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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第一部

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ディカッサと異世界転移


 部屋に入ると約束どおりディカッサに水性ペンとノートを渡した。


「なんと美しい紙……」


 ディカッサはそっとノートをなでている。

 レンブロ王国の紙は現代日本の品質とは比べものにならないほど粗悪だからなあ。


「ペンも使ってごらん、びっくりするから。俺はしばらく調べ物をしなければならない。退屈したら本棚の本をかってに読んでいてくれ。日本語は読めるようになっているだろう?」

「承知しました」


 受け答えをしながらも、ディカッサは一心不乱にペンを走らせている。

 これならしばらく放っておいても平気だろう。

 俺はノートパソコンを起動して証券会社のホームページにログインした。

 いろいろと考えたのだが、持っている株の利益を確定して、新たに分散投資をすることに決めたのだ。

 とりあえず株を売ってしまう設定をしてから、次に買うべき投資対象を物色しておく。

 税金を払っても金は1億5000万円以上残るのだ。

 配当金だけでも食べていけるだろう。


 投資関係が終わると今度は無線機関係のことを調べることにした。

 ディカッサの姿を確認したが、こちらに背を向けて本を読んでいるようだ。

 ずいぶんと熱心だな。

 こちらに来てから一時間以上経つが、あれならまだ平気だろう。

 俺ももう少し調べ物をすることにした。


「ふぅ……今日はこんなもんかな」


 気がつけば部屋に籠って二時間半が経過していた。

 無線についてだが、とりあえずアマチュア無線4級というのを取得することにした。

 最近ではいつでも簡単に受験ができるようだ。

 会場にいってパソコンで問題に解答すればいいだけらしい。

 とりあえず申し込みだけしておくか。

 それから電子書籍で資格のための問題集を買って、タブレットにダウンロードしておく。

 異世界で使うのだから資格はいらないかもしれないけど、これも経験というやつだ。

 機材については試験に合格してからでもいいだろう。

 さて、調べ物はこれくらいにして今日の買い出しに行かねばなるまい。


「お待たせ、ディカッサ。そろそろ出かけよう」

「………」


 ディカッサは本棚にあった漫画を貪り読んでいた。


「おい、そろそろ行くぞ」

「へっ?」

「へ、じゃない。早くいかないと夜までに砦に帰れなくなってしまうぞ」

「しょ、少々お待ちください。この錬金術師の兄弟がどうなるのか、どうしても気になりますので……」


 すっかりはまっているじゃないか!


「それは砦に持っていっていいから行くぞ」

「そういうことならいいでしょう。では着替えをご用意いただけますか?」


 俺はTシャツとパーカーを渡して廊下に出た。


 しばらく待っているとディカッサが出てきた。

 だが、なぜかパーカーを着ていない。


「上着はどうした?」

「まずは隊長に体を吟味してもらってから着ると聞きましたよ。どうぞご覧ください」

「そんなルールはない。さっさと上着を着ろ!」


 叱ったものの、しっかり見てしまった……。

 こいつ、すごい体をしていたんだな。

 まったくもってけしからん話だった。



 カー用品店のイエローバックスやイコンモールで買い物をすませた。

 いつものGUIで、ディカッサは白いブラウスにモスグリーンのロングスカートといった大人っぽいコーディネートを選択していた。

 服にかける時間はアインよりずっと少なかったな。

 それほど興味はないようだ。

 今日は隊員たちへのお土産にシュークリームも用意したぞ。

 きっと飛び上がるほど喜んでくれるだろう。


「それでは帰るとしましょう。ですが、帰る前に漫画を忘れずに積み込まないといけませんね」


 めっちゃ気に入ってるやん……。


「わかった。本棚にあるものは全部持っていってかまわない」


 俺たちは家にもどり、漫画を詰め込んだ段ボール箱を三つも軽トラに積み込んでから砦に戻った。



 夕方、暗くなりかけた隊長室で日誌をつけているとディカッサがやってきた。


「失礼します。ランプを持ってまいりました」

「ありがとう。ちょうど困っていたんだ。テーブルの上に置いてくれ」

「どうぞ」


 どうぞと言われても困るな。


「いや、このランプには火がついていないぞ」

「少々お待ちください。いま点けますので」


 ディカッサがもったいぶった手つきで手を振ると彼女の指先に炎が灯った。


「異世界転移で火炎魔法が使えるようになったか?」


 ディカッサが出したのはライターくらいの炎だが、それでもたいしたものである。


「火炎魔法だけではございません。見てください、この風魔法を」


 差し出された両手の間に魔法陣が浮かび上がり、そよ風がランプの灯にむかって吹いていく。

 そのせいで炎は消え、部屋は再び真っ暗になってしまった。


「おいおい、もう一度ランプをつけてくれよ」


 だがディカッサが魔法を使う気配はない。


「どうした? まさか、魔力切れ?」


 そんなこともあり得るなと考えていたら、不意に耳元でディカッサの声がした。


「私は物心ついた時からずっと魔法を使うのが夢でした。隊長には本当に感謝しております」

「礼を言われるほどのことはしていないさ。それよりランプを……」


 頬に柔らかい感触をおぼえて俺は口をつぐんだ。

 いまのはくちびるか?


「失礼します」

「お、おい……」


 ディカッサは足早に出ていってしまった。

 なんでだろう、昼間かわしたディープキスより頬にされた軽いキスの方が情熱的に感じるなんて。

 俺は暗闇の中に一人で座り、今起こったことを思い返して頬をこすった。


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