第五十話
舞台は、リーベンデール国に移ります。
§リーベンデール王宮
「ねぇ、新入りさん。あなたどこの出身なの?ちょっと見ない顔なんだけど。」
「あ〜。わたし。祖父が外国の出身なのよー。えっと、西?なんだったかしら?とにかくリーベンデールじゃないのよね〜。」
下働きとはいえ、外国の血が混じった人をよく雇ってくれたもんだと言わんばかりの顔で、女官達がぺちゃくちゃ喋りながら、野菜を洗ってむく作業をしていた。
この国は、最近でこそ、他国の商人が城にも出入りする様になったが働くものは、純血のリーベンデール人しかいなかったからだ。
「どうやって、雇ってもらったか?気になるわよね~。皆んなも。」
そこにいた数人の女官が、頷きながら、その新しい女官を食い入るような視線で見つめて、返事を待っていた。
「あ〜。あの、それは、ここの出入りの商人に頼んだの。田舎だと、給金が少ないから、魔石が買えなくって、出稼ぎ?ってやつよ。」
新入り女官は、田舎から出てくる時に泊った宿屋で、出会った親切な商人から、城の下働きが足りないという話を聞きつけたので、『何とか働き口を紹介して欲しい!!』と頼んだら、上手く働けることになったと説明し、野菜をせっせと器用に剥きつづけながら話を続けた。
「あんた、本当に器用ね。私なんて、話してたら手が止まっちゃうのに。みんなもよね?」
さっきまで、食い入るように見ていた、ほかの女官も『ほんとほんと』といいながら頷く。
「うんうん。ほんとに。他のことも器用なの?」
「そうね〜洗濯物も得意よ。宮中の仕事なら。」
「宮中?」
新入り女官は、はっとした顔で首を振った。
「急な仕事よ。あ、は、ははは。」
「びっくりするじゃない。聞き間違えね。年は、いくつなの?」
「え?年なんて聞かないで〜恥ずかしい。もう21なんです。いきおくれだから。」
「ホントに?見えない。もっと若いと思ってたわ。でも、ここにいるみんなそれぐらいの年よ。行き遅れって、どの時代の話よ。今時、これぐらいの年の女は、まだまだ、働いているし、なんなら、共働きも当り前よ。」
新入り女官は、ちょっと驚いた顔をしながら相槌を打ち返してごまかした。
「田舎出身だから、まだまだ、女は結婚して当たり前って感じなのよ。まだまだ、時代遅れ?て感じでね~。」
「あっ!!わかった。それで、逃げてきたのが本当じゃないの?」
『わかった』の言葉で、女官の心臓は飛び出るかと思うぐらい早鐘を打っていた。正体がばれたのではないか?と思ったからだ。言葉は、マスターしてここに潜り込んだつもりだが、端々でイントネーションが違う自分がいるのが分かっていた。だから、変に思われて告げ口でもされたら…。そんな気持ちが表情に出そうになった。
「ま、そそんな感じ。それに都会での暮らしにあこがれてたの。言葉も田舎でしょ?」
「え?そうでもないよ。ま、みんな、貴族様じゃないしそんなに言葉遣いなんて気にしないわよ。」
新入り女官は、この言葉にホッと胸をなでおろした後、自分の役目を全うするために、この厨房女官から得れる情報を探すことを始めるのだった。
「そうそう、こないだの貴賓客の顔、見れた人いるの?」
「貴賓客って?」
「あっ新入りさんは知らないわね。青華国っている国の皇子様が来ていたのよ。それはそれは、美しいって噂が流れててさ。こんな厨房の雑用係の私たちでも一目見れたらって噂してたのよ。」
『リュートさんの事だな…。どこかに捕まっている可能性もある…。どんな小さな情報もつかまなくては…。』新入り女官は、興味津々の顔でその噂に耳を傾けた。女官たちは、もしかしたらシンデレラにでもなれるかもと入れ替わりで、貴賓客が通りそうな所へ、足を運んでいたと話し続けていた。そして、一人の女官が奇妙なところで、その貴賓客を見たというのだった。




