっと根ほりしつこく聞かれたのだろう、店員さんには少し同情してしまう。

 だが、ひょっとするとすごい効果のアイテムが混ざっているかもしれない。

 さっそく検証していこう。


 まず、ディカッサは全員に顔を洗うように命じた。


「この洗顔料を使って洗ってくるように。よくこすって、しっかり泡立てるんですよ」


 ぞろぞろと洗面室にいく隊員たちを見送っていたらディカッサに怒られてしまった。


「隊長も突っ立ってないで、お顔を洗ってきてください」

「ちょっと待て、俺も化粧をするのか?」

「当然です」

「どうして?」

「性別によっての違いも検証しなくてはなりません。よって、隊長にもしていただきます」


 オートレイがワクワクした瞳で俺を見ている。


「な、なんだよ……?」

「あの、その、隊長のお化粧に興味が……。と言いましても、変な妄想をしているだけで、でもでも、今度の異世界転移は口紅を塗った状態でキスしてほしいなあとか、それまで待ち遠しいなあとか、どうせなら完全メイクで抱きしめられながらキスされたいとか、そんなことをですね……。いえ、もちろん現実でしていただけるなんて考えておりませんのでご安心をっ! あくまでも個人的な妄想のレベルで楽しんでいるだけなので、はい!」


 オートレイはいつもの早口でまくし立てた。


「わかったからそんなに一生懸命にならなくていいよ。仕方がない、顔を洗うか……」


 オートレイだけじゃなく、他の隊員も俺の化粧が気になるようだ。

 別に似合わないと思うけどな。

 だが、拒否するつもりはない。

 ディカッサの言うように検証は必要だと考えている。

 俺は覚悟を決めて、ディカッサが買ってきた洗顔料で顔を洗った。


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