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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第一部

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荷台に乗ってみよう


 トラが巨大化できるだと?

 そんなことが可能だというのなら見てみたい。


「トラ、大きくなれるのなら、ちょっとやってみせてくれないか?」

「ん~……やだ。ごはん、さき」


 後足で耳の後ろを掻きながら、トラは拒否してきた。


「そんなこと言うなよ。ご褒美をあげるからさ」

「ちーる、くれる?」


 チールとはスティック状のパウチに入った猫のおやつで、トラの大好物である。


「いまはないけど、後でやるから」

「ん~、わかった」


 ブルブルッと身を震わせると、トラはいきなり巨大化した。

 サイズは本物の虎と変わりがないくらい。

 顔も体つきもそのままなのだが、爪や歯も巨大化しているのでかなり迫力がある。


「これでいい?」


 俺は手を伸ばしてトラの頭を強めに撫でてみる。

 力加減がちょうどいいのか、トラはゴロゴロとのどを鳴らした。

 こういうところはそのまんま猫なんだなあ。

 猫好きのメーリアもたまらないといった顔つきで寄ってきて、トラにお願いした。


「トラちゃん、抱きついてもいいかな?」

「ん~、いいよぉ」

「ありがとう!」


 メーリアは臆することなくトラの首に抱きついた。


「きょ、巨大モフモフ……人類の夢……」


 猫吸いはいいものであることはわかるが、人類の夢は大袈裟じゃないか?

 いや、そうでもないか……。

 それはともかく、巨大化には驚いた。

 これからは他の生物が軽トラなどに潜り込まないように気をつけなければならないな。

 それとも俺に関係があるトラだからこそ異世界転移ができたのかな?

 考えてみれば、俺が気付かないだけで、虫や微生物などは付着しているはずだ。

 そういったものも転移できるのだろうか?

 喋るノミとかいたら怖すぎるのだが……。

 それとも弾かれるのかなあ?


「トラはどうして異世界転移ができたんだい?」

「ん~……わかんにゃい」


 やはりそうか。

 俺にだってわからないのだ、猫に説明を求めるのは無理だろう。



 ディカッサが提案してきた。


「さらなる実験が必要だと考えます」

「まさか、動物実験をしろというのか?」

「そのとおりです。鳥類や魚類でもかまいません」


 それは危険すぎないか?

 話す魚や鳥なんて神話の世界の生き物だぞ。

 それに、知恵と特殊な力を身に着けた生物が逃げ出して悪さをはじめたら、手が付けられなくなってしまうじゃないか。

 ファンタジック・バイオ・ハザードである。

 俺が難色を示してもディカッサは諦めない。


「せめて、我々以外の人間が異世界へ行けるかどうかを試しましょう」

「誰を連れていくというんだよ?」

「誰でも構いません。その辺から村人や旅人を連れてきて……」

「警備隊が山賊の真似なんてできるか!」


 危害を加える気はないのだろうが、目的のためならディカッサは手段を択ばないから恐ろしい。

 さらなる検証は必要だと思うけど、いまは違うことを確かめたい。


「それより、簡単にできる試みに挑戦しよう」


 自分の提案を拒否されてふてくされていたディカッサの目が輝いた。


「それはなんでしょう?」

「軽トラの荷台だよ。トラはここに乗っていて異世界転移してしまったんだ。ということは俺が軽トラで誰かとキスをするとき、他の隊員が荷台に乗っていれば一緒に転移できるかもしれないじゃないか」


 そうなれば荷物の積み込みが楽になるよな。

 ただ、異世界とは違って日本には様々な法律がある。

 隊員たちを軽トラの荷台に乗せて移動するわけにはいかない。

 みんなで行動するためには新しい車両が必要になるだろう。

 だが、実験だけでもやってみる価値はありそうだ。

 話し合いの末、ぜひみんなで実験をしてみようということになった。


「トラもおいで。おうちに帰るんだよ」

「ん~、わかった。いえで、ちーる、たべる」


 隊員たちには日本で買った服に着替えてもらい、軽トラの荷台に乗ってもらった。

 俺とオートレイは運転席と助手席である。

 キスの順番はオートレイだったからね。


「あ、あの、他の方もいらっしゃるのに、わ、私でよろしいのでしょうか? わざわざ根暗でブスの私とキスをするより、もっと健康的で明るくて魅力的な方とキスをした方が隊長としても気持ちよく異世界転移ができると思います。あ、隊長とキスをするのが嫌というわけじゃないんです。私はどちらかと言えばしてもらいたいなあ、という気持ちの方が強いのですが、やはり隊長のお気持ちを思うと、気が退けるというかなんというか、遠慮しておいた方がいいのではないかという考えに傾きまして……」


 いつものように早口でまくし立てるオートレイに顔を近づけると、目を見開いて固まってしまった。


「いいか?」


 ギュッと目をつむり、オートレイはコクコクとうなずく。

 そんなオートレイの姿を愛おしく思いながら、俺はくちびるを重ねた。


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