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のんびり国境警備隊 ~異世界で辺境にとばされたけど、左遷先はハーレム小隊の隊長でした。日本へも帰れるようになった!  作者: 長野文三郎
第一部

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大実験


 本日の異世界転移する前に俺は日本でやることを書きだした。


 軽トラ用スペアタイヤの購入。

 自動車用ジャッキの購入。

 ガソリンの購入。

 無線機についての下調べ。(可能なら購入)

 保有する株について証券口座のページを見ながらよく考える。

 

 

 異世界の道は舗装されていないのでスペアタイヤは必須だ。

 今後は隊員に運転を教える予定だから、軽トラの稼働率も上がるだろう。

 予備のタイヤは三つくらいあってもよさそうだ。

 さいわい砦は広いので置き場所には困らない。

 なんなら中古の軽トラをもう一台購入してもいいくらいだな。

 いざというときはその方がいろいろと対処できそうである。

 これは前向きに検討しよう。


 メモをまとめているとディカッサが俺を呼びに来た。


「隊長、そろそろお時間です」

「いまいくところだ」


 ディカッサの後ろからアインがちょこんと顔を出した。


「隊長、できましたらこれを買ってきていただきたいのですが……」


 アインはメモを渡してきた。


「鶏肉とケチャップ?」

「チキンライスというものを作ってみたいのです! これなら私にもつくれそうなので」

「ふむ、ご飯、玉ねぎ、ピーマン、ニンジンは砦にもあるな。わかった、買ってくるよ」

「ありがとうございます!」


 俺とディカッサは軽トラに乗り込んだ。


「それじゃあ、いいかな?」

「少々お待ちください」


 ディカッサがキスをためらった?


「うん、キスが嫌なら無理強いはしない」

「そうではありません。ここではなく城壁の外でキスをしたいのです」

「どうして?」

「異世界転移に場所が関係あるかを確認したいのですよ」


 その答えに納得した。

 これまで俺たちは常に城壁内でキスをしている。

 転移に場所が関係あるかを確かめておくのはいいことだろう。


「だったらどうする?」

「500メートルほど砦から離れましょう」


 走行距離を確認しながら、俺はきっちり500メートル分だけ軽トラを走らせた。


「よし、これで500メートルだ」

「それでははじめましょうか。どうぞ、キスをしてください」


 メモ帳と羽根ペンを取り出し、感情のこもらない声でディカッサはそう言った。


「よろしく頼む」


 俺もあえて事務的な態度を貫く。

 緊張したりためらったりしたら負けだと思ってしまったのだ。

 だから淡々と事を進めようと思ったのだが……。


「ディカッサ、キスのときは目を閉じてくれないか?」

「なぜでしょう? 私はすべてを観察して記録したいのです。どうぞこのままお願いします」

「わかった……」


 目を見開いた女性とキスをするのははじめての経験だけど、あまりいいものじゃないな。

 相手が冷めているのなら俺だって興奮なんてするものか。

 俺は無理やり頭を空っぽにしてディカッサにキスをした。


「…………」

「なにも起きませんね。考えられる可能性は二つ。砦から離れすぎているから、もしくは私に問題があるかです」


 しゃべりながらディカッサは羽ペンをインク壺に浸してメモを取った。


「移動するか?」


 ここでダメなら砦へ少し近づいて試すべきだろう。


「いえ、その前にもう一つ試してください」

「なにをするんだ?」

「隊長の舌を差し込んでほしいのです」

「はっ? 本気で言っているのか?」

「冗談は好きではありません」


 ディカッサの目は本気だった。


「キスの深さが距離を補う可能性があります。そういったことも確認しましょう」

「どうしてそこまで?」

「私は知りたいのです!」


 あくまでも好奇心ということらしい。


「ご安心ください。昼食後に歯磨きは致しました。隊長が異世界から買ってきてくださった歯ブラシと歯磨き剤を使っております」

「そんなことは気にしていないが……」

「でしたらはじめましょう」


 ディカッサは俺の意思を確認することもなく顔を近づけ舌を絡ませてきた。

 そして両手でがっちりと俺の頭をホールドしてしまう。

 そのような強制的なディープキスが五秒ほど続いた。


「ぷはっ! おい、なんてことをするんだ!」

「やはりだめでしたか……」


 ディカッサは俺のことなど無視して再びメモを取っている。

 そのあまりの自己中心的な態度に呆れを通り越して恐ろしささえ感じてしまったぞ。

 異世界転移にディカッサはどこまでするつもりなのだろう?


「さて、次は300メートルで試してみましょうか」

「まだやるのか?」

「当然であります」


 けっきょく、城壁外での転移はできず、城壁内での軽いキスで俺たちは転移に成功した。


「おお、これが異世界でありますか!」


 ディカッサは俺のことなど意に介さずインク壺にペンを浸してはメモを取っている。


「メモは俺の部屋に移動してからにしてくれ。そこへ行けば水性ペンと使っていないノートもあるはずだから」

「水性ペン? 興味をそそられる単語ですね。さっそくまいりましょう」


ディカッサは元気よく軽トラから降りる。

 口の中でディカッサから移ったミントの味がまだしていた。


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