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第九話

 ついに藍が夜伽の見張り当番の日がやってきた。気が重いやらなにやらで、顔色はすこぶる悪い。それに危篤のはずの国王とどうやって事をするのか?と首をかしげてしまう。その件がずっと気になっている藍だった。


 「ほほほ。そなた、初めての当番じゃな。まあ、仕方ないのう。これも務めじゃ小主さまがお子を授かるためじゃからのう。」

 「あの~。つかぬことを伺いますが…明典様。陛下は、病では?」

 「しっ。口に出してはならぬぞ。いろいろとな…。」

 「へ?どういうこと?でござりましょう?」

 「それ以上は、聞かざるじゃ…。」


 明典の含みのある良いようにあっけにとられているとお触れががやってきた。そして、明典が、『絶対に顔を見てはならぬ」と、頭を床にこすりつけて中に入るまで待ち、自分の合図があるまで頭を垂れたままだと厳しく言った。藍は、とりあえず頭を下げてその人物が入るのを見送るように見せた。とにかく、これが誰なのかを…せっかく侵入した意味がない。とっさに思い浮かんだのは手鏡だ。反射して、見つかれば自分の首が飛ぶ…。そうだ…髪飾りをダミーに使えば。


 「ん?何か光ったぞ。そなた、何を持っている?」

 「申し訳ございません。先ほど、ひっかった髪飾りを握ったままでございます。頭をあげれませんのでご容赦くださりませ。陛下。」


 藍は、そう言って恭しく髪飾りを両掌に載せて偽の陛下に見せ、その下の平の下に袂で隠しながら手鏡で顔を確認した。偽の陛下は、『わかった。』と頷き奥の寝所へ入っていった。


 「もう!花花。胸がつぶれるかと思ったぞ!」

 「申し訳ございません。お触れが来た際に手元があったって、緩んでいたので取れてしまいました。すぐ直そうと思っていた時には、無理でした。」

 「今後は、気を付けて、小ぶりの髪飾りにしなさい。」

 「はい。明典様。」


 明典に返事した藍だったが、頭の中は真っ白だった。どう考えても聞き覚えのある声だ!!どうして?

なんで?が頭をグルグル回る。『こんなことなら俺がここに潜入して、こんなことする必要なんかないじゃないか?』そんなことを思いながらも中で何が話されているのか?聞き耳を立てねばならない。藍は、目の前の事に集中しようと思いながらも声の主に心を馳せる。『今すぐ、胸ぐらつかんで問いただしたいぐらいだよ~!!何でここにいるんだよ!!あの指示は、これを見せるためなのか?』

 そんなことを思っていると中から声が聞こえてくる。


 「ふふふ。気持ちが良いのう。そなたにしてもらうのが一番じゃ…。この間の湯治での偶然の出会いに感謝せねばならぬに。そうそう、あの時の猫がここについてきての…。近くに住んで居るのか?よう、庭に現れる。」

 「そうですか?あれは、私についてきた猫でしたが…妃様を気に入ったのでございましょう。度々、いなくなるので心配していましたが、こちらに来ているのなら安心いたしました。」

 「そうか、やはり、其方の猫じゃったか。」

 「何か?猫が粗相でも?」

 「いや…。何も。それより、今日は、最後まで?」

 「それは、妃様次第では?」


 その一言の後、声が聞こえなくなり部屋からは、人気が無い様に感じる藍だった。

 

 

 




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